第3話 蜘蛛

 中に入ると言うまでもなくすごく汚かった。


蜘蛛の巣がやたらと多く、昔小学校のころ見た大きい黒と赤と黄色の三色が混じった毒々しい色の蜘蛛や茶色っぽい毛がたくさん生えているタランチュラのような蜘蛛など種類はたくさん。


蜘蛛だけでなくほこりの量もすごい。誰かが昔まで住んでいたような様子がある家具は誇りと蜘蛛の巣でおおわれていた。




「うげー進みたくねー」




そう言いつつも進むしかないので歩く。


そしたら…。




「うごふぁ」




床が抜けた。といっても一階なので落ちるとかはないけど右足がひざ下あたりまで床の下に埋まってしまった。シロアリでもいるのだろうか。ひー気持ち悪い。


地面から足を抜くとおnewのズボンに木くずや砂が付いている。


足を振って汚れを落とす。


この先はちょっと気を付けないとな。特に二階。


僕は床の危なそうなところをなるべく避けながら進む。


そうすると気づいたことがある。


この館はやはり昔まで人が住んでいたようだ。それも大分昔に。


しかし引っ越しなどではなく家具や物品は残っている。それに食べ物なんかも腐っているが残っている。


テーブルの上に置かれた皿や脱ぎ捨てられたような服。


古くなかったらまだ誰かが住んでいると勘違いしてしまいそうなくらいだ。




「カゲロウ、どっちかわかる?」




さっきからカゲロウがモノノケ探知で探してるど全然見つからない。


カゲロウのモノノケ探知は感じ取るだけであんまり使えない。




「見つけました。あそこです」




カゲロウが指さしたのは一つの少し大きめのクローゼットだ。




「本当にこの中にいるのかよ」




僕はクローゼットの取っ手をつかみ扉を開けると………。


バカでかい蜘蛛と目が合った。




「すぅぅーーーー………」




僕は深呼吸しながら扉を閉める。


え?は?何あれ何あれ。キモすぎ。デカ。最近の蜘蛛ってあんなにデカいの?蜘蛛の巣とか30mくらいあるんじゃない?


クローゼットの中にいたのは大体1m半ってとこの蜘蛛。クローゼットの中でもぎちぎちだった。


いやいや僕の見間違いかもしれないし…。


そう思い僕は再び扉を開ける。




「し、失礼しまーす」




はい、思いっ切りいますねー。


すごいつやつやの毛みたいなのが体中に生えている。オニグモかな?




「もう一度失礼しまーす」




こっちをつぶらな瞳で見てるだけだからちょっと触ってみようかなーと手を伸ばした瞬間、蜘蛛が奇声を発した。




「キエエエエェ!!!」




びっくりして数歩下がる。


どうした急に、触られるの嫌だったのかな。


動かなかったら目がつぶらで可愛いかもなーとか思ったけどこのデカさで動かれるとキモすぎる。


巨大蜘蛛がクローゼットの中からゆっくりと出てくる。


どうする?攻撃?




「カゲロウ、『黒影拳』」




「御意」




カゲロウがマフラーの一部を僕の両手に纏わせ、纏った黒い影が形を変えていく。


不定形で黒い霧のようだった影が手の形になり力を籠めると黒曜石のように黒光りするガントレットに変形した。カゲロウの異能で作り出したものはカゲロウの霊力が入ってるから霊力なしの僕でもモノノケに攻撃が通じる。




「さて、どう来るか」




蜘蛛が牙をガチガチと鳴らしながらこちらを観察してくる。


次の瞬間、蜘蛛が後方に飛び壁をよじ登り天井の方から糸を飛ばしてきた。




「うおっ」




まぁ特に早くもないし全然避けれる。


そしたらその蜘蛛が足をググっと折り曲げた。


あ、これ飛んでくるわ。


案の定、蜘蛛がすごい勢いで飛んできた。


こういう時の対処法を教えておこう。こういう時、ガントレットで防ぐのもいいが蜘蛛までの距離はまぁまぁある。ならば…。




「エルボー!!」




飛んできた蜘蛛を横から肘打ちする。


戦うとなると皆、拳や足を使って戦う。まぁそれでもいい。けれど人間の身体で一番合理的に攻撃できるのは肘だと僕は思う。普通に肘の骨硬いし、痛点が少ないから殴った時よりもこっちへのダメージが少ない。よく殴ったほうも拳が痛むとかいうけどこれで解決だ。


弱点としては拳よりリーチが短いこと。しかし蜘蛛と僕までは少し距離が開いていたからエルボーで撃退可能だ。


うわ、肘に蜘蛛の毛みたいなのちょっとついてる。キモ。




「主よ、その毛少し霊力が乗っております。念のため取ったほうが良いかと」




「そう?別に痛くないけど。まぁキモいしいっか」




肘に着いた毛を手ではらう。


蜘蛛の方はというと僕のエルボーがクリティカルヒットして地面に倒れてひくひくしてる。


天誅。




「キエ!」




蜘蛛の頭を潰す。最初にやってきたのはこいつだから正当防衛だ。


さて次を急ぐか。

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