第63話

そういえば、また一銭も持ってなかったことに気がついたおっさんは、

以前一日だけバイトした、木工所に来ていた。

相変わらず人力で丸太を製材してるのか…とおもいきや、

魔石の謎パワーを利用し、バンドソーや自動鉋っぽい物を利用し、いい感じに営業していた。


おっさんは以前雇用してもらった、同年代のむさいオヤジに、

「バイトできるか?数日でいいんだが」

と話しかけた。


「ん…?雇用の希望かい……って、、」


オヤジは俺の顔を見て飛び上がった。


「だ、、、、大英雄さまあぁぁ…じゃねえか!」


なんだそりゃ?と苦笑し、事情を説明する。

要するに路銀がまったく無いからちょこっと働かせてくれと。


すると材木屋は、

「あんたみたいな恩人を、人夫として使えるわけねぇだろ!」


と不採用通知を叩きつけてきやがった。


金がねぇんだからなにがしか稼がなきゃならないってのに…


ふと思い立って、

「じゃぁこの材木買い取って貰うことはできるか?」


と樹海産の、ログハウス建築の時に多めに製材して余っていた、柱、梁、板材などをトラック一台分くらい、

ドドっと出した。


それをみたオヤジは、また驚いたが、諦めたように…

「ず…ずいぶん重そうなまってそうな材料だな。こりゃどこで…」


などと言いながら、ペタペタ触ったり、木槌でコンコン叩いたり、珍しそうに眺めているので、

俺は、長年愛用の仕上げ鉋を取り出し、


すぅわぁぁぁーーーーーっと


削って見せてやった。

A4紙くらいの幅の鉋屑がふわぁっと舞い、

向こう側の透ける鉋屑と、仕上がった柱をギョロギョロと見比べ…


「なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁ!」


とひっくり返った。


ぬらっとした艶の出た、吸い込まれるような漆黒の柱。

「こうゆうのをな、家の大事な場所…神様とか祀る部屋に立てたりすると良いかもしれないぜ」

異世界の文化をまったく知らない俺は、適当なことをいって木材を売りつけた。


まぁまぁの金になった。


その後ギルドに寄って、街を出てゆく旨を伝えると…

悪趣味なギルドカードを押し付けられた。

人の住む地域を移動するならどうしても持っていて欲しい。と

ボインの受付嬢に頼まれたので、仕方なく財布にしまった。


すると階段を降りてくる海軍大佐ギルドマスター

おもむろに金貨の詰まった革袋を押し付けてくる。

「なんだいこりゃぁ?」

と尋ねるが、

この街の発展は俺のせいだとか、

行き場のない金をどうすればいいか分からないとか、

なんじゃかんじゃ騒いでた。


まぁ旅をするなら金は必要だろうし、貰っておく。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


人の住む街々を移動するのに、自動車では目立ってしまうかもしれない。

無駄なトラブルは起こさない方がいい。

と、おっさんは思う。

ギルドの裏手の広場を借りて乗り物を作ってゆく。


素材は自動車ハイエース

それを室内の床面くらいの高さで…

グラインダーで切ってしまう。

グルリと一周だ。

タイヤと床しかない変な物体が残る。

そこから木材を使い、偽装しつつ壁や屋根を作り、馬車が完成した。


タイヤもこの世界では異様だろうと思い、見えないようにはかまのような板を張り、中世の馬車っぽい車輪を木であつらえる


余計な重量になるエンジンなどもみな外したので、押せば前に進む。

サスペンションもしっかり効いた、

レトロで趣のある馬車が完成した。


馬…は売ってないそうだが、イグアナのデカいようなやつを買った。

なんでも食うそうだ。

食事をケチると、御者が食いちぎられるそうなので、注意が必要だ。


旅の間の魚介類も買い込み冷凍したし、この街でやることもなくなった。



おっさんは娘達を馬車に乗せ、出発する。

目指すは王都。


天気は良好。

いざ発信!


ケツから虹色の屁を撒きつつ馬車は進む…

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