39.5話:鏡面の彼女
※この話は36話~の出来事です
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彼女は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
暫くすると方を震わせ始めた。
「・・・ふふっ───あはははははっ!君なかなか面白い事を言うねぇ」
腹を抱え涙を拭いながら指差してくる。
ひーひー息を切らす彼女は一度深呼吸すると落ち着きを取り戻す。
「いや~久しぶりの大爆笑だったよ・・・・・それで・・・君は本気で言ってるのかな?」
「本気じゃなけりゃんな事言うかよ。テメェぶっ飛ばしてトランを連れて帰る!」
持っている鉄パイプを彼女に向ける。
表情は一切変わらない。
人間一人・・・・・しかも片腕が無いと来たもんだ。
そんなヤツを警戒する必要は確かに無いのかも知れないな。
だが、アイツが油断しきっているからこそ出来ることもあるだろう。
「それじゃ見せて貰うよ・・・私をぶっ飛ばすその姿をさァ!!」
手鏡を此方に投げ飛ばす。
それがキラリと光った瞬間鋭い尻尾が体を貫かんと現れる。
その瞬間一気にしゃがむ事で回避することが出来た。
さっきの腕よりも断然速いな・・・・・クソッ咄嗟に出現するもんだから"
だが完全に避けられない程じゃない。
「避けれるんだ!ならこれもっ!」
割れた鏡の破片を二枚程投げてくる。
顔面狙って一直線に来ている事からただの
・・・・・だったら!!
破片との距離が三十センチ程になったその時パイプを大きく振り回しそれを弾き返す。
それと同時に光り輝いたそれから今度は爪と
二つ同時は厄介だがさっきの尻尾程速くねぇ!
それぞれが俺の体に衝突するギリギリに跳び上がり同士討ちさせる。
爪は
よっし!・・・上手くいったぜ!
二つの姿が鏡の中に消えて行き、着地をした刹那全身鏡の前に立っていた女が俺を蹴り飛ばす。
「あちゃ~流石に今のは無理か・・・」
鏡頼りかと思ってたがやっぱ魔女は魔女だな。
さてどうしたものか・・・こっちは一人に対して相手は増やそうと思えばいくらでも増やせる感じだしな・・・・・身体はまだまだ動く。
だったら一か八かやってみるか。
パイプをバットの様に使い近くを転がる瓦礫や木屑をボールの様に足で浮かし、それを打ち飛ばしていく。
「それって遠距離攻撃のつもり?」
女は軽々と回避する。
辺りに打てる物はもう無い・・・・なら後はコイツで終いだ!
《"
最後に持っていた鉄パイプを投げ飛ばす。
それが彼女に命中することは無い・・・だがそれで良い。
「それじゃ当たらな───ッまさか!」
流石に気付いたようだ。
そう、俺が狙っていたのはアイツの後ろにある全身鏡。
トランを連れて行くんなら手鏡とかでも良い筈だ・・・と言うよりそっちの方が何かと都合が良いだろう。
なのにわざわざ持ち運びづらい全身鏡に入れている訳だ・・・・・それはコイツは対象と同じ大きさの鏡じゃねぇと入れれねェんじゃないのか?
女は俺の
それから出現した腕は飛んできている物を全て弾いた。
女はホッとした様子を見せる。
これで俺の作戦は失敗に終わったと感じているだろうがそれが大きな間違いだ!!
ヤツは嫌な違和感を覚え
「遅ぇよ」
《"
「───しまっ・・・ぐふぅっ!!!?」
魔術を自身に付与すると同時に顔面を蹴り飛ばす。
思い通りまともに食らったなァ!!
そのままヤツは身体を宙に浮かしぶっ飛ぶ。
「宣言道理、ぶっ飛ばしてやったよ・・・」
「────ははっ、あっはははははは!!まさか一人間がここまでやるなんて!しかも
女は不気味に笑う。
顔面蹴り飛ばされてぶちギレてんのかコイツ?にしては何か楽しそうなんだよな・・・
服を払い天を見上げる。
そこにあるのは巨大な光時計。
それはカチカチと音を鳴らし時刻は間もなく十二時を指そうとしていた。
「・・・汐時かな」
そうポツリと呟く。
女はじっとしたまま動く気配はない。
その姿はまるで意思の無い人形のようにも思えた。
その時光時計の針がカチカチと鳴らす。
しかしそれは先程までと違い反時計回り動いていた。
それと同時に分断されていた時計塔が元の形に戻ろうと動き始める。
これ・・・アイツ勝ったんだな。
そう確信した瞬間女は全身鏡へと消えていく。
このままヤツを逃がしたらトランを取り返すチャンスは二度と来ないかも知れない!女を止めようと走り出し、俺の身体も鏡の中へと飲まれる。
「・・・やっぱり入って来れるんだ」
女は不適に笑う。
その笑みはまるでこの瞬間を待っていたかの様に思わせる
・・・何だこれ・・・・・身体が動かねぇ!!あの女は目と鼻の先だってのにッ!
「惜しかったね。もう少し君が
親友を担ぐ女は哀しそうに俺に告げる。
さっきから何言ってんだコイツは・・・それより動かねぇと今動かないとアイツが────!
ヤツの手が肩に触れる。
勢い良く振り
「何処に行くかは君の運次第・・・・意外と楽しかったよ」
そう言うと女はトランを担いだまま奥へと消えていく。
・・・声が出せない・・・・意識も薄れる。
俺はまるで深海へと沈んでいく様に暗闇へと飲まれていく他なかった。
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