第44話 勇者の英断
腹部を押さえながら地上に向かって落下する。
無抵抗の状態で下にあるコンクリートに叩きつけられれば無事では済まないだろう。
仮に助かったとしても重傷を負うのは目に見えている。
目を瞑って覚悟を決めた時、暖かい誰かの両手に身体を受け止められた。
手の主の方向を見て目を見開く。
以前、デストロイアの手先だった月島伊吹の姿がそこにあった。
「あんた、どうして?」
「話はあとだ。今はあいつを倒す方が先だぜ」
伊吹は梨乃の身体を地面に静かに下ろすと、独りで強大な敵に立ち向かっていく。
「裏切り者に勝ち目はない」
「どうかな。それは試してみなきゃ分からないぜ」
「ふっ。愚かな」
伊吹が発砲したライフルをデストロイアは片手で静止する。
強烈な蹴りで伊吹の身体を吹き飛ばす。
伊吹の身体が民家の塀に直撃し、下方に落下する。
「まずは、1人目」
デストロイアは横たわっている梨乃に近づくと、手から紫色の光を放出する。
最後の力を振り絞って身体を起こそうとする梨乃の前に、伊吹が躍り出た。
デストロイアの攻撃を諸に全身に喰らった伊吹は断末魔の叫びと共にその場に倒れ込む。
梨乃は流血している腹部を押さえながら、伊吹に駆け寄り彼女の身体を抱き起す。
「どうして、何で、あたしを助けたの?」
「馬鹿を言うな。あの状況なら誰でもそうする。」
伊吹は吐血しながらいつもの調子で呟くと静かに目を閉じた。
「ちっ、邪魔をしやがって。だが、今日がお前の最後であることに変わりはない。」
デストロイアは再び梨乃にゆっくり近づく。
次の瞬間、彼は背中に僅かな痛みを感じた。
ゆっくりと振り向く。
他の市で何十体のも化け物を倒してきた海翔が立っている。
「情けねぇな、梨乃。こんな奴にコテンパンにやられるなんてよ。」
彼の目配せに対して、彼女は黙って目を伏せる。
海翔は勝ち誇ったように彼女に語り掛ける。
「俺が奴に勝てば、俺がお前より強いって証拠になるよな、梨乃」
「そうね、そしたらあなたの勝ちだわ」
彼女は少し寂しそうな口調で言った。
「そういうことだからよ、お前の相手はこの俺だぜ、デストロイア!」
デストロイアは少し口角を上げて余裕の表情を浮かべる。
「スペシャルサグレットアタック!」
必殺技と裏技のカマの攻撃の合わせ技を放つ。
だが、攻撃はあっという間に跳ね返される。
体勢を崩した海翔に、彼は空中から弓を取り出し、投げつける。
弓は海翔の腕を掠った。
血しぶきが飛び散る。
「俺たちの技も、すべて使えやがるのか」
海翔が腕を押さえながら呟く。
目の前に落ちている矢は、梨乃が使っているのと同じものだ。
デストロイアは間髪を入れずに、空中から刀を取り出し、2人を切りつけようとする。
空中で金属音が響く。
刀と剣がぶつかり合う。
望月湊音もどこからかこの場に駆け付けたのだ。
「プログレスソードファイアー!」
デストロイアは湊音の攻撃も片手で振り払う。
「お前らの攻撃は、最早時間稼ぎにしかならない。」
「そんなことない。少しでも希望がある限り、私たちは負けないわ。」
恵理とほのかも遅ればせながら姿を現す。
「スペシャルマジカルツインバースト!!」
デストロイアは彼女たちの攻撃を受けても全くと言っていいほど微動だにしない。
「言っただろ。時間稼ぎにしかならないと」
「それなら、みんな力を合わせようよ」
「うん」
「スペシャルオールパワー!!」
新しい力で放つオールパワーはやはり以前より一段と強い。
デストロイアも紫色の煙を手から放って対抗する。
ほのかたちの攻撃を片手で振り払う。
「思ったより手強いな。だが、これならどうかな」
デストロイアが空中に手を翳すと、現在、未来、過去、すべての不幸が映る。
現代で戦争や紛争が続いている地域。
第二次世界大戦中の日本や世界。
戦国時代の戦。
世界各国、各時代で大量の命が奪われ、不幸が数多く生まれていたことが分かる。
「その絶望、俺が奪ってやる。」
デストロイアはそれらの不幸を自身の身体に吸収する。
勝利の雄たけびをあげる。
「世界よ、絶望に満ちろ。」
デストロイアの強大な力によって世界が作り変えられる。
この世はまるで地獄と化す。
辺り一面は紫色に染まり、マグマが多方向から噴き出す。
木や草は先端に強力な棘を持った形に姿を変える。
「この世界の人間は、最早俺の奴隷だ。お前ら、幸福の戦士を倒せ!」
デストロイアの命令によって数多くの人間が襲い掛かってくる。
現世の人間は、完全にデストロイアに洗脳されていた。
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