第53話 本隊を撃破せよ!(主に帝国人だけ)

 俺とアルシェが暴れたお陰で、本隊を統率する帝国人が顔を出した!

 あれ、胸元に勲章を付けてて派手な軍服を着ているから、かなり偉い感じの将軍ではないか?


 よし、スポッターのナルよ、任せたぞ!

 盗賊スキルを上げたことで、鳥の目的な遠方観察用の能力が身についているはずだからな。


 おっ、ナルが混乱する兵士たちの頭の上を、サササーッ走る。

 で、将軍を指さしてぴょんぴょん跳ねた。

 スポッターってそう言う仕事だったっけ……?


 将軍はこれに気づいてギョッとしている。


「な、なんだお前は! おいお前たち! この女を捕らえ」


 ズキュゥーンッ!!


 凄い音がして、将軍の眼の前で一瞬だけ光が弾けた。

 結界に当たったか!

 と思ったら結界がガラスのように砕け散り、守りを失った将軍の頭がパーンと爆ぜて無くなった。

 バタッと倒れる将軍ボディ。


 完膚なきまでに死んだ!


「どひぇー」


 ナルは自分がスポッターをしたことで、とんでもない状況を招き寄せた事実に震え上がっていたが……。


「いいぞナル! その調子で帝国人だけ見つけ出してくれ! 頼れる女だなあー!!」


 俺が褒めたら、ニヤニヤっと笑った。


「そ、そぉ? じゃあ頑張る! ほいほいほーい! ここも! ここにもいるよ、偉そうな人!」


「な、なんだこいつはーっ」


 ズキューンッ!!


「やめろ、来るなーっ!」


 ズキューンッ!!


 恐らくは魔法や狙撃を防ぐための結界を身に着けているのだろうが、そんなもんはヴェローナに通じない。

 圧倒的なレベルの暴力で、真っ向から結界をぶち抜くのだ。


 偉そうなのを三人、それと最後に、魔法使いらしき帝国人がいたので……。


「ツアーッ!」


「うわーっ! な、なんだお前はーっ!! 兵士ども! 俺を守れ! 俺を!」


 誰も言うことを聞かない兵士たち!

 彼らを見張っていた帝国の将軍が立て続けに殺されたのだ。

 もともと忠誠心が無いなら、言うことを聞くいわれなどない。


 俺を魔法使いのところまで、一気に通してくれたしな。


「おのれ貴様ら! 服従の魔法を掛けているのを忘れるな! 貴様らの命を賭けて俺をまも……」


「ツアーッ!!」


 練気を込めたチョップで結界を破砕!


「ウグワーッ!? なんで!? 素手で結界破砕なんで!?」


「うるせえーっ! 喰らえ! エアプレーンスピンだ!」


「馬鹿め! 私の体には刃や打撃を弾く魔法の加護が……ウグワーッ!? 組み付いて持ち上げて振り回して……投げぇーっ!?」


 上空めがけて魔法使いを投擲したところに、ヴェローナの狙撃が決まった。

 しかし、かなり厳重に守りの魔法を掛けていたらしい魔法使い!


 これをどうにか凌ぐ!

 やるなー!

 こいつ、帝国でも名のある魔法使いなのでは?

 やつは飛行の魔法らしきもので浮かびながら勝ち誇る。


「わはは! 勝負は預ける! 王国がいきなり襲ってきたと私が報告すれば、帝国は全力で王国を潰しに掛かるだろう! 愚かな襲撃をしてきたお前たちが悪」


「概念関節技! 足4の字固め!!」


「ウグワーッ!! 足が! 足がーっ!!」


 強烈な痛みで魔法使いの集中力が霧散!

 やつは真っ逆さまに地面に落ちた。

 頭から落ちた。


 刃や打撃、魔法を防ぐ加護をその肉体に得ていたらしいが……。

 落下ダメージを防ぐ加護はなかったらしい。


「ウグワーッ!!」


 断末魔の声とともに、魔法使いは死んだのだった。


 周囲の兵士たちは唖然とし……そしてざわつき始めた。


「そんな……まさか……!」「帝国の最強魔道士軍団の筆頭、バッシュが死んだぞ!」「良く分からない攻撃でバッシュが死んだ!」「俺達に掛けられた魔法が解けてる!」「うおお! 自由だ! 俺たちは自由だ!」


 そして一斉に俺を見た。


「あんたがやってくれたから……!」「ありがとう! ありがとう、謎の格闘家!」


「騎士です!」


 俺の名誉のために言っておく。

 俺は格闘家ではない。

 どこからどう見ても騎士なのである。


 兵士たちは一斉に首を傾げた。

 なんだね?

 何が疑問なんだね?


 とにかく!

 帝国に脅されて従っていた、支配地の兵士たちは解放された。

 彼らの中にリーダー格はおらず、見た感じ烏合の衆。


「どうか、我々の国を解放するために手を貸してください!」「妻も娘も、皆帝国の連中に……うううう」「俺達が手出しできないのをいいことに、今頃どんなひどいめに遭わされているか……」


「エッッッ!? それってNTRされたのか!?!?!?!?!?!?!?!?」


『いけない!! 勇者のスイッチが入りました! 今完璧に入りました!! みなさーん!! 勇者を止めてくださーい!! このままだとこの人、たった一人で帝国と戦い始めますよーっ!!』


 これは大変と、チエリとナルが走ってきて俺にすがりついた。


「落ち着いてくださいジョナサンさーん!! 一人でなんて無理ですよーっ!!」


「そうだよー! 一旦お城まで戻って団長さんに許可もらうんでしょー! 盗賊ギルドからの情報も集めないと」


「そうだった。NTRの気配を感じるとバーサーカーになってしまう。いかんいかん。諸君、そのうち助けるんで、一旦国まで帰ってくれ。あと、この人数を養う食料はないんでどうにか頑張って戻ってもらって……」


 兵士たちが一斉にがっかりした。

 気持ちは分かるが、俺にも俺の事情がある。

 すべてを捨ててNTRを爆砕するために駆けつけるわけにはいかないのだ。


 サブヒロインじゃないしな……。

 だが、それでいいのか?

 良くはないだろう。


 考えろ俺よ。

 たとえサブヒロインではなかろうと、眼の前の男たちにとっての大事な女たちが寝取られているのだ。

 これに怒り、NTRを爆砕しなくて何になる?


「ここからは……RTAだな。本編には無かった展開だが、攻略の鍵を手に入れるためにバイフンと接触する……!!」


「ジョナサン、明らかに冷静じゃないんだけど……盗賊ギルドに行くって言ってるからまあいっか……」


『ナル、考えるのをやめてはいけません! ヴェローナ! アルシェ! 勇者を止めるのです~!』


「私としては、ジョナサンが戦う意志を示しているならついていくだけですわ。彼の戦いはとても刺激的ですもの」


「思ったより面白いやつだったわね。それに、女神の言うことなんか聞くわけないじゃない! あんたが困るならジョナサンの手伝いをやってやるわ!」


『ひぃー! 寄り道確定ですーっ!!』


 セレスの悲鳴が響き渡るのだった。



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