パート39: 屈辱のフィナーレ

「はい、マスター!」


 リナは、すでに全ての準備を終えていた。

 彼女の右手の先には、夏休みの特訓で生み出した、あの『氷の錐』が形成されている。

 だが、その規模も、密度も、あの時とは比較にならない。

 彼女の持つ魔力の全てが、その一点に収束されていた。


「貫けっ――!!」


 リナの叫びと共に、極大の氷のドリルが放たれる。

 それは、一筋の白い閃光となって、ケイブトロルの右腕へと殺到した。

 狙うは、皮膚の下で不気味に脈動する、赤黒い魔石。


 パリンッ!!


 ガラスが砕けるような、甲高い音。

 リナの『氷の錐』は、硬い皮膚も、屈強な筋肉も、全てを貫通し、力の源である魔石を寸分の狂いもなく粉砕した。


「ギ……ギ……アアアアアアアアアアッ!!」


 ケイブトロルは、断末魔の叫びを上げた。

 力の源を失ったその巨体は、急速に輝きを失い、再生能力も停止する。

 やがて、巨体は塵となって崩れ落ち、後には静寂だけが残った。


 僕たちが戦闘を開始してから、わずか1分にも満たない出来事だった。


「…………」

「…………うそだろ……」


 ガイウスと彼のエリートチームは、目の前で起こった出来事が信じられず、ただ呆然と立ち尽くしている。

 自分たちが、あれほど苦戦した相手を、いとも簡単に、そして完璧な連携で葬り去った。

 その事実が、彼らのプライドを容赦なく打ち砕いていく。


 僕は、そんな彼らの前にゆっくりと歩み寄り、そして、最高の笑顔で告げた。


「これが、僕のチームの実力です。お分かりいただけましたか、兄さん?」


「……っ!」


 ガイウスは、屈辱に顔を真っ赤に染め、わなわなと拳を震わせる。

 何かを言い返そうとするが、言葉にならない。

 完膚なきまでの、圧倒的な実力差を見せつけられて、彼にはもう、何も言うことができなかった。


「約束通り、ランキング戦、楽しみにしていますよ」


 僕は、立ち尽くす彼らに背を向け、僕の最高傑作たちと共に、意気揚々とダンジョンを後にした。

 前哨戦は、僕たちの圧勝。

 本番のショーは、もっと面白いものになりそうだった。

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