第46話 宴だぁー!!

 体が元気になれば今度はお腹が減るもので……


 元気になったアクダマス領の人たちと一緒に、ご飯の準備をしている。


 大勢の人でワイワイと食べるとなれば。

 

 あれでしょ?


 肉祭り。

 海賊の宴の定番。


 ドンバッセル領では、よくみんなでしていた肉祭り!


 ワイワイとみんなで焼き台を囲み、肉を焼いて食べてと、楽しい肉のお祭り。

 赤い狂騎士たちは「ガハハッ」と笑いながら、楽しそうにエールを飲んでいたけれど。


 というわけで、ここにはその焼き台がないので、錬金術で大きな焼き台をたくさん作った。

 人数が多いのもあり、イメージはBBQの時に使う焼き台のかなり大きなものにした。

 あの森で入手した鉄鉱石がかなり役に立っている。


 焼き台は、教会の前に建てられていたテントを活かし、そこに並べた。

 まるで急遽作られたお祭りのテキ屋のよう。


 さらに、肉祭りに必須の炭! この街には炭がなかったので、炭も作った。


 炭は普通に作ると手間だしかなり時間がかかるんだけれど、炎魔法のアレンジバージョンで、時間も少なく作れちゃうのだ。


 これも叡智さまさま!


 しかも魔力を帯びているからか、魔法で作った炭は長時間もつ優れもの。

 野営時の火に重宝すると、喜んでくれている。

 

 炭はドンバッセル領で需要が高いのだ。


 という訳で、ドンバッセル領でしょっちゅう作っているので、炭作りもなれたものだ。


 炭を用意し、肉祭りの準備をしていると。


「レレッレティ!? これは一体!?」


 お父様たちがやってきた。


「本当に何が!? 病気で伏せっていたのでは!?」


 テーバイ皇帝陛下もお父様と一緒に驚いている。

 やらなければならない仕事を終え、街の人たちの様子を急いで見にきてくれたようだ。


 その姿は、服装を街の人のように変えている。

 それはお父様もそう。

 みんなお忍びファッションになっている。


 なので、驚く皇帝陛下に一人の老人が応える。


「驚くのも無理はない。さっきまでこの街は死んでいたからのう。だけど、一人の天使さまが現れて、ワシらの病を全て治癒してくれたんじゃ」


 その老人の言葉を皮切りに、我先にと街の人達が口を開く。


「そうだ! もう死を待つしかないと思っていた息子を、天使さまは助けてくれた」

「旦那の看病で疲れ切っていた私を癒し、旦那まで助けてくれた……ううっ」

「父ちゃんを、助けてくれた! 天使さまありがとう」


 ……ええと、天使さまと言って、チラチラ私を見るのやめてもらって良いですか?


 しかも「天使さまの事は内緒だよ?」っと付け加えてるけれど、バレバレですが?


 街の人達は、今目の前にいる人がテーバイ皇帝陛下だと分かってないので、同じ街の人のように扱っている。

 あとで皇帝陛下だと分かれば腰を抜かしそうだけど。


 そんな訳で皇帝陛下とお父様から、なんとも言えない目で見られているわけで。


「レティ……街の人達を治癒するとは言っていたが、こんなにも早く治癒というか、元気にするなんて……想定外どころか意味が分からない!」


 お父様がキョロキョロと周りを見まわし、元気になっている街の人たちを見て落ち着かない様子。


 落ち着いてください。もう終わったんですよ。


「かなりの人数が寝込んでいたはず、なのにこの状況……信じられない」


 さらには皇帝陛下までお父様と一緒に驚く始末。


「まぁ、レティだからね。うんうん」っとジュエルお兄様。その後に「僕も何度もレティシアの奇跡を目の当たりにしているから、もう驚かないよ」とライオスが続く。


 レティだからね? は褒め言葉ととっていいんですよね?


 驚くお父様たちを横目に肉祭りの準備は完成した。

 あとは焼くだけ。

 肉焼き要員は、赤い狂騎士たちが手伝ってくれる。


「よし! みんな肉祭りの始まりだよ」


 私の声を皮切りに、一斉に肉を焼き始める。

 メインはジュエルボアのステーキ!


 ジューシーな肉の焼ける匂いと音の爆発的な効果で、脳が幸せでとろけそうになる。

 それは街の人達も同じで口に入れては最高の笑顔で微笑む。


 みんなで楽しくご飯を食べるのは楽しい。


『うんまいっちぃぃぃ!!』

『キュゥー♪』


 おもちとキュウちゃんも肉祭りを楽しんでくれている。


「んん〜! おいしっ」


 美味しいジュエルボアのお肉をみんなで頬張り、最高に幸せだ。


 他にも無限収納袋に入れていたチーズを使って、チーズフォンデュを作ったんだけど、これも大好評だった。


 特に子供たちに大人気だった。


 普段野菜を好んで食べない子供達が、美味しそうに野菜を食べてくれると、お母様方から大絶賛。

 子供も大人も、パンや野菜をフォンデュして、美味しそうに食べていた。

 

 そんな領民の姿を見たテーバイ皇帝陛下も、チーズをテーバイ帝国でも作りたいと意気込んでいて、この騒動が全て落ち着いたら、ダノン村のドーズおじいさんのところに、料理職人を修行に行かせると意気込んでいた。


 やはり美味しいは正義だね。

 みんなを笑顔にして幸せにする。


「うんまー!!」


 私はというと、ジュエルボアの肉を焼いて、チーズフォンデュにからめて食べたら美味しすぎて……

 こっこれは……食のマリアージュ! ジュエルボアだけに、肉の宝石箱やぁー!!

 新たなイマジナリーさんが登場していた。


 ★★★


 テーバイ編も次のお話で終わりです。

 最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

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