終焉の記録者

Naml

遠い昔の話

創世なんとか

時も空間もなかった。

音も光も意味を持たない、静かな"在るだけ"の世界。

そこに、四人の存在がいた。

互いに姿は見えず、名前もなかったが――彼らは確かに、家族だった。



「ねぇ、ねえちゃん……今日って、昨日と違うのかなぁ?」


柔らかく、どこか不安げに問いかけたのは冥の神。

白く光るその存在は、まるで雪のように儚く、美しい中性的な姿だった。


「昨日というものは存在していない。それはお前が持ち出した概念だ、冥。」


答えたのは法則の神。

冷静で理知的な女性の姿をしているが、弟の問いに応えるその声音には、どこか微かな愛情がにじむ。


 


冥はふわりと笑った。


「そっか。でもね……最近、ちょっと思うんだ。

僕たちって、ずっとこうしてるだけで、寂しくない? なんだか、空っぽだなぁって」


 


「何が言いたいんだ?」


口を開いたのは、四神の中で最も大きな背を持つ、表の神。

落ち着いた声で問い返す。彼は父のように全体を守る存在だった。


冥は静かに手を胸に当てて、少しだけ首をかしげた。


 


「……ねぇ、みんなで“世界”を作ってみない?」


「世界?」と三柱が目を見交わす。


「うん。僕たちだけじゃ、もったいないよ。

もっといろんなものを見てみたいなぁ。空の下を歩く人たちとか……、出会って、笑ったり泣いたりする何かとか」


その声音は、まるで夢を見る子供のようだった。


 


少しの沈黙のあと、想意の神が笑った。

青い衣をまとった美しい青年――彼は、最も自由で感情豊かな存在だった。


「君がそう願うなら、僕は“意志”を与えよう。人が夢を持ち、希望を信じられるように」


法則の神は、そっと目を伏せた。


「では私は“理”を与える。世界が狂わぬように、ルールを敷こう」


表の神もゆっくりと頷いた。


「ならば私は、世界を支える“形”を作る。空と大地を整えよう」


 


冥は少し目を潤ませ、ぽつりとつぶやいた。


「……ありがとう。みんなで、楽しい世界にしようね」


――こうして世界は作られた

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