第3話:塔の光
――以下は、内陸のとある山中に点在していた古いコンクリート塔のうち、現存する一本から発見された文書の抜粋である。
塔には照明設備が設けられており、外部に向けて強力な回転灯が設置されていた。用途不明。地図上の記録なし。
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発見された文書:
題名なし。書き出しに日付の記載があるが、「19●●年●月●日」と判読できない箇所多数。
筆跡は非常に整っており、以下に読みやすい部分を転記する。
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> 「ここに来てから、誰とも話していない。声を忘れた気がする」
「毎晩、光をまわす。海は見えないが、あれは灯台なのだと教わった」
「光が届かない時間がある。その間、塔の下から音がする」
「地鳴りでも風でもない。何かが、数を数えているような気がする」
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> 「交代の者が来ない」
「代わりに、紙袋に入った砂と白い石だけが届くようになった」
「その石を火にくべると、しばらく静かになる」
「でも、音の数がだんだん増えてきた。三、四、五……」
「昨日は十一。その次の数を、まだ聞いていない」
「でも、もう一つ、別の声が言った」
「『ハルカゼが通ったあとなら、もう止まらない』と」
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この塔について、国土地理院の古い地形図には一切記載がない。
しかし、航空写真には1972年から1984年の間、毎年光点として記録されている。
その光点は、日付にかかわらず、必ず深夜3:03に点灯していた。
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【補足】
塔内には金属製の階段が設置されていたが、6段目だけが異常に磨耗していた。
階段の裏には、子どもの手で書かれたような文字が鉛筆で残されていた:
> 「ぼく、ハルカゼじゃないよ」
「でも、おなじところから きたって いわれた」
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