パート40: 勝利の余波と新たな影

 ダンジョンでの一件は、僕が想像していた以上の速さで学園中に広まった。

 ガイウス率いるエリートチームが手も足も出なかったボスを、僕の「落ちこぼれチーム」がわずか1分で討伐した。

 そのニュースは、学園に激震を走らせた。


「聞いたか? アランのチーム、マジでやばいらしいぞ」

「ああ。もはやリナだけじゃない。チームとしての完成度が異常だ」

「今年のランキング戦、マジで番狂わせあるんじゃないか?」


 僕たちを見る周囲の目は、完全に変わっていた。

 嘲笑や憐れみは消え、畏怖と、そして嫉妬が入り混じった複雑な視線が僕たちに注がれる。

 僕のチームは、一躍、ランキング戦の優勝候補の一角として認知されたのだ。


(注目されるのは計画通り。だが、光が強くなれば、影もまた濃くなる)


 案の定、厄介な方面から横槍が入り始めた。

 ある日の放課後、僕の元に実家から一通の手紙が届いた。

 差出人は、父であるエルフィールド侯爵。

 その内容は、簡潔にして冷徹だった。


『ガイウスの顔に泥を塗るような真似は慎め。エルフィールド家の恥さらしが、これ以上、家の名を汚すことは許さん』


 それは、明確な警告だった。

 父は、出来損ないの次男である僕が、嫡男であるガイウスの権威を脅かすことを、家の秩序を乱す行為として問題視し始めたのだ。


「マスター、どうかしたんですか?」


 僕の険しい表情に、リナが心配そうに声をかけてくる。


「いや、何でもない。ただ、ショーの観客が、また一人増えただけだ」


 僕は手紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てた。

 父親からの圧力? 上等じゃないか。

 僕を、僕のチームを止められるものなら、止めてみろ。

 僕たちの快進撃は、まだ始まったばかりだ。

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