第43話 不死王の書庫へ

「よし、では約束通り、君の質問に答えよう。何が望みだね?」


「ありがたい! 実は俺はレイク王国の騎士なのだが」


 俺が素性を明かすと、どよめく冒険者たち!!


「レイク王国の騎士って素手で戦うのか!」「なんて破天荒な連中なんだ」「だが国ごと凍りついちまったって話だぜ!」


「ああ~! 皆さん、ジョナサンさんを基準にして王国の騎士を想像しています! これは大変ですー!」


 チエリが慌てているが、落ち着き給え。

 俺が基準なら、なんか相手は凄く警戒するだろう。

 そうすれば攻められることも減り、王国は安泰というわけだ。


「レイク王国か。ということは……時間凍結が行われた場所だね。魔道士ボナペテーは焦りのあまり、己の手に余る大魔法を行使してしまったと見える。……ということは、ジョナサン。君の質問とはこの時間凍結を解除する方法か」


 イグザクトリィ!


「その通りだ。あんたなら知っているだろう?」


「ふむ……君は私のことも正しく理解しているようだね。現役時代は我がピットセブンティーンに近しいクランのメンバーだったのだろうな。良かろう! ついて来るがいい」


 グーテンが歩き出す。

 それにヴェローナが付き従い、俺とチエリとナルも続いた。


「あー、待ってくれ。彼女たちを連れて行くわけにはいかない。君だけだ」


「それは困る! グーテン、俺がいなくなった瞬間に二人はNTRされるかも知れないんだ」


「なにっ!!」


「二人がNTRされない形になるならば、ここに置いていこう」


「なるほど……それは由々しき問題だな」


 グーテンがちょっと考え込む。

 そして、指をぱちんと鳴らすと、チエリとナルが大きな球体の中に閉じ込められた。


「きゃー!」


「うわー! なんだこれー!」


「この不可触の結界球に入っていれば、手出しをされる心配はない。君が戻ってくるのをきっかけとし、この魔法は解けるように設定してある」


「おお、ありがたい! じゃあチエリ、ナル、ちょっと行ってくる! すぐ戻ってくるからな」


「行ってらっしゃい! ジョナサンさんが、王国を救おうとしてることだけは分かってますから!」


「そうなんだ!? 頑張れー! ジョナサーン!」


 女子たちに応援されたのだった。


「では移動しよう。ブラインドマジック」


 一瞬だけ、冒険者ギルド付近が暗闇に包まれた。


「コールポータル。さあ、こっちだ」


 不死王の眼の前に、グニョングニョンとした次元の歪みみたいな渦が出現する。


「おう」


「躊躇せずにポータルに飛び込みましたわね」


 呆れるヴェローナの声を聞きながら、俺は周囲がぐねぐねとうねるのを感じた。

 視界が曖昧になり……気がつくとそこは、クラシックな雰囲気の書庫になっていた。


「あっ、ファンタジーっぽい……!」


「私は雰囲気を重視している。さて、この書庫の中に君が探している本があるはずだ。時間凍結を解除する魔法だよ」


「どれなの?」


「……わからん……」


「えーっ!! お前自分の書庫だろ!? 管理しろよー」


「すまん」


「あ、あ、あまりにもグーテン様に失礼では!? グーテン様! どうかこの男を罰する許可をくださいませ!」


 俺がグーテンダークにタメ口をきいているので、ヴェローナが顔を真赤にして怒った。

 それでも処すとならない辺り、優しいー。


『彼女は勇者に絆され始めているのですよ! 落とすのも時間の問題ですよ!』


「ちなみにそれはグーテンからするとNTRになる可能性があり、この不死王はNTR絶対許さない勢なので戦いになっちゃうな」


『それはそれです。不死王も通過点ですからね! 実りのためには仕方ありません!』


「実り過激派~!!」


 恐ろしい女神だな。


「落ち着くんだヴェローナ。彼は私と同郷の存在だ。つまり、人間の肉体に宿っているだけで精神はこの不死王と等しい存在だということだ」


「そ、そうでしたの!?」


 広義ではそうだけど、色々勘違いさせる言葉だなあ。


「よし、ヴェローナも分かってくれたところで! 一緒に調べてもらえると嬉しいぞ!」


「いいだろう。私も書庫の整理はしようと思っていたんだ。この機にざっと眺めて、把握することも兼ねよう」


 わいわいと書庫に挑む俺とグーテンダークなのだった。

 なお、書庫に降り立った彼は冒険者グーテンではなく、真の姿に戻っている。


 青白い肌に黒いローブ、あちこちに白銀のアクセサリーを身に着けた魔道士のものだ。

 二人で、あっちでもない、こっちでもない……と探す。

 まあ、書庫とは言っても物凄く本が多いわけではない。


「ここにあるのは全て魔導書なんだ。だから冊数そのものは小学校の図書室くらいの量しかない」


「ありがたい! 図書館並だったら数日掛かるところだった!」


 結果的に、ほんの三十分ほどで目的の本が見つかった。

 しかも、必要なのはほんの一部の記述だけである。


「これが時間凍結の解除方法か……! 俺は魔法を使えないんだけど大丈夫かな?」


「ああいった儀式魔法は解除するために設けられたウィークポイントが必ずある。これのポイントを破壊すればいいんだ。並の人間であれば手出しもできないだろうが、君なら可能だろう。私を速度で圧倒した、君の一撃であれば」


「力づくで破壊ってわけか。話が早い! ありがとうグーテン、助かった!」


「なに。私は約束を果たしたまでのことだ。それに、ヴェローナから贈られてくる君との冒険の話はなかなか刺激的だからね」


「……あの、グーテンダーク様。私はそろそろ戻ったほうが……?」


「いや、もうしばらく彼と行動をともにしてくれ。私も彼の行く末を見届けたい。彼が私の敵になる可能性があるとしてもね」


 グーテンダークの鋭い視線が俺に向けられた。

 彼は、俺を、NTRを呼ぶ存在と認識した風だったな。

 いつか本気でやり合う日が来るだろう。


 ただまあ、この不死王、根本的に善良っぽいんだよなあ。

 カオティック・グッドって感じがする。


 できればやり合いたくはないものである。

 NTRとも関係なさそうだし。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る