パート22: 屈辱と進化
「くっ……! このわたくしが……あなたのような男の指図を……!」
セレスティアは屈辱に顔を歪ませた。
しかし、目の前には盾を砕かんとする脅威が迫っている。
プライドを守って敗北するか。プライドを一時的に捨てて、勝利の可能性に賭けるか。
彼女の決断は、早かった。
「――やってやりますわ!」
彼女は僕のアドバイス通り、砕け散る寸前の盾の内側に、新たな防御壁を瞬時に複数展開。
そして、それぞれの壁を、まるで歯車のように逆方向へと高速で回転させたのだ。
ギギィィンッ!!
金属同士が擦れ合うような、さらに甲高い音。
リナの『氷の錐』は、多層回転する盾によってその破壊ベクトルを逸らされ、威力が急激に減衰していく。
やがて、ドリルの回転が完全に止まり、氷の塊は力なく地面に落下して砕け散った。
「はぁ……はぁ……」
セレスティアは、肩で大きく息をしていた。
魔力を使い果たし、立っているのがやっとの状態だ。
対するリナも、大技を放った反動で膝に手をついている。
結果は、引き分け。
いや、リナの攻撃を防ぎきったのだから、セレスティアの勝ちと言えるのかもしれない。
だが、彼女の顔に勝利の喜びはなかった。
あるのは、ただ呆然とした表情だけ。
「……どうして。どうして、わたくしはあなたの言う通りに動いてしまったの……?」
彼女は、自分のスキルが、僕の指示一つで劇的に進化したという事実に、打ちのめされていた。
自分の努力だけではたどり着けなかった領域に、いとも簡単に導かれた。
それは、彼女のプライドを根底から揺るがす出来事だった。
「わたくしの……負け、ですわね……」
彼女は、か細い声で敗北を認めた。
僕はゆっくりと彼女に歩み寄る。
「いや、見事な判断だった。君のスキルコントロール能力がなければ、僕のアドバイスも意味をなさなかっただろう」
僕は彼女を労い、そして手を差し伸べた。
「これで分かったはずだ。君の盾は、僕の矛と組めばもっと輝ける。どうする、セレスティア? 僕のチームに来るか?」
僕は、彼女に最後の選択を委ねた。
彼女が、自らの意志で答えを出すのを待つために。
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