第4話 赤いペチュニア


「……間に合わない!!!」


 噴火から三日前なんてどう足掻いても間に合わない。

 結局俺は今回も大津波を止めることは出来なかった。













 それからは地獄の日々だった。


 噴火が起こる事が分かっていても証拠がない。証拠がなければ対策を取ることができない。

 俺は諦めず何度も何度も挑み続ける。だがどれだけ足掻いても結果は散々なものだ。




 どれだけ調べても何一つ見つからない。信頼できる人に言っても予知夢のことは信じてもらえない。

 そんな日々がただ続く。そしてとうとう俺は壊れてしまった。








「ウヒ…ウヒヒヒヒヒ!!!!」


「教授?! 教授しっかりしてください!! 誰か今すぐに救急車を!!」


 精神が完全に壊れてしまったようだ。俺はひとしきり笑い続けた後、ただボーっと虚空を見続けた。

 俺は重度の患者が入る精神病棟へと入院し、残り一生をそこで過ごすこととなる。

 周りには俺と同等がそれ以上にヤバい患者の集まりだったが、俺はそいつらに反応することも無くただ虚空を見続ける。



 そんなある日のこと。私はいつもの日課で精神病棟の中庭へと散歩しに行った。もちろん歩かないから車椅子で。


「今日もいい天気ですねえ」


「……………」


 何か言っているようだが頭に入ってこない。


 目の前の光景が色褪せ、白黒の光景が周囲に広がっている。

 これは精神が壊れてから俺に出てきた症状だった。


「ここで待っててくださいねえ」


 看護師はそう言うと他の看護師と話し始めた。俺との散歩時間はどうやらサービスタイムだと思っているらしい。

 何もせずただボーっとしているからどう扱っても大丈夫だと思っているのだろう。




 まあそのとおりだ。俺は何も考えずただボーっとし続けていた。

 そんな時、何故か一つだけ白と黒以外の色が見えた。無意識の内に俺はそちらに視線を向ける。




「…………ァ?」


 赤いペチュニアが咲いていた。最近になって植えられたのか他の花とは違い元気に咲いている。

 何故この花だけは色を感じるのだろうか。気付けば目からは涙が溢れ出ていた。


「ァァ……アァァァァ!!!!」


 そうだ。これは私の娘が好きだった花だ。その事に気づいた時には絶叫しその場で崩れ落ちていた。

 私は……私は彼女を殺した。私は結婚を拒みただひたすら大津波の対策を考え続けた。彼女はこの世界に存在していないのだ…。



 ……それなのに。彼女を殺してまでただひたすら続けてきた大津波の対策から逃げて良いのか?



 良いわけがない!!! 



 心に再び炎が宿る。俺は再び決意を胸に立ち上がった。

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