第66話 新たな未来に向けて

 真夜中の魔導街ヒヒイロカネ。

 今は町全体が森でおおわれいて、野外プレイをいたすにはもってこいだろう。

 もっとも魔性がおおった森であり、マスドールも大量に徘徊している。危険極まりない。そんな場所で情事にふける人間はいない……そう思いきやだ。


「あぅ……ん……」


 暗がりの中、熱い吐息が漏れる。ドスケベを働く者がいた。


 着替えなおした俺と、リリィが地べたに座っている。

 リリィは俺に顔を預けるようにもたれかかり、股に手をいれているはず。はず、と言ったのは、俺が明後日の方向を見ながら周囲を警戒していたからだ。


「ん……ん……♥」


 俺のすぐ側で、リリィが野外オ〇ニーに励んでいる。

 敵は周りにいないことは確認済み。それでも緊急時なのでオナ声はひかえめだ。しかし俺が警戒しているのもあって、喘ぎ声につい集中してしまう。


「ぁ……ハルヤ様……♥」


 誘惑する必要はないのに俺の名を呼んだ。


 リリィの熱い息が肩にかかる。

 彼女の頭がゆれるたび、熱心に励んでいるのがわかった。いつもより夢中になっている、ような。


「ハルヤ様……ハルヤ様……♥ ん…♥」

「……」

「ハルヤ様……私、いつもより感じておりますよ……」

「ほ、報告せんでも……」

「そのほうが気持ちよくなると思いまして……ぁ♥ これ、いい……♥」


 リリィは本当に心の底から気持ちよさそうに息を吐く。

 俺の股間はバッキンバッキンでえらいことになっているが、ふりかえらない。そういう約束もしていた。


『リリィ‼ 今すぐオナ〇ーを……俺に魅せてくれ‼』


 もちろん、リリィは緊急時になにごとかと怒った。


 久しぶりに、目と耳が吹き飛ばされるかと思った。

 だが俺があまりにも真剣にオ〇ニーを熱望するからか、なにかを感じとったらしい。しぶしぶ了承してくれた。間近でというドスケベな条件も、俺が直視しないことを約束に実行してくれた。


 そしてオ〇ニーをはじめて、だんだんと体調がよくなってきたらしい。


「ん……♥ ん……ぁ……♥」


 リリィがゆれるたびに、彼女が夢中になっているのがわかる。

 前世では見せることなかった姿だ。


 手をだしてええええ……でも、リリィの体調もあるしな……。

 それに一番大事なのは、おそらく彼女の意思だ。俺からドスケベを望むのではなく、彼女自身がドスケベをする必要がある。


 俺が拳を握りしめて耐えていると、リリィが手を添えてくる。


「お、おい……」

「ハルヤ様の手……ゴツゴツしていて……男の人って感じですね……」

「誘惑はしないんじゃ……?」

「これは私が気持ちよくなるための……スキンシップでございます♥ んっ♥」 


 リリィは空いていた手を、俺の指にからめてきた。


 死人みたいに冷たかった手が今はぽかぽかと温かく、彼女が快楽を感じたタイミングがより鮮明にわかってしまう。

 ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、と伝えてきた。


「ぁ……ぁ……きちゃい、ます……♥ ぁ……ぁ……♥」


 ぎゅっ、ぎゅっと、ぎゅっと、快感の波が手の握り方でわかってしまう。

 あーーーーーっ(脳がおちん〇に支配されていく声)。


 そして。


「んっっっ……♥」


 ビクンッと跳ねて、強く握られていた手がゆっくりと離される。


 脱力からリリィが果てたのだとわかる。

 俺の頭はおちん〇おちん〇としか言葉が浮かんでこなかったし、今すぐ抱きしめたい衝動に襲われていたが。


「ふりかえっても大丈夫でございますよ」


 リリィの安静を取りもどしたかのような声。


 ふりかえると、オ〇ニーにふけっていたとは思えないほど、平静さを保ったリリィがちょこんと座っていた。

 おかげでエロい気分もふきとぶ。

 いや完全にふきとんではいないけども……問題はここからだ。


「体調は?」

「……完治しておりますね。重たかった頭も、驚くほど軽くなっております」

「そりゃ……よかった……」


 俺の考えたとおりの結果になって、魂がぬけたかと思うほど安堵する。


 リリィはおそらく元の世界で死んだ。

 あるいは死の寸前まで追いこまれた。


 二つの世界が統合したあとも、世界に影響をあたえつづけた勇者の仲間だったからこそ、死の因果が残ってしまった可能性がある。

 いずれ、同じ運命を辿ってしまうのかもしれない。


 けれどリリィは成長した、性根は変わるどころか磨きがかかっているし、厳しさはあれど厳格な神官とは言いにくい。


 だから今はまったく別人だと証明できれば?

 一番の相違点は……そう、ドスケベだ。


 ………………。いやだって、一番わかりやすいし。

 実際オナ〇ーで助かったわけで‼ 下心がないとは言いきれねーけども‼

 でもやっぱりオナ〇ーはすごい! オナ〇ーは自分を救うだけでなく、運命を切りひらく力がある‼ きっといつかそう証明される!


 さすがに根本的な解決にはなってないと思うが、完治しただけでも御の字だ。


「ハルヤ様は不思議な方でございますね。本当にこのような方法で治るなんて」


 リリィはまじまじと見つめてくる。


「そ、そうか? ドスケベを見たかっただけかもしれねーぜ」

「たまに、未来を知っているかのような素振りを見せます」

「あ、ああ……そうかなあ……」

「ハルヤ様、私は――」

「待った!」


 俺が手で待ったをかけると、リリィは目をぱちくりした。


 察しのいい彼女のことだ、死に戻りはとっくに気づいていると思う。前々からその節は見せていたし、今回のことで自分の運命を悟りはじめているのかも。


 だが無暗に言葉にするのは危ないと、フローラ様が言っていた。


 ……こんな話もしたくないが、仕方ない。

 彼女の体調を見ながら話していこう。


「リリィ。もし、もしの話だ。もしの話だとしてくれ、絶対にもしだぞ?」

「はあ……? もしでございますか」

「約束してくれ……もし、の話だって。もしの話でなければいけないんだ」

「……かしこまりました」


 俺の真に迫った様子に、彼女はゆっくりとうなずいた。

 今ので俺の危惧していることも、ある程度伝わったはず。


 俺が聞きたいこと……死に戻り前に関して話題はからめず、できるだけ核心に近い箇所……。


「もし……リリィが勇者の仲間で……。もし、魔王との最終決戦前にモンスターの大群に襲われて……。勇者を先に行かすために、大群に立ち向かうとしたら……」

「それは」

「もし、だ。もしにしてくれ……」

「……はい」

「リリィは、危なくなったら……逃げるよな?」


 俺はすがるように見つめた。逃げると言って欲しかった。


 しかし、鉄の乙女はそれが義務といわんばかりに平然と答える。


「最後まで戦いぬいたでしょうね。たとえ、死ぬとしても」

「だ、だっ……て……リリィ……それは……!」


 感情が爆発しかけて、俺の声がたえだえになる。


「勇者様の仲間として……あまねく光で世界を照らすために、一介の神官が……私が犠牲をはらうだけですむのなら安いものです」 

「だ……だけ、ど……」

「……それに、責任がございます」


 死の運命が迫っても、神官の責任ですますのか。

 それは違うぞと言う前に、リリィは小さく首をふる。


「勇者様に……光になってもらった責任がありますから」

「……え?」

「私が仲間でしたら、勇者様には完璧な光を求めるでしょう。もし未熟だとしても……一から徹底的に叩きこむでしょう。嫌いになられても……彼本来の笑顔が失われても……私は、鉄の乙女として魔王を倒す勇者を育てあげます」


 リリィはそこから逃げないと俺を見つめてくる。


「その代償を払わなければいけません。どうして自分だけがゆうゆうと逃げられましょうか」


 俺は耐えきれなくなり、彼女の両手をつかんでいた。

 彼女の小さな手に額をこすりつけて、神に祈るような姿勢でいた。


「ハルヤ……様?」

「リリィ……もしの話だ」 

「はい」

「光を求める厳しい神官に、彼はトラウマになったかもしれない。二度と君に会いたくないと心の底から願うようになったかもしれない」

「……」

「それでも、それでもだ……。リリィのような厳格な神官がいなければ、光の勇者は生まれなかったんじゃないかな……。彼女のおかげで……彼は強くなったんじゃないかな……」


 無血白磁の剣技は、世界に右に出る者はいないとまで称された。

 自分の力で世界に立っていられるようにもなった。


 それは俺一人の力じゃない。

 だから彼女の心に伝わって欲しいと、願うように言葉にする。


「もし彼が……彼女が死んだと知ったら……耐えられない。ずっと側で冒険をしていた彼女が死に瀕したとしても……ひどく後悔をする……」

「……もし、でございますか」

「だから逃げてくれ、もしそうなったときは……必ず逃げてくれ」


 俺はリリィの両手をずっと握っていた。


 泣きそうになるのを必死で隠すため、目をつむっていた。

 死に戻り前も弱音を吐いていたが、決して晒すことのなかった自分を見せていた。


「……ハルヤ様、私は違いますよ」


 リリィは優しい声で告げてきた。

 俺がゆっくり顔をあげると、彼女も死に戻り前では見せたことのない笑みを見せてくる。


「今の私なら……逃げるかもしれません」

「そう、なのか?」

「だって他に手段があるかもしれません。もっと単純な解決方法があるかもです。それを探らずして、どうして戦いつづけましょうか」


 リリは実に合理的な解答を述べた。


「逃げるにしても戦うにしても……別の光をさがしましょう。


 それは死に戻り前では出せなかったリリィの答え。


 安心はできない。

 だが最悪の未来にはつながらないのではと、たしかな道しるべが見えて、俺はそこで初めて「はあああ……」と息を吐いた。


 俺が固まった指を動かしながら両手を離すと、くすくすと笑われる。


「……なんだよ?」

「まさか、こんなにも大事に想われているとは考えていなかったもので」

「もし。仮定。かもしれない話。はーっ、それで浮かれちゃうとはなー」

「仮定の話でも……私は、とても嬉しく……幸せな気持ちでおりますよ? ハルヤ様」


 本当に幸せそうに微笑むのだから、俺の頬と耳が痛くなった。

 くそう、俺、絶対赤くなっているじゃん。うぐぐ、リリィはさらに嬉しそうに微笑みやがるし。


 くそう……くそう……くそう……としか、言えねえ。

 ま、まあ、今日のところはリリィに勝ちを譲ってやるとしよう。なんの勝ち負けかはわからんが。


「それではハルヤ様、まいりましょうか」


 リリィは完治したと知るや、捜索をつづけるつもりだ。

 ホントさすがだなと、俺はもう笑うしかなかった。


「ははっ……いや、捜索はやめよう」

「? では、なにを」

「こっちから仕掛けようと思う。活路が……見えてきたことだしな」


 俺が自信満々に微笑むと、リリィは異をとなえずにうなずいた。


 作戦の概要は説明するとして、だ。

 先に意気込みだけを伝えておくか。


「リリィ、運命をぶち壊してやるぞ」

「かしこまりました。ハルヤ様……皆様と一緒に運命を破壊してやりましょう」


 いつだって頼もしい鉄の乙女は、そうして静かに微笑んだ。



 俺のおチン〇がみんなの希望の光になるまで、あと六時間。

 俺のおチ〇ポはいつだって、誰かを想い、たちあがる――

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