第28話 テーバイに到着

 テーバイ旅行の三日間、もう、鰻祭りと言っていいんじゃないかなと言うくらい。

 毎日、鰻三昧だった。


 前世だと高級な鰻が、電気ウナーギィーが現れると、無料で食べれちゃう。

 最高な三日間でした。

 

 もう、お父様たちや赤い狂騎士たちは、天気雨が降るたびに涎を垂らし絶叫するくらい、鰻中毒になっていた。


 前世で鰻大好きな私も、絶叫するその気持ちは重々分かるけれど。

 それほどまでに鰻はみんなを魅了してしまった。


 そんなウナーギィー祭りも終わり、テーバイ帝国の姿が見えてきた。

 

 砂漠の帝国の名の通り、帝国は砂に囲まれていた。

 田畑がないので、我がエンディバン王国の野菜を主に出荷して、友好国となっているよう。


 確かに砂場で育つ野菜は少なそう。


 その代わり、ここでしか育たない野菜や香辛料などもあるのだとか。


 到着して驚いたのが、魔導船の多さ。

 エンディバンでは、そこまで魔導船は飛んでいなかったのに、この国に入ってから、かなりの数の魔導船が空を行き来している。


 これは近隣の魔導船なども飛んでいるんだろうか?


 エンディバン王国には、魔導船を停泊できる場所は王都だって一ヶ所しかないのに、何ヶ所も空から停泊できる場所が設置されている。


 もしかしてテーバイ帝国は、かなり発展している国なのでは?


 エンディバン王国はゲームの設定上あえて発展していない世界だった、だけどここはゲームでは名前だけ登場し、実際に行けない国。


 うわわわっ! そんな国に今から私は行けるんだ。

 

「楽しみすぎるー!」


「どうしたのレティ? 急に」


「ジュエルお兄様! いえ、テーバイ帝国がこんなにも発展しているなんてと、驚きと嬉しさで……」


「確かにね、僕もビックリしたよ。明らかにエンディバン王国より、はるかに発展しているね」


 私とジュエルお兄様がテーバイ帝国に驚いていると、それはお父様たちも同じだったようで。


「初めてテーバイ帝国に来たが……これはすごいな」


 お父様も圧倒されたよう。


「ふふふ、こんな素敵な場所、色々と観光して回るのが楽しみですわ」


 お母様は呑気に、観光を楽しむ気満々のよう。


 今回のメインは、王妃様の謎の呪いを治すことなんですよ?


 王宮に着き魔導船を停泊すると、すでに使者が待っていて、テーバイ国王陛下の所に案内してくれた。


 王宮内も、作りがエンディバンとは全く違って、ついキョロキョロ見てしまう。

 とにかく刺繍が美しい。

 歩いている場所に敷かれている絨毯とか、踏んでいいのかなとさえ思ってしまうほどに美しい。

 

「レティ? 興味津々だね」

「そうなんですよ! 絨毯やカーテンなどに描かれている刺繍が美しすぎて身惚れてました」

「その気持ち僕も分かるよ! つい見ちゃう。自分の部屋にも欲しいなぁ」

「ですよね!」


「ジュエル様! レティシア様! まだこちらに居ましたか」


 ジュエルお兄様と刺繍を興奮気に見ていたら、お父様たちからだいぶ遅れたらしく、赤い狂騎士が呼びに来た。

 なんだかすみません。


 大きな扉の前に案内され、案内してくれた人がノックし扉を開けてくれ、中に入って下さいと促される。


「ふわぁ……」


 中に入ると、それはもうキラキラと眩しい部屋だった。


「よく来てくれたね。落ち着く暇もなく申し訳ないんだが……妻をアリアンアを見てくれないだろうか」


 国王陛下の顔がやつれている……何があったのだろう。


「もちろんです。そのためにテーバイに来たのですから」


「ありがとうレティシア嬢。こちらに来てくれたまえ」


 国王陛下の案内の下、奥にある部屋に入ると……ライオスが青い顔をして、ベットに横たわる夫人の手を握っている。

 状況から見て、王妃様の容体はかなり酷いと憶測できる。


「もうね、ずっと寝たきりなんだ……ほとんど目立って開けない。妻の容体は良くなるのだろうか……」


「解呪してみますね!」


 呪いではなく病気なら、解呪しても意味がない……。

 治らなかったらどうしよう。


 一瞬不安になるも、私がそんなんでどーする! 最強のスキルをもらったラスボスレティシアなんだから!


 それなら、魔眼で病状を見て、治す魔法を教えてもらったらいいんだ。

 うん! いける。王妃様を治せる!

 

「《解呪》」


 王妃様に向かって想像魔法を使う。すると、ライオスの時と同様に黒い塊が体から出てきて、どこかへ飛んで行った。

 ライオスとは違った呪い。呪いって色々あるのね。


「《叡智》これってどんな呪いなの?」


 ピコン。


 これは三年かけてジワジワ苦しめながら弱らせていく呪いですね。

 三年後に体力が衰えなくなります。



 何それ!? ものすごい嫌がらせ。性格悪い。


「国王様、今飛んで行った黒いのが呪いです。今かけた相手に呪い返しで戻っていきました」


「え、あれが呪い!? じゃあアリアンナの呪いは解呪できたってことだね! あああっ、レティシア嬢ありがとう、本当にありがとう」

「レティシア、お母様の呪いまで解呪してくれてありがとう」


 国王陛下とライオスの二人がお礼を言ってくるが、まだ早い。

 呪いは解呪したけれど、王妃様の容体は死ぬ一歩手前なのだから。


「《叡智》王妃様の容体を回復するにはどうしたらいいの?」


 ピコン!


 エリクサーを飲ませるほか手立てはありません。

 ここまで身体を蝕んでしまった状態を回復できる創造魔法はありません。

 怪我や欠損なら創造魔法で作れるのですが。


「エエッエリクサー!?」


 そんな無理ゲーな。


 エリクサー……私は【エデン】で戦闘系の職業しか選んでこなかったから、エリクサーの作り方なんて全く分からい。

 そもそもかなりの熟練度を上げないとエリクサーは作れないはず……


「エリクサーはどうやって作るの!?」


 ピコン!


 エリクサーはユグドラシルの葉に黒竜の血、それを錬成された聖水で混ぜることにより作れます。


「ええっ!? ユグドラシルの葉!? そんなのどうやって見つけたら」


 ピコン!

 

 ドンバッセル領の深淵の森の奥深くにユグドラシルの大木があります。


「ナイスゥ!」


 ん!? って往復で六日間もかかるじゃない。

 それは無理だ。採ってくるまでに王妃様の体が持たない。


「どうしたら……っ」


「どどっ、どうしたんだいレティシア嬢。泣きそうじゃないか」


 国王陛下がビックリしながら私を見る。

 せっかく治癒できそうなのに、時間が足りなくって……悔しくて感情が顔に出てしまっていた。


「すみません。解呪はしたんですが、王妃様の容体を治すにはエリクサーが必要で、エリクサーを作るユグドラシルの葉をすぐに入手できなくて……」


 私が泣きそうになりながらそう言うと、国王陛下は「ユグドラシルの葉は持ってるよ」っと言い放った。


「えええええ!? 持ってるんですか!?」

「うん。過去に偶然手に入れて大事に保管している」


 ちょちょ!? じゃあ後は黒竜の血じゃん。ブラックサンダーはドンバッセル領にいるんだけれど、私が羽を直した小さな黒竜、クロちゃん(命名した)は一緒について来てるのだ。


 あれ!?

 これはイケる!


 王妃様 エリクサー作りますので待ってて下さいね。

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