第64話

閑話  カコマール



危なかった。


亀は重たい身体を地に降ろし、

息を吐いた。


「ナンダッタンダマーール」


背中には、美しく煌めく楕円形の甲羅。


「アイツハヤバカッタマァーール」


亀はただ、何万年も──

あの沼地で寝ていただけだった。


上から定期的に落ちてくる水が跳ね、

少しずつ、少しずつ固まり、

永い永い時を経て──

三角錐の甲羅の殻を作り上げた。


「アソコハイゴコチヨカッタァマァール」


だが、あんな化け物がそばにいるのでは

安眠できない。


亀は背中のゴミを投げ捨て、

遠くへ走り去った。


──遥か東。

砂漠に囲まれた地域。

人間の王都がある地方へ。

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