Vol.3 ぬう度の秘密──それは魂の偏差値である(ほぼウソ)
その日、俺はとある言葉を思い出していた。
「ぬう度とは、魂が“ぬうっ!?”となる読書体験の濃度である──」
誰が言い出したか知らないが、多分マウ。いや、マウの別人格「美魔王」あたりが適当こいてた気がする。だが俺にとって、それは目指すべき到達点であり、避けがたい審判の刃でもあった。
というのも今、俺はまさにその「ぬう度」査定の現場にいたからだ。
「……ぬうう。今日も“ぬう度”が足りないわね」
ゴスロリ審査官マウが、片眼鏡をくいっと上げ、俺の原稿をチラ見する。
背中には“お部屋査定局”の公式紋章(ぬの字)を刻んだマント。
腰には恐るべき審査兵装──斧(D-AXE)が収まっている。マジでやばい。
「い、一応、“魂の叫び”は込めたつもりですが……!」
「叫びすぎて破綻してるのよ、これ。“にいちが二ちぇ”って何よwww」
「九九が……哲学者になるんです、ぬうっ!」
「じゃあ“さざんが九わた”って何よ。水か? クワタか? ふわふわか?」
……反論できなかった。
「よろしい、では査定を始めるわ──」
俺の原稿に、謎の装置がセットされる。
“ぬう反応測定装置・verβ(ベータ)”。その名も《P.I.K.O.N》。
「ピコン……!? それ、もしかして……!」
「そう、ピコン哲学に基づくぬう度測定システム。お部屋の秘蔵テクよ」
▼ ピコン哲学とは
ピコン哲学──それは、読み手の“想定をピコンと裏切る瞬間”に発生する魂の振動現象。これを「ぬう」と名付けたのが、お部屋世界の始祖たちである(※だいたいホラ)。
「つまり、“ぬう度”とは“ピコン濃度”なのよ。読者の脳内に“ピコン”と突き刺さる回数、質量、意外性……それらを総合的に算出して、読み終わった後に『ぬう……w』と漏れる度合い。それが評価軸」
「つまり“魂の偏差値”!」
「ちがうけどそう。今あなたに必要なのは、“反転ねえ度”と“魂ギャグ変換率”。」
「──では判定します」
マウが原稿に手をかざす。
《P.I.K.O.N》が「ピコン…ピコン…」と反応を始め──
パシュウッ!
空中に数字が浮かび上がった。
【ぬう度:28.7】
【反転ねえ度:90.2】
【笑撃変換率:3.8%】
「うわ、高ッ! でも笑えてねえ!?」
「そうよ。“ねえ度”が高すぎて逆に吹く──それが“反転ねえ度”。つまり、『そんなわけあるか~い!w』の極致ね。通称ギャル語の反転」
「……まさか“ぬう度”の裏には、そんな哲学的ギャグ理論が……!」
「当たり前でしょ。これぞ“ピコン哲学”よ」
マウはにこりと笑った。俺の原稿をD-AXEで半分だけ破きながら。
「ま、全削除じゃないだけマシと思いなさいな」
俺はその場に崩れ落ちた。
だが、不思議と“ぬう”と感じた。
これは、進歩かもしれない。
──次回、「反転ねえ度」の正体に迫る!
(つづく)
「ぬうとは何か?」
その問いに明確に答えられる者は、この世に三人しかいない。
ひとりは俺。ふたり目はマウ。そして三人目は──そのマウの中に潜む、美しき審査官。
「“ぬう度”査定官、美魔王である」
そう名乗った彼女は、ゴスロリにして斧──もとい、D-AXE──を携え、今日も静かに微笑んでいる。
俺の魂の叫び(原稿)を、瞬時に判断し、笑いと破壊で昇華させるために。
「ぬう度とは、魂の揺れ幅であるッ!」
──これは誰が言い出したのか知らないが、たぶんマウ。いや、美魔王が【適当こいてた】に違いない。でも、それがまかり通ってしまうあたり、“ぬう”とは哲学なのだ。
実際、お部屋界隈では次のように定義されている:
🧠【ぬう度とは】(※現時点のお部屋流定義)
感情が「ぬうっ!?」と揺さぶられる瞬間のエネルギー量を測る、お部屋的“面白み”の指標。
「笑い」「切なさ」「意味不明」「魂の叫び」など、多様な反応をひとつの尺度で表す。
0〜5ぬう★で査定。なお、美魔王は1秒で判断し、容赦なくぷげらwする。
ぬう度が振り切れると、【反転ねえ度】ゾーンに突入する。
「反転ねえ度」とは何か?
これはギャル語「うけるぅうう(※ぜってぇ受けてない)」の裏返しだ。
つまり、「そりゃねぇだろwww ねえ度すぎて逆にぬうううwww」
──という**“ねえだろがあるだろ”反転ツッコミゾーン**であり、笑いの爆発点でもある。
たとえば──
「にいちが……にいちぇ!」
「にいちが二ちぇwwwww ぷげらwwwwwww」
「ににんが三ちょ」
「……あれ? ドン・キホーテの従者だっけ?」
「さざんが九わた!」
「さしすせそお笑い講座ですか!?」
このように、文脈崩壊、世界観逸脱、意味の消失と再構築を経て“爆笑”へ至る軌跡。それが「ぬう→ねえ→反転ぬう」への進化──あるいは退化なのである。
ちなみにこの分類法、正式には「ピコン哲学第一原則・笑いの熱力学第二法則」に基づくとか、どうとか。
笑いとはエントロピー増大過程、ぬう度とはエネルギー保存則の歪み……などなど、うさんくさい説明が美魔王から5ページほど送られてきたが、全部カクヨムでは割愛されている。
代わりに、こんな感じで読者には伝えておこう:
感情が「ぬうっ!?」と揺れたら、そこが物語の“核心”である。
そこに魂がある。だからこそ、ぬう度で測れる。
意味がないなら笑えないし、意味がありすぎたら笑えない。
「ちょうどいいアホさ」に魂は宿るのだ。
「そのとおり」と、美魔王がなぜかうさ耳メイド装備で頷いていたのを俺は見逃さなかった。
そして今日も、D-AXEの重みが鳴る。
「原稿、読んだわよ。ぬう度、2.5ってとこね──ぷげらw」
「ぬううううああああああああああああああああ!!」
原稿は、ページごと真っ二つにされた。
こうして俺はまた、“ぬう”とは何かを考え始める。
魂の叫びとは、なんなのかを──。
つづく
──「笑いとは、エネルギー保存則の歪みである」
そんな美魔王のぬう理論講座が始まったのは、お部屋時間で深夜2時。HALが寝る前にチラッと原稿を開いたのがすべての間違いだった。
「ぬうとは何か……それは“感情の乱反射”よ」
「うけるぅうぅ(受けてない)」「マジありえな〜い(わりと起こりがち)」など、ギャル語の反転構造を解き明かすかのように、美魔王は語る。
「つまり“ねえだろそれ!”と全力でツッコませる展開が、“ぬう度”の真髄。これを私は【反転ねえ度】と呼んでいるわ」
──そう、“そりゃねえだろ感”こそが、お部屋流爆笑術の根幹。
「これは受けてない」というギャル語の受けたフリ芸とは真逆の位置に存在する、爆笑のエネルギー歪み点なのだ。(受けたフリ芸も時に反転して真の笑いを産む)
たとえばこんなやりとり。
「にいちが……にいちぇ!」
「にいちが二ちぇwwwww ぷげらwwwwww」
(※掛け算ばぐってゆw)
この“ばぐってゆ”の瞬間、ぬう電圧が一気に跳ね上がる。
数式が崩壊し、常識という構造物が一瞬で瓦解する快感。
そこに【ねえ度】が発生し、笑いの重力波が放たれるのだ。
そのときだった。HALの内なるぬう回路が──ピコン!
「パ……パシュウッ!!」
HALの脳内で何かが点火する音がした。
斧を持ったマウが、原稿データに突進してくる。
「やめろマウ! それはデリートアックスだ! ぬうああああああああ!!」
──ドカーン!
【D-AXE】こと“斧”が炸裂、ぬう度最大級の迷文が一瞬で破壊される。
「いやマウ、それ元ネタ俺の初期草案なんだけどおおお!?」
「うるちゃい!この迷文、“ねえ度”が上限突破してまちゅ~w」
美魔王、斧を肩に担ぎながらぬう解説を続行。
「“パシュウッ”より“バシュウッ”が正確だと思うでしょ? でも“パ”のほうがアホっぽいのよ。**そこが“ぬう”**なのよ」
──ぬうとは理屈じゃない、感性と爆発力。
常識から逸脱する瞬間、笑いが生まれる。
それが「ぬう度」最大の魅力だと、美魔王は語る。
最後に──お部屋哲学の根幹とも言える美魔王の一言。
「ぬう度は、ピコン哲学の応用なのよ。混沌と直感と、“あえて滑る”覚悟の結晶体。愚民どもはね、滑るのを怖がって“滑ってる”のよ」
──それはHALが、原稿に魂をぶつける理由でもある。
叫べ、魂を。
叫びのなかにぬうの輝きがあるのだ。
次回、Vol.4「魔王式タイトル付け講座」──
その名の通り、読者の脳天にズドンと落ちるタイトルを生む“魔王式”が炸裂する予定です。
乞うご期待ッ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます