第3話 蒼琳が学園に来ることになったワケ

⚪︎学園の屋上で… (神視点)

 ある日の昼休み、学園の高等教室棟の屋上では、1人の男子生徒が春風を感じて黄昏ていた。

 彼…芹雅蒼琳は考え事をしていた。


⚪︎芹雅蒼琳の心のうち(蒼琳視点)

 俺は芹雅蒼琳。武庄ヶ原学園に通うことになった高校1年生だ。

 ちなみにこれは偽名だ。俺の本名は雅蒼(みやびあお)。俺の父、雅和麻(みやびかずま)をボスとする犯罪組織『琳牙』でコードネーム『牙』として裏社会で活動している。俺の役割は基本、組織に不利な人物を始末することだ。

 『琳牙』は先々代から、同じく犯罪組織である『御聖』と激しい抗争が起こっており、殺し屋として最前線に立つ俺は『御聖』の跡取りの『聖』と終わらぬ戦いを続けてきた。『アイツ』は常に顔を隠していた。だが声と髪から女だとわかっていて、決着が見送られるごとに悔しくて仕方がなかった。女の『アイツ』をすぐ殺せないことが。

 ちなみに俺が初めて人を殺したのは7歳の時。5歳のときに母を病気で亡くし、厳格な親父によって男手一つで殺し屋として育てられた。厳しかったが、1人の父親として親父は親父なりに俺を愛してくれていたと思う。

 今ではアイツと並び(たくもないが)『化け物』と呼ばれ、裏社会で恐れられる存在となっている。

 …で、この俺がなぜ、学生としてこの学園で高校生活を送らなければならなくなったのか。それは1週間前に遡る。


1週間前〜琳牙本拠地・雅邸〜

 緊急に親父に呼ばれた俺は、親父の部屋で困惑していた。

「それは一体どういうことなのですか。父上。この俺に『高校生』として普通の学生生活を送れ…とは?」

 親父は口を開く。

「言葉通りだ、我が息子よ。お前は明後日から私立高校『武庄ヶ原学園』に転入しろ。この学校は我が『琳牙』が裏から支援している。理事長、校長とも連絡は取っているから心配するな。お前にはここで『青春』を送ってもらう。」

 うわぁ、組織の力をフル活用してんなこの人。だが、俺には1つだけ気掛かりなことがあった。

「父上、あなたには俺に『青春』を送らせる以外に何か『目的』があるのでしょう?理由もなくあなたが俺にただ『青春』を送らせるなど考えられない。」

 と聞くと

「さすがは我が息子だ。そうだ。私がお前に高校生活を送らせる理由は…。っとその前に、お前に質問しよう。私が今からお前に命令するとする。その命令をお前は聞くか?」

 どういうことだ?何かはぐらかされたぞ。ていうかあんたはボスなんだから従う以外ないだろ。

「もちろん聞きますよ。父上。」

 親父は満足げな顔で頷く。

「よし。ではお前に命令するぞ。」

「高校生活を送りながら、将来お前の婚約者となる女を見つけろ。組織の繁栄のためにな。条件として、同い年、病弱でないこと。期限は1年だ。これは命令だから、お前がどう足掻こうが拒否権はない。」

 は?婚約者?はあああぁぁぁ⁈

 いやいやいやいや!分かるけどさ、組織の繁栄のためって分かるけど!それなら組織の力とか使って『お見合い』みたいなのしないか?コネ入学のために組織の力を使ってどうすんだ!

 はぁ…でも…命令だし仕方ない。

「分かりました。父上。必ずや未来の婚約者、見つけてまいります。」

「それでいい。それと今日からお前の名前は芹雅蒼琳だ。くれぐれも正体がバレるようなヘマをするなよ。」

「分かりました父上。」

 

 そして…現在へ至る。

 婚約者…か…。親父は親父なりに、俺に青春をさせたかったのかもしれない。

「まずは、目星をつけておかなければ。あの女…御正門の気配が妙だな…。どこか、アイツに似ている…。少し警戒するか。」

 そう呟き、俺はその場を後にした。

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