文豪ストレイドッグス:探偵社の白猫

海音

零の章:猫にして探偵たり得るか

第1話 白き猫、灰の瞳

ある日、武装探偵社の入口に子猫が段ボールに入れられ、捨てられていた。

子猫はここらでは見かけない真っ白な毛色で瞳は淡い灰色。

段ボールの中で毛布にくるまって小さく鳴いていた。

段ボールには、こんな手紙も添えられていた。


『武装探偵社 御中

皆様、どうかこの子をお助けください

私にはこうする他無かったのです

心優しき武装探偵社の皆様を信じております

よろしくお願い申し上げます』


まず真っ先に子猫を見つけたのは、中島敦だった。


敦「皆さん、おはようございます。朝来たら子猫が扉の前に捨てられていて……」

太宰「敦くーん、もしかして君が虎だから寄せ付けてるんじゃなぁいのー?」

敦「太宰さん、それは関係ないですって!」


探偵社員が揃ってまず、この子猫をどうするかと考える。


国木田「心苦しいが、子猫の世話をする余裕は我々には無い。敦、お前が拾ったんだ。責任を持って――」

敦「あ、でも! こんな手紙が一緒に入っていたんです、見てください!」

太宰「どれどれ……なるほどね。乱歩さーん?」


一緒に入れられた手紙の意味、子猫がわざわざ武装探偵社のところへ捨てられた理由、それは探偵社員全員が知りたいこと。

そういうときは、決まってこの男の出番だ。


乱歩「んー? 僕はお腹が減ってそれどころじゃないんだけどー?」

敦「乱歩さん、ほらお菓子ならストックいっぱいありますから! この子がここへ捨てられた経緯を推理してくれませんか?」

乱歩「敦くん、準備がいいねぇ。仕方ない! 見てあげよう」


江戸川乱歩は異能力者ではない、がこれをやらないと気が済まない。

社長からもらった(安物の)メガネをかけ、決め台詞。


乱歩「異能力――超推理!!」


乱歩はほんの数秒もあれば、この程度の真実を簡単に見抜いてしまう。

なんと言っても彼は『名探偵』なのだから。


乱歩「なるほど……太宰くん、この子猫に触れてみて」

太宰「はぁーい」


太宰が子猫を抱っこしようと触れた瞬間、眩い光が広がり、先程までの子猫が消えた。

代わりに白い髪、灰色の瞳、白いドレスを着た少女が現れたのだ。

どうやら太宰の異能力『人間失格』が発動したらしい。

この異能力は他者の異能を無効化する。


敦「もしかして……異能力!?」

乱歩「せいかーい! 太宰くんが触れてこうなるってことは、彼女は猫に化けることができる異能力者だということだ」

国木田「だとしたら、彼女は何故探偵社に? まさか、どこかのスパイか?」

乱歩「いやいや、スパイならこんな無防備に潜入しないさ。それにあの手紙、文面や筆跡から嘘偽りは読み取れなかった。要するに、単純な話さ」

太宰「この子の異能力が厄介で、どうすることもできずにいた親が探偵社に助けを求めた――ってとこかな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る