第1話 Q.ここはどこ?私は誰?A.森!神!QED!

 爽やかな風が顔を撫でる──青々しい木々の香り小鳥たちのさえずり──湿った落ち葉の感触──ちょ待てよ?

 私の家=都内外れの一軒家だよね? 冷房は....つけてたかもしれないけど木々の香り? 食いかけカップ焼きそばと冷えっひえっのインスタントコーヒーの香りじゃなくて?

 落ち葉の感触とか言われても私、別に寝転んだことがある訳じゃないからね?汚いし....


「てかここどこよ? 」


 目を開けると抜けるような青空....だったらマシだったんだろうな....見える範囲が木! 木! 木!

 森ですやん、めっちゃ森ですやん....いや、なんで? 私の極楽浄土自室何処いずこへ?

 はぁ....起き上がるのもだりぃよぉ....なんたって私ゲームで三徹目、眠い、眠過ぎる。


「そうも言ってられませんがね? でもね、ヒキニートに起きたら森ってのは流石に酷過ぎやしませんかねぇ? 」


 いや、これ夢だわ。完全に夢だわ。そうに違いない。

 だってさぁ....栄えある男の願望がチラチラ視界に写ってんですよ。


「これどう見ても尻尾ですよね....ひゃい! 」


 しっかり感覚もある....でも30過ぎたおっさんがあんな情けない声出すのはちょいキツい....


「──なんか声高くね? 」


 さっきからなんか違和感あると思ったら、私の声可愛くなってない?

 待てよ? と、言うことはだ....


「──な、ない....こっちは....ある....」


 なにがなくてなにがあったかはご想像にお任せしよう。唯一つ言えることは男にとっての精神ダメージエグいものだったということだ。


「いくら夢でもケモ耳女体化は流石にやり過ぎじゃない? うんしょっと....とと」


 くぅ....これ思った以上に歩きずらい....夢の中ならせめて動きやすくはあってくれよ....関節痛まないのは最高なんだけど....

 尻尾重い....胸は....盛られてなくて助かったといったところか?


「なんにせよなんでこんな願望丸出しな夢を....ま、いいか! 夢ならできるだけ楽しまないと損よ損! AHAHAHAHA!」

『あの、誰かいるんですか? 』


 お?夢の中での第1村人発見ですか。声も女の人っぽいしテンション上がるね。夢だって分かってる夢ってなんでも出来る気しない?


「はーいここにいますよぉ! どうかしましたかぁ? 」

『声デカ....あのー助けてくださいませんでしょうか?ちょっとこちらに来て頂けると助かります』


 女の人の声は不思議と反響していてどこから聞こえてくるのか検討がつかない。


「あのーどこにいるか分からないのですが」

『あ、すいません。目の前に祠が見えると思うのですがそこを開けて頂きませんか?』


 なぜに祠? いや、あるよ? 目の前に御札がこれでもかと貼られた明らかにヤバ気な祠が....私これ開けるの?

 ....でも所詮夢だし中も気になるし....開けよ☆


「む、この御札全然剥がれないな....〇ロン〇ルファでも使ってるのか? 」

「ああ、その御札普通には剥がせないので隣にあるライター使って祠ごと燃やしてください」

「ライター!? 」


 うわ、本当に置いてる....そんじゃ逝ッテキマース。

 そして私は見た感じどう見ても〇均製のライターを使って祠の下に火をつけました。

 するとなんということでしょう祠を燃やす火が渦を巻き出しその中央には丸い影が一つ。


「狐のお面....? 」


 それは田舎の夏祭りとかで見そうな狐のお面....そういや最近メッキリあのタイプのお面見なくなったよね。近頃は特撮やら少女アニメ系のお面しか見なくって....割と好きなんだけどな狐面とかひょっとこ面。


『はははは! やっと出られたぞ! あの耄碌した老害共を地獄の底に叩き落とす時がついに来た! 』

「キャアアアシャベッタァァァァァァ!? 」


 お面が喋った! 夢だから当然だけど私疲れてるのかもな....これからは最高二徹までに留めておこう。でもこの声さっきからしてた女の人の声と同じような....


『出してくれたのには礼を言おう。神族の子よ! だが奴らに復讐するためには肉体がいる。そのためにも貴様の肉体いただくぞ! 』

「ぶぇっ!? 」


 お面が急に顔に向かって飛んできて張り付く。

 ひんやりと硬い感触が顔をしっとりと包み込む。


 地味に息苦しい....ぐぬぬ....


「──離れろぉ! 」


 手でお面を掴んで地面へと投げつける。上に降り積った落ち葉がぶわっと舞いお面の下半分が土の中へと埋まった。


「なんかあっさりとれたな....」

『うぇっ? ──何故だ!貴様の精神如き一瞬の内に掌握できる筈だ!何をした! ....おい待て、無言で土をかけるな! おい、マジでやめろ! ちょっ埋まるから! やめて! お願いします! 上から土固めないで....』


 〜〜〜


『はぁ....はぁ....危なかったぁ....』


 なんなんだろうかこの騒々しいお面は....夢にしては質感ちゃんとしてるよな....


『ええぃ! べたべた触るんじゃない! 』

「すんません」


 でもなんか変な感じなんだよな....声がお面から聞こえてる風には聞こえない。でもこのお面が喋ってるのは確かなんだよな。


『おい、そこの神族一つ提案がある』

「あ、私ですか? 」

『お前以外に誰がいるというのだ....貴様に契約を提案したい』


 契約? 響きがカッコイイ....仕事で聞く時は凄い事務的に感じるのにファンタジー味を感じるときはこう....ときめいちゃうよね!

 けど少し怖い....ちゃんと読んでなかった故の書類の不備....謝罪対応....うっ頭が....


『どうやら契約という言葉に聞き覚えが内容だな?しょうがないな説明してやろう』


 なんか解説コーナー始まったんだけど....ま、本人がノリノリで解説してるのを邪魔するのも悪いか....黙って聞いてよっと。


『まず私の名は輪廻りんね、【輪廻の面】だ。昔は名を馳せていたが訳あって今はこんな古めかしい面に封じられて【神器じんぎ】という扱いだがな』


 なんか私が前やってたゲームにも【神器】ってあったなぁ....全部が全部チートみたいな性能してて私はあんまり使いたくない派だったけど。

 面白くなくなったら元も子もないじゃない?


「はーい質問!」

『なんだ?』

「封じられたって言ってたけどなんかやらかしたんですか?」

『そうだな....思い出すだけでも忌々しいが私は同種族の老害共に迫害されていてな....』

「oh......お可哀想に....」

『それで村焼いた後、興が乗って周辺の国三つくらい焼いた』


 ....ガチ犯罪者じゃねぇか! 可哀想って言葉今の一瞬でどっか行っちゃったよ! 怖いよこのお面、夢だとしてもこんなクソみてぇな設定よく考えついたな私!


『で、契約の話に戻るが【神器】はあくまで装備だ。使用者がいなければ満足に活動もできない。神器としての力が強ければ使用者を乗っ取って動くこともできるだろうがさっき失敗した。──おい! ちょ、無言でまた埋めようとするんじゃない! ....はぁ....はぁ....だがどうやらお前には私はなにも出来ないらしい。だからこその契約だ。私がお前に求めるのは一つ!私を使え! お前は絶大な力とこの頭脳に詰まる全能なる叡智を授かることが出来る! 私は生き残った老害共を探せる! WinWinというやつだろう?』

「は、はぁ....さいですか....私に害がないならどうぞご自由に....」

『ならば契約成立だ』


 どうせ夢だろうし、面白そうだから別にいいや。

 お面が私の頭の横に下げられ淡く光を放つ。


『契約成功です。よろしくお願いしますね? 深皇しんおう凜音りんねさん』


 な、何!? 私名乗ってないはずなんだが?一体どういうこと? てか急に喋り方変わったし気持ち悪!


『気持ち悪いとは失敬な....契約に伴ってあなたの記憶を読み取らせて頂きました。それと元の私の人格が統合されて口調がこのような事になっただけです。それと凜音さんあなた....大きく勘違いされてますね? 』


 か、勘違い....? ってか今記憶読んだって言った?プライバシーの侵害だ! 訴えんぞこの野郎!


『私の契約者なのに随分と五月蝿い人ですね....あとあなたずっと夢だと思ってるらしいですけれど違いますよ? これは紛れもない現実・・です』

「へ....? 」


 森の木々は静かな風に揺られていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 読んで頂きありがとうございます!

 なんか記念すべき第一話!....元よりだいぶ変わってしまったがまぁ元より輪廻くんの里帰り編は作る予定だったですし....まぁ多少はね?

みなさんも全く同じ話じゃ飽きちゃうでしょう?ならば少しぐらい弄ったってね?

 カオス成分少なくなってないかって?私もそう思う。だから他の話で増量しとくのでお許しください<(_ _)>






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