パート45: 醜い綱引き
国王の言葉を皮切りに、その場に同席していた他の有力貴族たちが、堰を切ったように口を開き始めた。
「お待ちください、陛下。彼らの力は、国境警備にこそ活かされるべきです。我が辺境伯の軍に迎え入れましょう」
「いや、魔法研究こそが彼らの道。我が魔導院で、その才能をさらに開花させるべきだ」
醜い綱引きの始まりだった。
誰もが、僕たちという強力な駒を、自らの派閥に引き入れようと必死になっている。
そんな中、謁見室の隅で黙っていた一人の男が、重々しく口を開いた。
僕の父、エルフィールド侯爵だ。
「皆々様、お静まりに。アランは、我がエルフィールド家の者。その力は、我が家のためにこそ使われるべきです」
父は、冷たい目で僕を見据える。
「アランよ。道楽はもう終わりだ。エルフィールド家に戻り、次期当主であるガイウスを、その力で支えよ。それが、お前の役目だ」
それは、父親としての命令であり、貴族の当主としての絶対的な命令だった。
さらに、貴族たちはヒロインたちの実家をダシに、圧力をかけ始めた。
「セレスティア嬢。ヴァイス公爵家も、王家へのさらなる忠誠を望んでおられるはず」
「リナとやら。平民である君が、これ以上の栄誉を望むのは、分不相応とは思わんかね?」
脅し、甘言、家のしがらみ。
大人たちの汚いやり口が、僕たちに容赦なく襲いかかる。
ヒロインたちの顔から、血の気が引いていくのが分かった。
僕たちのチームは、国家レベルの権力争いの渦の中心で、引き裂かれようとしていた。
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