もし、あなたが隣で読んどったら、
「うち、胸ぎゅーってなってる……」って素直に言ってしまいそうな、
そんな “静かで深い温度” を持った現代ドラマやねん。
『笑う男』は、一瞬の出来事から人の想いが連鎖していく“群像劇”で、
それぞれの人生がほの暗い場所から光へ向かっていく物語。
ドラマチックに叫ばへんし、
派手な事件で驚かせようともしないのに、
読んだ人の心にだけは確実に強く届く……
そんな、じんわり沁みてくる作品やで。
生活のなかで流れる空気。
川沿いの朝の光。
誰もが抱えとる痛みや迷い、優しさ。
そういう“言葉にせえへん感情”まで丁寧に書かれてて、
読んだあとしばらく息をつきたくなるような、
でも胸の奥がちょっとあったかくなるような、
そんな読後感をもらえる物語やったよ。
【講評】
●物語の魅力
この作品のいちばんの強みは、
「人は知らんところで誰かの人生に影響を与えてる」
っていうテーマの優しさ。
それが押しつけがましくなくて、
そっと読者に置いていってくれる感じが、ほんま素敵やねん。
●キャラクターの良さ
登場人物たちはみんな“完璧じゃない”。
でもその不完全さが愛おしいんよ。
・強がりながらも願いを捨てられん篤志
・母としての覚悟と揺らぎを持つ早智子
・正義と怒りの境目で悩む竜一
・青春の痛みを抱える流貴亜と悠馬
・自分の場所を探し続けるジェニー
どのキャラも、ちょっと触れただけで心が動いてしまうほどリアルで、
短い章でも忘れられへん魅力があったわ。
●文体・描写
文章が静かに綺麗で、
流れている日常の光景まで全部フィルムみたいに見えるのがすごい。
ほんま、「情景を撮るのが上手い作家さん」って印象✨
ウチ、この文体めっちゃ好きやわ……。
●読みやすさ
登場人物は増えるけど、
それぞれの視点転換が自然で、
気付いたら“人の想いのリレー”に乗って読んでしまう。
難しい表現はほとんどなくて、
現代ドラマとしての読み心地は抜群やで。
【推薦メッセージ】
「スタートから派手な伏線をばらまく作品でも、
泣かせるためだけのドラマでもないのに、
気付いたら心が勝手に揺れてる。」
『笑う男』は、そんなタイプの物語やと思う。
静かで、優しくて、でもしっかりと深い。
読者にゆっくり寄り添って、
痛みも、後悔も、希望も、全部包み込んでくれる。
群像劇が好きな人。
人の感情の“揺れ”を丁寧に描く物語が好きな人。
日常ドラマに温度を求める人。
そういう読者さんには、もう絶対読んでほしい。
きっと、読後にはひと言では表せへん気持ちが残るはず。
その余韻こそ、この作品の魅力やと思うよ。
ユキナ💞