第2話 夢か現か

途方に暮れ、見覚えのある所をひたすら歩く。


仕事場まで行けば何か思い出せるかも。いや、仕事って何してたっけ?これは夢のはずだから、いずれ目が覚めるだろう。いや、なんで何も覚えてないだよ。せめてスマホ。スマホはどこだよ。家にあるかも?いやだから、おれの家どこだよ。


辺りを見渡しながら、何となくここは覚えがあるって感覚を頼りに勢いよく歩く。まっすぐ大股で歩いてるのに、この人混みの中誰にもぶつからない。やっぱり夢の中なのだろう。あり得ない状況が続いている。


コンビニに入り、店員にここは何処か相談してみるか?

ーーー目に入ったコンビニの自動ドアの前に行くが、開かない。入れないみたいだ。仕方なくまた歩く。


警察に保護してもらうか?

ーーー交番を探して歩き回るが、見つからない。


誰かに道を聞こう。

ーーー誰に声をかけても無視して通り過ぎていく。


そうだ、電柱に何かあるはず。

ーーー看板らしきものは何処にも無かった。


散々歩き回り、誰もいない公園に行き着いた。


見覚えのある家やマンションなんてものにたどり着けず、目が覚める感覚もなく、どうしようもなくなって休みたくなった。なんとなしにそこのベンチに腰掛ける。


「どーすりゃいーんだよぅ。」


頭を抱え、思いっきり嘆いた。


早く目覚めて欲しい。遅刻とかこの際もう遠くの彼方に投げた。何せ自分の仕事すら思い出すこともできないのだ。

焦りだけが募り動きたくて仕方がないのに、何処へ動くべきなのかすら何も分からない。


うーうーあーあー意味もなく唸り、やけっぱちにシャンプーでもするかのように髪の毛をわしゃわしゃと混ぜる。側から見りゃ変人である。空も明るい真昼間にいい年した大人が公園で蹲って奇声を上げてるのだ。でもどうでもいい。どーせ夢だ。いい加減起きたい。


「なんだか、お困り?」


突然、声がした。


「っ?!」


ひどく驚いて跳ね飛ぶように立ち上がり、音がしそうなくらい勢いよく声がした方に顔を向けた。


おれの胸より低いくらいの女がこっちをみてた。すぐ近くで聞こえたと思ったが、見ると公園出入り口付近。俺が座っていた公園のベンチから10メートルあるかないかくらいの距離。木の影の下、サンダル履いた茶色ボブの水色ロンTを着た胸のでかい女が居た。


「おおお、おれ?!おれに話しかけた?!!」


夢の中みたいなこの状況になってから初めての人との邂逅である。

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