第10話

第2話 再会の時


 翌朝、翔太は久しぶりの学園の朝を迎えた。


 「やっぱり、ここの朝は特別だな…」


 窓から見える景色は、星々がきらめく宇宙空間。

 地球の朝とは全く違う、幻想的な美しさだった。


 昨夜は興奮して眠れなかった。

 一年ぶりの学園、そして始まろうとしている新たな戦い。


 **コンコン**


 ドアがノックされた。


 「翔太、起きてる?」


 美月の声だった。


 「ああ、もう起きてるよ」


 ドアを開けると、美月が学園の制服を着て立っていた。

 一年前と同じ、紺色のブレザーとチェックのスカート。


 「やっぱり、制服が一番似合うな」


 「もう、何それ」美月が苦笑いした。「翔太も早く着替えて。みんなが待ってるから」


 みんな…懐かしい響きだった。


 翔太も急いで制服に着替えた。

 袖を通した瞬間、自分が本当に学園に戻ってきたんだと実感した。


 食堂に向かう途中、廊下で何人もの生徒とすれ違った。

 でも、知らない顔ばかりだった。


 「新入生が多いんだね」


 「そうね。緊急事態だから、色んな銀河から優秀な生徒が集められたみたい」


 食堂に入ると、懐かしい声が聞こえた。


 「おーい!翔太!美月!」


 振り返ると、手を振っている人影があった。


 「あ!」


 翔太は思わず駆け出した。


 そこにいたのは、旧3年A組のクラスメイトたちだった。


 「リョウ!」


 最初に声をかけてきたのは、親友の田中リョウだった。

 相変わらずの人懐っこい笑顔で、翔太の肩を叩く。


 「久しぶりだな!元気にしてたか?」


 「ああ!リョウこそ、背が伸びた?」


 「おう、3センチな!」


 リョウは翔太の隣の席だった親友だ。

 明るい性格で、クラスのムードメーカー的存在。

 戦闘では「加速」の能力を使い、スピード戦が得意だった。


 「翔太くん、美月ちゃん」


 上品な声で話しかけてきたのは、委員長の佐藤アヤだった。

 長い黒髪を後ろでまとめ、いつも冷静沈着。


 「アヤ先輩、お久しぶりです」


 「元気そうで何よりです。一年間、平和に過ごせましたか?」


 アヤは一つ年上の先輩で、「分析」の能力を持つ。

 どんな状況でも的確な判断を下せる、頼れるリーダータイプだった。


 「翔太、美月!」


 元気よく駆け寄ってきたのは、鈴木ユウだった。

 小柄だが、とてもパワフルな女の子。


 「ユウちゃん!」美月が手を振る。


 「心配したんだからね!連絡もなしに地球に帰っちゃうなんて」


 ユウは「強化」の能力を持つ。

 小さな体からは想像できないパワーで、格闘戦では無敵だった。


 「ごめんごめん」翔太が苦笑いする。


 そこに、少し遅れて現れたのは、山田ケンだった。

 無口だが、とても優しい性格。


 「翔太、美月…無事だった」


 ケンは少ない言葉で気持ちを表す。

 「防御」の能力で、いつもみんなを守ってくれていた。


 「ケンも元気そうで良かった」


 こうして、旧3年A組の仲間たちが揃った。


 翔太、美月、リョウ、アヤ、ユウ、ケン。

 一年前、一緒に戦い抜いた大切な仲間たち。


 「それにしても」リョウが周りを見回した。「新しい顔がいっぱいだな」


 「そうね」アヤが頷いた。「聞いたところによると、アンドロメダ銀河、ペガサス銀河、うずまき銀河、ソンブレロ銀河から、それぞれ特別編入生が来ているそうよ」


 「四つの銀河から?」美月が驚いた。


 「それだけ今回の事態が深刻ってことだ」ユウが真剣な顔で言った。


 その時、食堂の入り口に人影が現れた。


 「あ…」


 翔太たちが振り返ると、見たことのない制服を着た生徒たちが入ってきた。


 最初に入ってきたのは、銀色の髪をした少女だった。

 制服も銀色を基調としていて、どこかメカニックな印象。


 「アンドロメダ銀河の子かな?」美月が小声で言った。


 その後ろから、赤い髪の男の子が入ってきた。

 制服は赤と金色で、どこか炎を思わせるデザイン。


 「あっちはペガサス銀河ね」


 続いて、青い髪の少女。

 制服は深い青色で、まるで夜空のよう。


 「うずまき銀河かな」


 最後に、緑の髪の男の子。

 制服は緑色で、自然を思わせる柔らかなデザイン。


 「ソンブレロ銀河ね」


 四人は食堂を見回してから、空いているテーブルに座った。


 でも、どこかぎこちない。

 お互いのことがまだよく分からないのだろう。


 「なんか、緊張してるみたいだね」リョウが言った。


 「そりゃそうだろ」ユウが腕を組んだ。「突然知らない銀河に来て、知らない人たちと一緒に戦えって言われたら、誰だって緊張する」


 「でも、仲間になるんでしょ?」美月が心配そうに見た。


 その時、アヤが立ち上がった。


 「挨拶しに行きましょう」


 「え?」


 「同じ学園の生徒なんですから。きっと不安でしょうし」


 さすがアヤ先輩、と翔太は思った。

 いつでも人のことを考えて行動する。


 「そうだな。行こう」


 翔太たちは新入生のテーブルに向かった。


 「あの、こんにちは」


 アヤが声をかけると、四人が振り返った。


 「私たちは天の川銀河から来た生徒です。よろしくお願いします」


 最初に反応したのは、銀髪の少女だった。


 「あ、こんにちは。私はザラ・メタリック。アンドロメダ銀河のテクノロジー学院から来ました」


 ザラは少し機械的な話し方だったが、友好的だった。


 「俺はカエル・フレイム。ペガサス銀河の魔法学院から来た」


 赤髪の男の子が元気よく自己紹介した。


 「私はルナ・ムーン。うずまき銀河のサイキック学院です」


 青髪の少女は、とても上品で落ち着いた印象だった。


 「僕はバイオス・グリーン。ソンブレロ銀河の自然学院から来ました」


 緑髪の男の子は、優しそうな笑顔を見せた。


 「僕たちは天の川銀河総合学院の3年A組です」


 翔太が代表して挨拶した。


 「翔太です。こちらは美月、リョウ、アヤ先輩、ユウ、ケン」


 「よろしくお願いします」


 みんなで頭を下げた。


 「こちらこそ」ザラが答えた。「でも、君たちが噂の…」


 「噂?」


 「『希望のコンビ』の山崎翔太と橋本美月」カエルが目を輝かせた。「一年前に銀河を救ったって聞いてる!」


 翔太と美月は顔を赤くした。


 「そんな大げさな…」


 「いえいえ」ルナが微笑んだ。「私たちの銀河でも有名です。お二人の活躍のおかげで、多くの星が救われたと」


 「僕も聞いたことがあります」バイオスが頷いた。「とても勇敢で、仲間思いだって」


 翔太は照れくさかった。

 そんなに有名になっていたなんて知らなかった。


 「あの…よかったら一緒に食事しませんか?」美月が提案した。


 「いいの?」ザラが嬉しそうに聞いた。


 「もちろん!同じ学園の仲間だからね」


 こうして、天の川銀河の六人と、他銀河の四人が一つのテーブルに集まった。


 最初はぎこちなかったが、だんだん会話が弾んできた。


 「ザラちゃんの能力って何?」ユウが興味深そうに聞いた。


 「私は『技術操作』です。機械を自在に操ったり、改良したりできます」


 「すげー!」リョウが目を丸くした。「俺の『加速』なんて単純だよ」


 「そんなことありません」ザラが首を振った。「スピードコントロールは高度な技術です」


 「カエルくんは?」


 「俺は『炎魔法』!見てろよ」


 カエルが手のひらに小さな炎を作った。


 「おお!」


 「でも制御がまだ甘くて…先輩たちはどうですか?」


 「僕は『防御障壁』かな」ケンが答えた。


 「私は『状況分析』よ」アヤが説明した。「戦況を瞬時に把握して、最適な戦術を立てる」


 「すごい…」ルナが感心した。「私の『精神感応』も、みんなの役に立てるかな」


 「精神感応?」


 「相手の心を読んだり、テレパシーで仲間と連絡を取ったりできます」


 「それは絶対に役立つ!」美月が目を輝かせた。


 「バイオスくんは?」


 「僕は『生体操作』です。怪我を治したり、植物を操ったり…でも戦闘は苦手で」


 「大丈夫!」翔太が笑った。「戦闘だけが全てじゃない。みんなを支えることも大切な役割だよ」


 バイオスが安堵の表情を見せた。


 そうやって話していると、あっという間に時間が過ぎた。


 「あ、そろそろ授業の時間ね」アヤが時計を見た。


 「今日の一限目は何でしたっけ?」美月が首をかしげた。


 「確か…『緊急事態対応実習』だったと思う」ザラが答えた。


 「実習?」


 その時、館内放送が流れた。


 『全生徒は第一訓練場に集合してください。緊急事態対応実習を開始します』


 「やっぱりな」リョウが立ち上がった。


 「実習って、まさか…」ユウがにやりと笑った。


 「模擬戦闘かもしれませんね」アヤが推測した。


 十人は連れ立って、第一訓練場に向かった。


 訓練場に着くと、すでに多くの生徒が集まっていた。

 全部で約五十人。各銀河から集められた精鋭たちだった。


 「みんな、集まったな」


 前に立ったのは、戦闘教官のマックス先生だった。

 筋骨隆々で、いかにも強そうな見た目。


 「今日は君たちの連携能力を確認する。チーム戦だ」


 やっぱり、と翔太は思った。


 「十人一組でチームを作る。制限時間は三十分。バトルロイヤル形式で行う」


 生徒たちがざわめいた。


 「ただし」マックス先生が手を上げた。「今回は『混合チーム』だ。同じ銀河出身者だけでチームを組むことは禁止」


 「え?」


 「異なる銀河出身者が協力して戦う。これが今回の目的だ」


 翔太たちは顔を見合わせた。


 つまり、天の川銀河の六人と、他銀河の四人でちょうど十人。

 自然とチームが決まった。


 「面白そうじゃない?」カエルが笑った。


 「でも大丈夫かな…」バイオスが心配そうに言った。


 「大丈夫よ」ルナが微笑んだ。「みんなで協力すれば」


 「そうそう!」ユウが拳を握った。「一緒に頑張ろう!」


 チームが決まると、作戦会議の時間が与えられた。


 「えっと…」翔太が口を開いた。「まず、みんなの能力を整理しよう」


 アヤが手帳を取り出した。


 「前衛:リョウ(加速)、ユウ(強化)、カエル(炎魔法)」

 「中衛:翔太(適応)、美月(安定)、ザラ(技術操作)」

 「後衛:私(分析)、ケン(防御)、ルナ(精神感応)、バイオス(生体操作)」


 「バランスは悪くないですね」ザラが分析した。


 「問題は連携だな」リョウが腕を組んだ。


 「大丈夫」ルナが言った。「私のテレパシーで、みんなの意思疎通をサポートします」


 「それは心強い」美月が頷いた。


 作戦会議は順調に進んだ。

 初対面の四人も、積極的に意見を出してくれる。


 「よし、基本戦術は決まったね」翔太がまとめた。


 その時、ホイッスルが鳴った。


 「時間だ!各チーム、所定の位置に付け!」


 十人は手を重ねた。


 「頑張ろう!」


 「おー!」


 新しいチームの初陣が、今始まろうとしていた。


 果たして、異なる銀河出身の十人は、うまく連携できるのだろうか?


 そして、この実習の真の目的とは…?


 ――次回、第3話「初陣の試練」へ続く。


-----


**第2話 完**


*次回予告:いよいよ混合チームでの初戦闘!でも、連携がうまくいかず大ピンチ!?そんな時、翔太の新たな能力が覚醒する…!*

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