25.フレンチトーストと尾てい骨と、第一子産後の記憶


「朝食、お持ちいたしました」


軽いノックのあと、入ってきた女性がテーブルに置いてくれた朝食。


ふわぁぁぁ! 美味しそう!


目の前に置かれた朝食に見ただけで感動した。


メニューは……


フレンチトースト、ミネストローネ、レタスとベーコンのサラダ、ヨーグルト、りんごジュース


品数多い!

フレンチトーストもどっかのカフェのように、ただパンを焼いただけじゃなく、上から粉砂糖がかけられ、ミントが添えられていた。


配膳係の方を見送り、テーブルの前のソファへ。


座ろうとしたが、くっそ痛いっ! 尾てい骨が痛すぎる!


産院定番のドーナツクッションを使ってみるが、痛いのは股ではなく尾てい骨。


ないよりはマシな気がするけど、クッションを使ったところで、とても痛い!


素敵な朝食。せっかくの落ち着いて食べれるはずの時間なのに……まったく落ち着くことなく、途中で立ち上がったり、痛みがマシなポジションを探りながら朝食を食べ終えた。


食べ終え、即お尻のためにベッドに倒れた。


……おしり、痛いよー。

あと、胸が痛くなってきたような……うん、張ってきたな。


あ、薬飲まなきゃ。


今朝、渡された薬。これは子宮収縮のための薬。


出産したあと、悪露おろという子宮から排出される血液や分泌物がでる。それをしっかり出さないと……と私は第一子出産時のことを思い出した。



──第一子出産時。

初めての出産をわけも分からぬまま終えた。


(……やっと、終わった……)


赤ちゃんの産声が聞けて感動した。メガネを見つけてもらい、やっと顔を確認して「君がずっとお腹に居たのか!」と思った。


……正直、第一子のときは産んだすぐあとは、「かわいい~!」って感情は薄かった。


そして、赤ちゃんは産んだが正確にはまだ終わりではない。後産……出産後、胎盤が子宮から排出される過程があるのだ。


私の脚の間で、なにやら作業をする助産師さん。


「ん? あれ、なんか……」


私に話しかけてるわけではないので、何を言ってるかよく分からないが、なんかありそう。


横にいる他の助産師さんと会話をしながら、処置を続けた。


そして、「これ、先生に……あ、出た」


そんなような会話が聞こえたと思ったら、なにやらずるっと何かが出る気配……あ、これ胎盤が出たのか。なんて思っていると、先生が現れ「大丈夫?」「はい」なんて会話をしていた。


そんな些細なことがあった。


そして、第一子との退院日。退院日には赤ちゃんと母親。両方が退院しても問題ないか診察がある。

赤ちゃんは連れていかれ、私は処置室にて産婦人科用の脚が開く例の椅子の前に立つ。


だってまだ産後五日。その傷はまだまだ癒えておらず、股はもちろん私は尾てい骨が痛い。この椅子……股を見せるために、傾くでしょ?

ちょっと裂けて塗った患部も気になるが、尾てい骨も心配だ。

座りたくない。でも座らぬわけにはいかぬ。


恐る恐る椅子に座った。


痛いぃぃぃぃ! ただ座っただけで痛い!


──そして傾く椅子。


ぎゃああああ! 体重が尾てい骨にかかる。痛い!


と、どうにか口には出さなかったが、心の中は大パニック。早く終わって!


「では診察します」


うぎゃああああ! 今度は股間が痛い!


そりゃそうだ。赤子産んで裂けて傷になったところに指だか機械だか入れるんだから。


でも……耐えるしかない!


……はぁ、はぁ。やっと終わった?


「あー、これ。残っちゃってるわ」


──え? 何が?


「よつ葉さん、子宮の中にね。まだ胎盤が残っちゃってるの。だからね、出さないと」


「???」


だからなんなの? なんか不味そうな雰囲気は伝わるけど、何すんの? と思ってると先生の言葉は続いた。


「だから──今から掻き出すわ」


え?


「ちょっと痛いと思うけど、我慢してね。今だとまだ子宮口も開いてて楽だと思うから」


「は、はい」


なに、なんなの? 掻き出す? 痛いの?

え、怖い怖い怖い……


と思い、下……下半身を見るが、私の腰の辺りにはカーテンが垂れ下がっているので先生の顔ややってることは見えない。そして──


ぎゃああああ! 痛い、痛いよぉぉ!


なにやら子宮をゴリゴリされた。


奥も痛いし、裂けた入口も痛い! そして、力が入って尾てい骨も痛い!


「──これで、大丈夫でしょう」


や、やっと終わった。とんでもない目にあったよ……。


泣きたい気持ち、というかあまりの痛さに本当に涙が出たよ!


赤ちゃん何事もないといいな。一緒に退院できるよね? なんて思って少しドキドキしてたけど、まさか私の方が問題あるなんて予想外だったよ!!


と、まあとんでもない痛い目にあったが、無事こうして処置をされ、本来退院日の今日まで飲めば良かった子宮収縮の薬を追加でもらい、無事私は第一子と共にA総合病院を退院したのであった──。



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