26.三人目だけど、女の子は未知数!


朝食を終え、軽く身支度をしてスマホやテレビをのんびり見ていると、また部屋のドアがノックされ、今度は助産師さんが現れた。


そして、その助産師さんと一緒に来たのは、透明なコットに入った──生後一日目のふにゃふにゃな赤ちゃん!


ふぁあああ! 小さいなぁ! かわいい~!


白い小さなコンビ肌着を着せられているけれど、赤ちゃんはさらに小さくて、服がぶかぶか。


コットの下や周辺には、おむつやおしりふき、記録用のノートなどがあり、ポットの側に置かれたミルクと一緒に使い方を説明された。


新生児の排便はかなり多い。

さっそくおむつにはブルーラインが出ていて、初めてのおむつ替えをすることに。


そして──


「これ、どうやって拭けばいいんですか?」


「え、よつ葉さん、三人目だよね!?」


いや、そうなんだけどさ……今回は初の女の子。


男の子なら、てきとーでいい。オシッコを飛ばされる危険性だけ注意して、“モノ”を持ち上げて、ぺっぺっぺーと拭けば済む。


でも、女の子は……あまりゴシゴシしないように。でも、割れ目に付いた汚れはちゃんと取らなきゃいけない。


しかも、新生児のウンチって佃煮みたいに黒くてべっとりしてるから、すごくこびり付く。


……女の子の方が、難易度高すぎない?


そして、初の授乳。いや、正確に言えば、出産直後に初乳は飲ませたけど、あれは添い乳状態で舐める程度。ちゃんと飲ませるのはこれが初めて。


尾てい骨の痛みに耐えながらベッドに座り、脚の上に授乳クッションを乗せて、その上に赤ちゃんを寝かせる。


顔の前に胸を出すと、赤ちゃんが口をぱくぱくさせてくれた。


よし、飲め! と、口の中に胸を突っ込む。


ちゅっちゅっちゅぅぅ……


えっと……吸ってる? なんか、くすぐったい感じだけで、ちゃんと吸われてる感がないんですが?


そして、そのくすぐったい感じもすぐ終わる。すぐに力尽きて寝ちゃう。


おーい! ちゃんと飲んでくれー!


軽くぺちぺち叩いたり、そっと揺すったりしても、すん……っとした顔。


ダメだ。もう母乳は諦めよう。


そして、部屋の外にあるベビースケール(体重計)で計ってみたけど、当然変わらず。


(うん。むしろ減ってなくてよかった!)


と思いながら部屋へ戻り、さっき教えてもらった通りに粉ミルクを調乳して飲ませる。


ちゅっちゅ……ぅぅ……


「おーい、起きてくれ〜」


飲みやすいはずの哺乳瓶でも、すぐに力尽きる。


ミルクを飲ませる → ちょろっと飲んで寝る → 起こす……を何度か繰り返して、なんとか終了。


今日はまだ10mlだからいいけど……明日は倍になる。毎日10mlずつ増えていく。


……この子、大丈夫かな?


ちょっと不安を抱きつつ、どうにかミルク完了。

よし、この哺乳瓶を返却に行かねば。


部屋を出て、ガラガラガラ〜とコットを押しながら哺乳瓶置き場へ向かう。

そこで、ある張り紙に気づいた。


ああああ! こ、これは……一週間の献立!!


昨日、お断りしたお昼ご飯は……バターチキンカレー!? 副菜の海老と野菜のソテーも美味しそう!


やっぱり食べればよかった!! ……いやいや、あの痛みの中で食欲なんてなかったでしょ?

でも、途中からとはいえ激痛の中で夕飯は完食したんだから……と、今さら後悔してもどうしようもないことを考えながら病室へ戻る。


そして、ちょうど昼食が運ばれてきた。


本日のランチは──


発芽玄米ご飯、あおさ味噌汁、鶏もも肉の竜田おろしソース、サツマイモの肉じゃが風、和風ごまサラダ、フルーツ。


うん、健康的で女子ウケよさそうなご飯。

しかもフルーツはおしゃれなガラスの器に2種類──パイナップルとりんごがひと口大に切ってある。


A総合病院だったら、きっと学校給食みたいにビニールに入った一切れだけ出てくると思うよ?


なんて思いながら、生後一日の新生児である娘はすやすや大人しく寝ていて、美味しいご飯をゆっくりいただくことができた。


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