第25話「王都異変──覚醒せし神の器」



──王都・中央神殿・深層聖域。


聖域と呼ばれるその場所は、本来ならば王族と上級神官しか入れない“禁忌の空間”だった。


だが今、その中心に座していたのは──銀髪の青年、桐生 隼人。


彼の全身を包むのは、金と紅の神聖魔力。

頭上には、天を模した魔導陣がゆっくりと回転していた。


「──完成した。

これが、俺たちが創り上げた《神格適合システム》の最終形」


彼の前に跪くのは、王国宰相。

その顔には狂信にも似た笑みが浮かんでいた。


「桐生様。ついに……ついに、“神を超える存在”が、王国から生まれたのですね……!」


「いや、違うよ。

俺は“神になる”んじゃない。“神を運用する側”になるだけさ」


桐生は立ち上がる。


「さあ、始めようか。《神性因子》による世界再構築を」


その瞬間──

中央神殿を中心に、王都全域に紅い魔力の奔流が広がった。


魔導装置が暴走を始め、上空には黒雲が渦を巻く。


そして、王都内に設置されたすべての“結界”が、同時に崩壊。


民衆は悲鳴を上げ、貴族たちは神殿へ殺到し始める。

その混乱の中で、一人の少女が静かに立ち尽くしていた。


──白神 瑠璃。


「……これが、桐生くんの言ってた“計画”……?」


彼女の傍らには、すでに戦装束を身に纏った和泉 拓海。

そして、ローブを脱ぎ、正式な《守護魔導師》の徽章を掲げたイルゼの姿もある。


拓海が歯を食いしばる。


「まさか……あいつ、王都そのものを“神の器”にしようとしてるのか……?」


イルゼの声が震える。


「違う……王都は“供物”よ。

《神核兵》によって解析された魔力経路を使って、都市そのものを生贄に、“真なる神格”を召喚しようとしている……!!」


「そんなの……止めなきゃ!」


瑠璃が駆け出す。


彼女の胸には、まだ消えぬ決意の火が灯っていた。


「悠くんが……“世界に殺されかけてる”のに、私だけ何もできないなんて、絶対に嫌!」


その言葉に、拓海とイルゼも続いた。


「行こう。俺たちが止めるんだ、桐生を」


「“彼”に到達するまでに、この都市は崩壊するかもしれない。

でも──間に合えば、まだ……!」


その頃──


遥か遠くの野営地で、悠もその異変を感知していた。


《……ユウ。ナニカ、オキテル。スゴク、ヤナカンジ。》


悠が立ち上がる。


「王都、か……。

“奴らの暴走”が、いよいよ始まったかもしれねぇ」


彼の視線は、燃え上がる空の向こうを睨んでいた。


「行こう。すべてを終わらせに──王都へ」


そして、地に剣を突き立てる。


《魔喰剣グリム》が、低くうねった。


《タベルモノ、イッパイ。タベル。クウ。ダメナモノ、ゼンブ。》


「その意気だ、グリム。

俺たちで、この“世界の間違い”を喰い尽くしてやる」


──物語は、最終局面へと歩を進める。


(第26話へつづく)

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