第2話 夜が明けるまで
月が沈みかける頃までその遊びは続いていた。
「やった!俺追いついたぞ!」
「朔夜くんもやるじゃん!って、もう夜が明けちゃいそう」
「ほんとだな。久しぶりに夢中になってた」
二人の点数は同点になっていた。花澄も朔夜も、楽しそうな笑顔だった。
「楽しかったぁ。最後に遊べてよかった。」
「俺も楽しかったよ。…ってこれも、最後なんだね…」
「うん…」
花澄は下を向いた。
「ねぇ…もう少しだけ、付き合ってくれない?」
「いいよ」
朔夜が答えると、花澄は話を始めた。
「ありがとう。夜が明けちゃうまでの間だけね。」
それは少し意味深な言い方だった。
「朝になっても俺はいいけどね」
朔夜は笑った。
「私はダメなの。…ただもう少しだけ、お喋りしていたくて。」
「付き合うよ。きっと何かの縁なんだし。」
今度は花澄が笑った。
「ねぇ朔夜くん、運命って何だと思う?恋愛とかそういう意味の方じゃなくて、人生とかの意味で。」
「唐突だなぁ。」
「ごめん。ちょっと聞いてみたくて。」
「運命かぁ…。前世に何をしたかとかじゃないかなぁ?どうしようもないことって、よく運命がそうさせたとか言うじゃん。それってもしかしたら、前世でやったことへの報いとか代償とかだったりするんじゃないかな。だって自分が何かしたからってわけでもないんだし。」
「…前世…か…。なるほどね。どうにもならない、対策もできないような不都合は、前世の人が原因ってこと…?」
「そういうこと。話下手なのにわかってくれてありがとう。」
朔夜は苦笑いした。
「そっか…。なら最後くらい、― 」
「え??何て?」
朔夜は花澄がつぶやいた最後の一言が衝撃的だった気がして、聞き返したかった。しかし、花澄は何も言わずに微笑んだだけだった。
「なんでもない!」
東の空が朱く染まってきた。
「そろそろ夜が明けちゃう…そろそろ、お別れ。」
「俺はまだいいんだけどね…」
「ありがとう。でも、これで…」
花澄はよそ見をした。
「楽しかったよ、朔夜くん。本当にありがとう。朔夜くんのこと、ずっと覚えてるね。」
「俺の方こそ、ありがとう。花澄さん。もしまた会えることがあったらまた遊ぼうね。」
朔夜は、花澄の目元が少し光ったような気がした。近寄ろうとしたが、花澄はそれを察知してなのか、離れていった。
強めの風が、桜の花びらを散らした。
桜吹雪のなか、花澄は歩いて行ってしまう。こんなに素っ気ないのかと朔夜は少しがっかりして、帰路についた。
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