後輩に守られてます。
春木維兎 -haruki-yuito-
第1話 始まり
「春雨高校!1年!」
私は、あの日出会った格好良くて髪がちょっと長い男の子に叫んだ。
虐められている私が逃げてきた場所はなんとなく来たことがある、少し家から離れた場所。
お母さんもお父さんも優しくしてくれる。
家に不自由はない。
だから、私は知り合いのいないここを選んだ…はずなのに。
喧嘩してるんだけど〜?!
「ちっ」
舌打ちをした、綺麗な顔立ちの男の子。髪が少し長い。
全員倒し終わったあとこちらを向き、驚いた顔をした。
「なんでいるの?」
こんなところにいちゃダメだろ。って言われてる気がした。
「傷できてる。残っちゃうよ?跡」
綺麗な顔なのに…。
「残ってる方がちょうどいい」
「だめだよ。そんな事しちゃ」
あれ、黙り込んじゃった…。
「名前」
「神奈…珠羽」
そう言うと男の子は優しく微笑んだ。
その笑顔に、一目惚れした。そして別れ際に、引き留め
「春雨高校!1年!」
そう叫んだ。
1年後。
「また先輩になっちゃった…」
「ほんとだねぇ」
同じ部活の春乃ちゃんと話していた。
春乃ちゃんはイジメのことは知らない。
まだ続いているイジメは、終わりを見せない。
恐怖ばかりが続いている。
あの子…男の子。あの子がいてくれれば。
いじめを終わらせてくれるのかな。
「あっ…」
あの時の男の子に似てる…。
思わず目で追ってしまうほど、イケメンな女の子がいた。
あの時の男の子に似ていた。すごく。
ぱちっ
目が合った。
ドキッ
一瞬だけ、その子が微笑んだ気がした。
優しく。あの時の男の子のように。
心臓が破裂しそうなほどに動いている。
「え…?」
「どしたの?タイプいた?」
からかって聞いてくる、春乃ちゃん。
女の子にドキドキしちゃうなんて…。
従兄弟の海斗じゃないんだから…。
「ようこそ!吹奏楽部へ!」
新1年生を歓迎する。
入部体験だ。
「え…」
周りの声にかき消されてしまうほどの声を出した。
あの子がいる。
周りの女の子たちに声をかけられているがそんなことは気にしていないのか、私の方をじっと見ている。
「はい!では気になる楽器のところへ行ってください!」
その子は一直線に私の方に来た。
「珠羽先輩。」
なんで私の名前っ。
「あ、そっか…」
と、その子は落ち込んだ。
「名前、教えてくれる?」
「…雅」
「雅ちゃん。よろしくね」
ぱあっと顔が明るくなった気がした。
…あの時の男の子が雅ちゃんなら…。いや、それはないか。
…かっこよかったなぁ。あの人。
また会えたら…。
「そういえば、雅ちゃんはどこから来たの?東中?」
この辺の人は大体東中からくる。
「あ…えっと黒羽中…です」
「…えっ?!」
私が去年行ったところじゃん…。
「そうなんだぁ!私もたまに行くんだよね。そこ」
「…そうなんですね」
静かに微笑む、雅ちゃんはあの男の子本人だと思ってしまうほどかっこよかった。
あの男の子が雅ちゃんだと知るまで、あと1年。
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