第五章:悲独の少女編
40話:道端
「・・・何処だろここ」
私は一人道に迷っていた。
あの日彼と別れアデラを捜しに出たは良いものの目的地も決めてないく、かといって近くに何があるかも知っている訳でもないので案の定こうなってしまったのだ。
まぁ食料は近場の林とかで狩りをすれば良いけど問題は寝泊まりだよね・・・
小さくため息をつく。
一先ず今は歩くしか出来ないんだし止まらないでおこう。
「それにしても、アデラは変な方向にばかり思い切りが良いんだから」
歩く内にシオンから聞いた話を思いだし文句が出てしまった。
だってそうじゃない?私の事を想ってくれたのは嬉しいけど、それが私の幸せだって勝手に決めちゃってさ!一言くらいくれても良いんじゃないか・・・と言う様な本音が胸の奥でふつふつと煮え
「あ"ーーっ考えても意味ないし。見つけて文句言う・・・・うん!それだけ!!」
何とか気持ちを切り替えまた歩を進める。
この何処にもぶつけようのない感情を一旦押し殺し先ずは目先の事を考えるようにした。
とぼとぼと孤独で静かな時間が続く。
二人が居ないとここまで何もなくなるとは正直思ってもいなかったな。
ゆらゆらと動く人影が目に映る。
暑い陽射しの中休憩も殆どしないで歩いて来たこともあり、熱中症にでもなったかと自分を疑う。
しかしそれは思い違いであることを知ることとなる。
その影は真っ直ぐ倒れ見えなくなってしまったのだ。
それを見て本物の人だと判断した私は倒れた影に近付く。
「ねぇ大丈夫!?」
黒い影の正体である一人のつり目少女の肩を叩き様子を見ると小さく声が聞こえる。
その声は水を求めており私は手に持っていた水筒から一杯与える。
けほっけほっ、と咳ごむ少女は暫くした後身体を起き上がらせた。
「ありがとう助かったよ。それじゃあね」
そう一礼すると何事もなかったかの様にまた歩を進めようとする。
私は思わず彼女を呼び止める。
そうするとその子は私を上から下までじっくりと見渡す。
納得した様子で頷くと口を開く。
「あぁ。何か礼をしろって言うんならこの先に小さな街があるからそこの宿屋に泊まって」
そう一言告げるとそそくさと私が歩いて来た方向に行ってしまった。
何だか嵐のような子だったな・・・・・でもこの情報は
素直に彼女の言う通りに動くとしよう。
あの子が指差した方向へと真っ直ぐ進み暫くすると、少女の言った通り一つの街が見えてくる。
「・・・おや、ここに他所の人が来るとは珍しい」
街に入って辺りを見渡していると杖を着く一人の老婆が声を掛けて来た。
見た感じ杖を着くような歳にも見えないけど…腰でもやっちゃったのかな?
アルシアは口に出すようなことでもない事を考える。
「えっと、私は旅をしているアルシアです」
「お嬢ちゃん一人旅かい?」
「友達と一緒だったんですけど・・・迷子になっちゃって・・・・・」
老婆はあらあらと反応を示し、私に同情してくれている様子だ。
今日寝泊まりする宿があるか聞こうとしたその時、先程までの盗み聞きしていたのかお爺さんが会話に入ってくる。
何でも宿屋は直ぐそこにあると言うことでこの人に案内をして貰うことになった。
少しばかり歩くとそれ程大きくはないが寝泊まりするには十分の宿屋に着く。
そこからは疲れが溜まっていたのか、そこに泊まる事が決まり自室に入るや否や目に映ったベッドにダイブしそのまま深い眠りについていた。
我ながら速すぎる就寝だ、新記録更新かも知れない。
・・・・・ガサッ
近くの窓から何か音が聞こえ目を覚ます。
正確には窓の外だが重要なのはそこじゃない。
寝惚け眼で窓を開き辺りを見渡す。
いつの間にやら真っ暗になっており、自分がどれだけ寝ていた事かを思い知ると同時にあの物音はただ物が落ちただけだと解釈した。
うん、そうに違いない。
そう解釈したと同時に窓を閉めちゃえば良かったのに、私はそれが少し遅れてしまった。
それが故に寝ようにも寝れなくなってしまったのだ。
私は窓を閉める直前女性の
しかもそれは今目の前に広がる林から聞こえた来たのである。
思わず顔が引きつる。
もう夜中だよ!?そんな時間にこんな声聞いたら怖くならない訳が無いよ。
────気のせい・・・・そう!これは疲れが起こしている幻聴!!
そう自分に言い聞かせ窓を閉める。
これでもう安心と思ったがあの泣き声が耳にこびりついて仕方がない。
今だけは獣人としての耳の良さが恨めしい事この上ない。
どうせ眠れないならこの際泣き声の正体を見てやろうと窓から飛び降りる。
あくまでも確認だけ・・・危ないと感じたら直ぐに引き返そう。
草木を掻き分け音の聞こえる方へと進む。
どんどんと大きくなっていく声から近付いていることが分かる。
・・・・さて・・・・・一体どんな子が泣いているのやら。
その泣き声の正体を目にした瞬間驚きと同時に安堵する。
そこに居たのはその場で座り込み泣いているあの時水をあげた少女だった。
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