生とは

 では、生とは何なのか。

 ある人はこう言うだろう。


「生とは誰かを愛することだ」と。


 ある人はこう言うだろう。


「生とは苦しむことだ」と。


 どちらも正しい。

 だが、どちらも根本を捉えていない。

 生とはである。


 どんな生きる意味だったとしても、深く、深く、奥底まで突き詰めた時、それは欲となる。


 死するものは無となり、欲を持つことはない。

 生きているものだけが欲を持つのだ。

 考えてみて欲しい。


 生物は必ず欲を持っているはずだ。

 動物は食を求め

 遊びを求め

 睡眠を求める


 植物は

 水を求め

 栄養を求め

 光を求める


 人間は

 金を求め

 命を求め

 幸せを求める

 自殺した人でさえ、死というものを求めていた。


 生きているもので、欲を持たないものはない。

 だから生とは、生きることとは、欲であると私は言おう。


「生とはそんな単純じゃない」


 そう言う人もいるだろう。

 私はこう言う。


「生はこんなにも単純なのだ」


 我々は生きることを難しく捉えすぎなのだ。

 生が複雑だと思うからこそ、「生きることは大変だ」などと思うのだ。


 生を一つづつ紐解き、根底を捉えた瞬間、生は単純となる。

 そして、世界もまた単純であることに気づくだろう。

 世界も欲でできているのである。


 生とは欲である。

 死ぬまで無くならない欲である。

 生物は死ぬまで何かを求め続ける。

 それこそが、己を保つ唯一の方法だからだ。


 欲がなければ何もできず、動くことすらできない。

 自我すらも消え、物としても不完全となる。

 欲なき物が迎えるのは永遠の消滅である。

 欲があるからこそ我々は存在できるのである。


 世界はシンプルである。

 生ある物で形作られているから。

 生物は生きている。


 そして生はシンプルである。

 欲でできているから。


 

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