第16話 鉱山知識とオパール原石

 オーストラリアの地層に似ているシュミト村の坑道内で、オパール採掘についてフォミクさんが聞いてきた。たぶん今までは過去からの勘と経験から採っていたのかも知れない。


「専門家ではないから詳しくないけれど、以前にこれと似た壁からオパールを採掘していた人がいのよ。その人に何処でオパールが採掘できるか聞いたのよ」


 当時はおばあちゃんが、案内してくれた人にいろいろと質問していた。私は横で聞いていただけだけれど、実際の地層を使って説明してくれたのでよく覚えていた。


「知りたい」


 短い言葉だったけれど、やる気に満ちた意気込みを感じた。


「わたくしもユミーナ様の知識を共有したいのです」


 コガネも知りたいみたいで、秘密にする理由もなかった。


「間違っているかも知れないから、うまく採掘できたら運がよかった程度に聞いて欲しいかな。オパールの採掘には地層が重要だけれど、地層の意味は分かる?」


 フォミクさんが首を横に振ったので簡単に説明した。


 砂や泥、その時代に地面へ蓄積した層を地層と呼んでいて、海の中にあった時代や火山灰が積もった時代がわかる。


 オーストラリアのオパールは、太古の海中で蓄積した砂や泥などの層から採れるから、シェルオパールと呼ばれるオパール化した貝の化石も採れる。メキシコやエチオピアから採掘されるオパールは、火山性と呼ばれる火山活動の地層からだった。


 どの産地のオパールがよいかは好みの問題だけれど、エチオピアのオパールは水分量が多くて、水を吸収しやすい。注意しないとオパールに色がついてしまう。


 特徴はいろいろとあるけれど、オーストラリアの特徴である地層を説明して、どのあたりにオパールがありそうなのかを説明した。だから異なる地層をがんばって採掘しても、オパールの原石には出会わない。


「地層が重要、よく分かった」


「あくまでも可能性が大きいと言うだけだからね。でも採掘する場所を決める参考にはなると思う。今ある地層で見ると、この辺を中心に採掘するとよさそうかな」


 具体的な場所を示しながら、掘っていく方向も合わせて説明した。


「掘ってみる」


 フォミクさんは大きめのハンマーを手にとって、指定された地層の外周から掘り出した。直接目当ての地層を掘れば早いけれど、オパールの原石を傷つける可能性が大きくなってしまう。この辺は経験で分かっているみたい。


 大きいハンマーを小さいハンマーに変えて、フォミクさんが掘り進めていく。


「オパールだ」


 途中で手を止めたフォミクさんが、少し感情を出してつぶやいた。口数は少ないけれど、オパールが見つかるとうれしいのは一緒だった。私もすぐに近くへ移動してオパールを確認した。


「明かりを当てると光って、地上で確かめるのが楽しみね」


「ありがとう」


 他人の知識だったから、素直にお礼を言われて少し恥ずかしかった。


「実際に見つかってよかった。私も採掘したいけれど平気?」


「大丈夫だ」


「わたくしも採掘するのです」


 フォミクさんは見つけたオパールをていねいに掘り出して、私とコガネは同じ地層の別の場所で採掘を始めた。しばらくするとコガネの声が聞こえてきた。


「見つけたのです。ユミーナ様、これがオパールなのですか?」


 コガネが指さしている場所をよく確認する。


「たしかにオパールね。コガネはすぐに見つけてすごい」


「うれしいのです」


 フォミクさんは採掘に夢中だったので、喜んでいるコガネをヘルメットの上から頭を撫でてあげた。


 コガネと一緒に喜んだあとにフォミクさんを呼んで、きれいに原石を掘り出す方法を聞いた。オパールが見つかれば、そのあとの採掘は慣れているみたいで、ていねいに教えてくれた。


「やったのです。オパールなのです」


 原石をうまく取り出したコガネが、私へ原石を見せてくれる。


「コガネ、すごいね。私もコガネに負けないように見つけるね」


「わたくしも、また見つけるのです」


 採掘を始めて、私もオパールの光を掘り当てた。最初だけフォミクさんに原石の取り出し方を教わって、ふたつめ以降は慣れるために私自身の力で取り出す。少し失敗した部分もあるけれど、おおむね狙い通りに掘り当てた。


 シュミト村で採掘されるオパールは乳白色がかがやくホワイト・オパールや、透明感がきれいなクリスタル・オパールだった。オーストラリアと同じ地層なら、ブラック・オパールやボルダー・オパールの採掘も期待できるかもしれない。


 時間を忘れて採掘して、フォミクさんのかけ声で採掘は終了となった。帰りも安全に配慮しながら坑道を戻って、無事に地上へとたどり着いた。


 近くにある小屋へ向かって、カロムさんと合流した。


「オパールの原石はなかなか見つからないと思うのじゃが、どうじゃった?」


「大量だ」


 カロムさんの質問にフォミクさんが答えた。フォミクさんが採掘したオパール原石をカロムさんへ見せたので、私とコガネも同じようにオパール原石を取り出した。


「これはすごいのじゃ。普段なら、ひとつかふたつ見つかればよいのじゃが、何日分もの成果を見ているようじゃ。何が起きたのか教えて欲しいのじゃ」


 フォミクさんが私へ顔を向けると、カロムさんも私へ視線を移した。


「少しだけオパール原石が見つかりやすい地層の知識があったから、フォミクさんへ教えたのよ。実際に採掘されるかは運の要素が大きいから、フォミクさんやコガネが頑張って採掘した成果と思う」


 地層の意味や原石が見つかりやすい条件などを、カロムさんへも説明した。おどろきながら聞いていたけれど、経験と一致する条件があるのか頷く場面も多かった。


「ユミーナ様、今の内容を村民で共有してもよいじゃろうか。見返りには成果がでないといえないのじゃが、なるべくユミーナ様の期待に応えるのじゃ」


「お礼は不要よ。カロムさんの経験とも合っている感じだったから、経験が具体的な言葉として表現したと思ってもらえば大丈夫かな。もしお礼を考えているのなら、シュミト村が豊かになれば住み心地がよくなるから、シュミト村を豊かにしてね」


 当分は森の隠れ家で生活するつもりだから、シュミト村が裕福になれば私の生活も楽しくなると思う。


「森の魔法使い様と同じ考えなのじゃ。やはりユミーナ様は血筋を引いていて、やさしいお方なのじゃ」


 おばあちゃんと同じ考えと言われて、うれしかった。昔からおばあちゃんは生活ができれば満足していて、利益は追求していなかったと思う。


「やさしいと言われると照れるけれど、ありがとう。ところで私が採掘したオパール原石は、すべて買い取りたいのだけれど平気かな?」


 生活費はオパール彫刻を売る方向で考えていて、オパールの原石はコレクションとして手元に置いておきたかった。そのうち宝石単体であるルースに加工するかもしれないけれど、当分の間は原石を眺めて楽しみたい。


「大丈夫なのじゃ」


「わたくしもオパール原石を買い取りたいのです」


「もちろん平気じゃ。価格はわしとフォミク、それに雑貨屋のオルブで決定しているのじゃ。一度、オパール原石を預かるが、構わないじゃろうか」


 価格のばらつきを減らすためなのか、3人で決めるみたいね。


「何かで使用するわけでもないから、持っていっても平気よ」


「わたくしもなのです」


 私とコガネが了解すると、それぞれの個数を確認して別々の袋にしまった。シュミト村のみで運用しているためか、詳細の取り決めはなかった。日本人からするとルーズに思えるけれど、ここで暮らすには慣れていくしかなさそうね。


 鉱山での採掘が終わって、来た道を戻ってカロムさんの家へ向かった。


「ユミーナ様、ジグソーパズルを習いたい村民が決まったのじゃが、明日にでも森の隠れ家へ案内しても平気じゃろうか」


 歩きながらカロムさんが聞いてきた。


「大丈夫よ。ちなみに何人くらい予定しているの?」


 人数制限はないけれど、あまりにも多いと場所を含めて準備が必要になる。


「3人を予定しているのじゃ」


「その人数なら大丈夫よ」


「助かるのじゃ。明日の朝食後に出発できるように伝えておくのじゃ」


 ジグソーパズルを教える日程が決まって、雑談しているうちにカロムさんの家へ到着した。ロゼリアさんに私が採掘したオパール原石を見せると喜んでくれて、採掘量が増えたとカロムさんが話すとうれしそうな笑顔を見せた。


 カロムさんとフォミクさんはオルブさんの家へ行くようなので、私とコガネはカロムさんの家の前で別れた。私とコガネは食堂で遅い昼食をとってから、森の隠れ家へと戻っていった。

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