第四話・少女エニタとの出会い・1
選択:*【図書館】*
物語が始まります…………。
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軽食の
「すごーい」
【ランの証明】は一つの書を上から覗き込みながら、幼い少女が童話を読んでいる様子に似た、無垢の
「人間って……おもしろーいっ!」
シェイナの頭を胸の重みで揺らしながら、ランは感情を
“
【貴族帝都シンドリス】が外来者に求める“姿”であるが、影の
【知の威信】を示す【国営図書館】は、シンドリスという都市を象徴するに相応しい、蔵書の圧倒に息を飲む荘厳な空間であった。
ここを目的とすることだけに、シンドリスへ訪れる価値がある。それほどのことを思わせる場所。静謐な広大の空間に、見渡す限り収められている蔵書は、質、量、多様性、あらゆる点において文句の付けどころもない。
ただし。
あえて指摘の点を挙げるとするのなら……、蔵書が多すぎるという一点が、外来者の目からして奇妙に映るかもしれない。
『生きるということ。人間が守るべき【規律】という心について。
私たちは人間という【
それは【
もし【生まれにおいての立場】という【規律】が
『
それは自然界を見渡せば判然としたことである。
(――以下、しばらく、自然界における【
ゆえに、私たちは人間という【
そのために、【生まれにおいての立場】を
歴史を辿り、必然として辿り着いた、
そうして辿り着いた理知こそが、この自然界に【規律】を形作り、その【規律】は私たちに【人間】をもたらす。それを唯一として。
そのため、
この蔵書が収まっていたのは【ファンタジー】の棚ではなく、【社会科学】の棚であった。
このような、“ある視点から見るファンタジー的記述の
「――――んん、面白い」
やがて、シェイナも熱読の夢中から覚めて、小声で感想を漏らした。
「前に来た時から、図書館には寄ってみたいと思っていたけど……想像以上に面白いね。――なにが面白いかといえば、これらの記述には、“一応に筋を押し通すだけの説得力”があるってところ」
『そうして辿り着いた
「それこそが【規律】を形作るという“たった一点だけを論ずる討論”においては、この表題はなかなか言い負かされない。《主張》ではなく《表題》として存在するこの一論を
「素晴らしく
ポッと頬を赤らめて、少女みたいに《地獄》を言い
『――ゆえに、都市の外から来たる【
「ふぅん、そういえば、私たちはどのような『生まれにおいての立場』として置かれているのかしら? ――この先も読んでみましょっ!」
上位存在である【ランの証明】における立場は確実に
◇
「【
上機嫌な【ランの証明】。
シェイナのほうも、知を目に収めた静かな満足感に満たされてはいたが――。
「でも、目的とする情報が
「そう……。…………? 目的としていた情報って、なんだったかしら……?」
ランが首を傾げた、その
「あの――」
書架の、影となった場所に入った、その時。
「あなたは……【
二人が振り向くと、そこには――灰銀の髪を、後ろで綺麗な三つ編みに
光の角度で銀色にも輝く、
「少し……お話できませんか?」
その少女の言葉に。
「――
シェイナは静かに、“異邦”の立場を心得た言葉を返した。
「――感謝致します。初めまして……挨拶が遅れまして、失礼いたしました。私の名前は――エニタ、と申します」
それが、少女エニタとの出会いだった。
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