パート44: 王宮の思惑

 数日後、僕たちは王家からの召喚に応じ、壮麗な王城の謁見室にいた。

 磨き上げられた大理石の床。壁には歴代国王の肖像画。

 玉座に座る国王陛下の前には、宰相をはじめとする国の重鎮たちがずらりと並んでいる。

 その威圧的な雰囲気に、僕の後ろに立つヒロインたちは、極度に緊張しているのが伝わってきた。


「面を上げよ、若き才能たちよ」


 国王の穏やかだが、有無を言わせぬ声が響く。

 僕たちは促されるままに顔を上げた。


「トーナメントでの活躍、実に見事である。特に、アラン・フォン・エルフィールド。君のその采配は、まさに天才のそれだ。そして、その指揮に応えるチームの力もまた、素晴らしい」


 国王は、僕たちを高く評価しているようだった。

 だが、その目は笑っていない。

 これは、品評会だ。僕たちという「駒」の価値を、値踏みしている。


「さて、本題に入ろう。君たちほどの才能、学園の中だけで埋もれさせておくのは国の損失だ。卒業後は、我が王家直属の魔導騎士団に入団し、その力を国の為に役立ててはくれぬか。もちろん、相応の地位と名誉は約束しよう」


 それは、勧誘の形をとった、半ば強制的な命令だった。

 王家は、僕たちという強力な戦力を、誰にも渡さず、自分たちの管理下に置こうとしているのだ。


 リナが息を呑む音が聞こえる。

 平民である彼女にとって、王家直属の騎士団に入るなど、夢のまた夢のような話だろう。

 だが、その裏にある束縛と不自由さを、僕たちは感じ取っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る