第4話 送ってもらう

 放課後


「先輩〜」

「おかえり、雅ちゃん」

「おー」

 楽器の片付けを初めたころ、雅ちゃんが帰ってきた。何してたんだろう。

「はい、先輩乗ってください」

「えっ?!まじ?」

「何言ってるの?!」

 背中に乗れって?!あんだけやられておぶれるの?!

「ほら、」

「いやいやっ!ケガしてるんでしょ?!」

 全力で否定する。み、雅ちゃんの背中に乗るなんで恐れ多い。

「いえ、軽症ですんだので」

「…そうなんだ」

 ほっと息をつく。

 じゃあ大丈夫…かな?

 楽器を持って背中に乗る。

「じゃあ、行きますよ」

「うん」

 わあああっ雅ちゃん好きな人の背中乗ってる!


「ありがとね、雅ちゃん」

「いえ、」

 家まで送ってもらった。

「先輩、明日は包帯を取ってください」

「えっ、いいの?」

「はい。私が来るまで家から出ちゃダメですよ?」

 後輩に心配されるとは…いや世話焼かれてる気がする。

 …恋人っぽくないよなあ。理想ではあるけど。なんか複雑…。

「珠羽〜!帰ったのか?!」

「お父さん!」

「あ、お父様!相変わらずお若いですね」

 一度、雅ちゃんと水族館に行ったときにうちに来てるので顔見知りである。

「これはこれは!雅さんでは…」

 お父様は私の足を見た。

「うわあああああ!珠羽?!」

「お父さん…落ち着いてよ、」

 落ち着かせるがなかなか効かず、家に上がってもらうハメになった。

「まず…申し訳ありませんでした」

「…?」

「あわわわっ」

 なんで頭下げてるの!?こっちがやらないといけないのに…。

「私が見ていなかったせいで…去年辺りからのイジメを受けていた先輩を助けることができませんでした」

「なっ!イジメだと?!」

 雅ちゃんはすうっと息を吸い、再び話し始める。

「ですが、本日、その者たち…ごく一部のクラスメートのみ、しばき倒しました」

「っ!ごく一部…。」

 …そのせいで…雅ちゃんは…。

「ですが、明日には!明日には絶対にイジメ自体をやめさせます」

「雅…さん」

「雅ちゃん…!」

 なんで…もういいのに。クラスメイトで十分だよ。言っても、きっとやるんだろう。そういう雅ちゃんが好きなんだけどさ。

「暴力は今日限りです。安全なやり方でやらせていただくので、ご安心を」

「よかった…」

 一安心かな。

「では、私も帰らねばなりませんので、また」

「うん、」

 雅ちゃんはリビングを後にし、玄関へ向かった。

 すると、お父さんに

「珠羽、俺は雅さんを送ってくる。安静にしてろ?」

 と、言われた。

「雅さん」

「お父様、構いませんよ?帰れますので」

「いや…聞きたいことがある」

 …なんだろう。私は不安を抱えつつ、二人は行ってしまった。

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