第19話 謎の男の子
「みっ、見ないで! 気持ちの悪いものを見せてごめんね」
慌てて床に落ちた眼帯を手に取り、必死に目を隠す。
「だだっ、大丈夫これは
目の前の少年は眉毛を八の字にし、今にも泣きそう。
自分の事を気持ち悪いと言って……
私は見た目など全く気にしないんだけど。
なんだろう……この眼帯姿、既視感がある……ん!?
「あああっ! 思い出したぁぁぁ!!」
「ひっっ!?」
「あっ、ごっ、ごめんね。急に大きな声を出してビックリするよね」
この男の子は【ライオス・テーバイ】、ゲーム【エデン】の隠しレアキャラだ。
砂漠の帝国テーバイから、学園に留学してくるのだけれど。見た目を気にし、いつも何処かに隠れている。
そう、彼に出会う事が一番難しいレアキャラなのだ。
どうにか探し出して、ライオスの顔の呪いを解くと。封印されていた彼本来の強さを取り戻し、一緒に冒険してくれる心強い仲間となってくれるのだ。
この顔の呪いを解くには、エリクサーしかない。
エリクサーは迷宮で入手するか、生産系スキルのレベル上げを頑張り、自分でエリクサーを作るしか方法はない。
生産系スキルを選ぶ人たちは、戦闘には不向きなんだけれど、このライオスの呪いを解いて、仲間となると話は別。ライオスと共に迷宮に潜り、レアアイテムを入手しまくっていた。
ライオスの力は、生産職にとってはまさにチート能力。
ネットでライオスの存在が知れ渡ると、生産職でアバターを作り直す人たちが多数現れた。
だけど、エリクサーを作れるようになるには、かなり修行しないといけないし、そもそもライオスを見つける事が困難。
なので彼を仲間にするのは、レティシアを倒す次くらいに難関だと言われていた。
私も一度だけ運よく仲間となり、一緒に戦ったことがある。結局レティシアに負けたけれど。
「この呪いが解けたらなぁ……」
「え? この顔が呪いって分かって?」
しまった心の声が出ちゃってた。
「あの……ええと、そう。なんとなくだけど、呪いかなって。あと、その顔を隠さなくていいよ? 私は何も思わないから」
ものすごく言い訳くさいけれど、知っているとは言えないし。
私の言葉を聞き、目を見開き驚くライオス。
「……そんなこと初めて言われた。本当に……気持ち悪くない?」
「うん。当然!」
ライオスは、少し恥ずかしそうに眼帯で隠していた顔を見せてくれた。
せっかくの綺麗な顔が呪いのせいで台無しだ。
幼少期からこの顔でずっといるのは苦痛でしかないよね。
今はゲームの世界でないわけだし。どうにかこの呪いどうにか出来ないかな……。
「ねぇ叡智、この呪いって解呪できない?」
ピコン
——はい。想像魔法【解呪】で可能です。解呪、創造魔法で創りますか?
「え!? 本当に解呪できるの!?」
ピコン
——はい。【解呪】を創れば。
「つくる、つくる! 解呪、創るー!!」
「あ、あの……」
私が一人ごと(大声)を言ってるから、この子大丈夫なの? って顔で、ライオスが私の様子を伺っている。
安心してください。私、怪しい奴じゃないんで。
そ・れ・よ・り・も! 呪いが解呪できる事の方が先決。
「あのねっ! その呪い治るよ! 私が【解呪】できるみたい」
「えっ、今なんて?」
「治るの! 解呪できるの」
「呪いを解呪……」
「うん」
ライオスの目を見て大きく頷く。
だけどライオスは私から目を逸らし俯く。
あれっ!? 嬉しくないの?
「……ありがとう。気持ちはすごく嬉しい。でもね、今まで何人もの呪具師や解呪師に呪いの解呪お願いしたけれど、誰も解呪できなかった。だから諦めているんだよ」
あ、そういうことか。そりゃそうだよね。解呪しようとしてるよね。エリクサーで治るってことも知らないだろうし。
「あのね、ちゃんと聞いてね。内緒だけど私は想像魔法と叡智というスキルを持っていて、叡智が解呪の魔法を創れるって言ったの! だから本当に解呪できるの! 私を信じて」
そう言うと、ライオスは固まってしまった。
「あの……?」
「本当に僕の呪いを解呪できるの?」
「うん!! できる!!」
力強い大きな声ではっきり答えると。
「うあぁぁぁぁぁぁんっ」
ライオスは、今日一番の大きな声で泣き出した。
それほどに今まで色々と辛いことがあったのだろう。
さっきの虐めだって、呪いが原因かもしれないし。
私はライオスが落ち着くまで、頭をずっと撫でていた。
「……ふぅ」
「落ち着いた?」
「……ごめんね。急に泣き出して」
「大丈夫だよ。じゃあ、その呪いを解くよ? いい?」
「うん! お願い」
私はライオスの瞳の前に手を翳し唱えた。
「《解呪》」
私の手から光が溢れ、ライオスの目を覆っていく。
光はどんどん広がり。
ライオスの顔を覆い尽くし光は消滅した。
そしてライオスから黒い何かが飛び出し、遠くへと飛んで行った。
光が消えたライオスの顔は……。
「あっ! 治ってる! お顔が綺麗に戻っているよ」
「……うん。分かる、僕の封印されていた魔力が戻ってきた。力が漲って溢れ出しそう」
ライオスが自分の力を確かめるかの如く、魔力を高めているのが分かる。
だって体が大きな魔力で覆われているのが見える。
それくらい凄い。
……そういえばさっき、ライオスから出ていったあの黒いのは何だったんだろう?
「叡智! さっきのあの黒いのなぁに?」
ピコン
——あの黒いのは呪いです。呪いが解呪されると、呪い返しが発生し。呪いをかけた相手に二倍の呪いが返ってきます。呪いをかけた相手の所に戻ったのでしょう。
呪い返し……そんなことがあるんだ。じゃあライオスに呪いをかけた相手が分かるってことだ。
「あの……ええと君……」
「ふふ、自己紹介が遅れちゃったね。私の名前はレティシア・ドンバッセル、ちなみに年は六歳よ」
「僕は、ライオス・テーバイ。改めて呪いを解呪してくれてありがとう。これからよろしくね。ちなみに同い年の六歳」
「同い年だったのね! こちらこそよろしくね」
この後二人で色んな話をした。叡智から聞いた呪いの事だったり、私のスキルの詳しい説明だったり。
さすがに全てのスキルは言えないので、叡智と創造魔法の二つだけ、どんな事ができるのか詳しく教えた。
「そうか。じゃあ今頃、僕に呪いをかけた相手は、僕の二倍苦しんでいるんだね」
「うん。だから、呪いをかけた人も分かると思う」
「そんな色んな事まで分かるなんてレティシアのスキルは凄いね」
「ありがと! でもスキルの事は誰にも内緒だよ?」
「もちろん。絶対に誰にも言わない。約束する」
グゥゥゥゥ〜
「ひゃっ!!」
私のお腹の音が盛大に鳴り響く。
そういえば、ご飯食べてる途中だった。
「あははっ、お腹が空くよね。僕も同じだよ」
「一緒にパーティー会場に戻ろっか?」
「うん、っと言いたい所だけど、さっきの奴らがいたら面倒だからね。僕は部屋に戻るよ。また会おうね、レティシア」
「分かった! ライオス今度は遊ぼうね」
「もちろんだよ。またね、レティシア」
ライオスは敢えて眼帯を再びつけて、私の前から姿を消した。
会場に戻ると、お兄様たちが私がいないと探し回っていた。
心配かけてすみません。
ライオスのことを話そうと思ったんだけれど、言える雰囲気ではなかったので、また後で話す事にした。
★★★
読んで頂きありがとうございます。
レアキャラ登場しました。ライオスが今後のお話のキーマンになるかどうか、楽しみにして頂けると嬉しいです。
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