第2話

第2話



「どうって……。少しは手加減して。私はあなたが誰か、判別ついてない状況なのよ。それをわかってないわけ?」


 私としては、青年である男性を諭すことに考えてしまうけど、まずは冷静に対処と念じ、自分を抑えながら問う。


「じゃあ、記憶が戻ってないってことかい? 残念だね」


「ね、ねえ。名前は?」


「僕? 僕はウライフ。どうあれ、カフライと間違えてばかりだったしね。呼ばれる名前なんて、僕は気にしないけど」


「自分の名前だし、気にしたらどうよ。それに間違える? どうして? 瞳の色だって、三人とも微妙に違うってきいているわよ」


「僕とカフライもシフイルもね、一つの瞳は茶水晶だから、よく似ているからじゃないかなあ」


「確かに茶水晶は一緒ね。じゃあ、カフライとは、仕草とか雰囲気も似ているってこと?」


 少し寂しげなウライフの言葉が気になり、私は遠慮なく問い返す。


「仕草や雰囲気? それはどうかなあ。でも背丈や体つきは、ほぼ一緒。正装で身につけるマントは、海松色が基本だから、似ているぶん他の人も間違えたりするけどねえ」


「でも、雰囲気が違えばそれなりに変わるのでは? 双子の友達もそうだったし」


 うーんと唸りながら、私が言う。


 ウライフは、好奇心あらわに瞳を瞬かせている。


「へえ。それは楽しみ。以前とどう違うのか、面白くなってきたね」


「面白がられても困るわ。ともかく出て行って。こんなの間違っているわ」


 私は、我に返り厳しく指摘した。


 ウライフは、気にすることなくそのままベッドに上がり、じりじりとにじり寄ってきた。


「嫌だ。以前とどう反応が変わるのか、僕はぜひとも見てみたい」


「サイテー! 出て行きなさいよ!」


 私は、ウライフの言動に呆れ、目を吊り上げる。


 積み重なっている枕の一つを取り上げると、美貌を刻む顔に思いっきり投げつけた。


「もう、何やっているからっ」


 ウライフは、剛勇無双で強固であり、ぼやいていてもびくともしないし、面白げに口元が笑っている。


「だから、出て行きなさいって!」


 私は、そのことが余計に腹立った。


 次々と枕を拾って、力をこめて投げつけていく。


「わ、わかったよ。わかったって」


 ウライフは、さすがに慌てたらしく、尻込みし、ベッドから飛び降りる。


「私は私で、以前とは全然違うの! こんなの嫌だし、常識はずれなことはしないで! わかった? ウライフ」


 私は、今後のことを憂慮し、ウライフに念を押すことにした。


「違うのはわかったけど。ねえ。僕はこの国の王子だよ? そっちこそわかっている?」


 ウライフが逆に威嚇してきたので、私は一瞬慄いた。

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