第10話 警護対象、恋愛注意報

「いーしーかーわー先輩っ!」

マロンがルンルン気分で話しかける。

「あ、マロンちゃん!どうしたの?」


確かに石川先輩はかわいい。

石川先輩は、いわゆるお嬢様なのに、どこか親しみやすい雰囲気をまとっていた。 茶色がかったセミロングの髪はゆるく巻かれ、制服のリボンはいつもきれいに整っている。 笑うと、ほんの少しだけ八重歯がのぞくのがチャームポイントで、 その笑顔に、男子たちはよくやられていた。


「君が明久斗君?よろしくね!君が警護してくれるんでしょう?」

警護っ!?いつからそんな話になったわけ!?

いや可愛すぎて無理でしょっ!いつの間にか、好きになりそうだ。


「へえ。近くで見ると君、カッコいいね。」

へっ!?

「でも中身はかわいい。ふふっ、素敵な人。よかった、そんな人が警護してくれるなんて、安心だよ。」

顔を近づけてそう言われた。うわあっ、可愛いっ。好き!


__あれ、今僕、好きって思ったのか?石川先輩のことを?


いやいやいやっ!ただ単に近くてふらっとしただけだよっ。


「それじゃあ、ペアは一緒によろしくね。」

えええええええええええええええええええええええええええ!?


ペアっていうのは、5年の一学期から始まる。

第一希望が合致したら、ペアになれるんだ。ペアになったらどちらかが卒業するまでずーーーーーっと同じ。

それを石川先輩と,,,,?


「ねえ、明久斗君。私のこと、どう思ってるの?もし嫌なら、ペアにならないでもいいけれど,,,,。」

いつもの柔らかい笑顔のまま、でも瞳だけが真剣だった。


「……えっ、えっと……」

「ふふっ、そんな顔するんだ。かわいい。」

すっと距離を詰めて、制服の袖が触れ合う。


「私ね、今まで誰かにこんなふうに近づいたこと、ないの。……君が初めてだよ。」

「へっ,,,,。」

すっ、マジで好きになりそうだよっっ!!


「僕は、あなたを大切に思っています。大切に守るべきあなたを、全力で警護します。」


「……ありがとう。じゃあ、私もあなたを信じるね。」

そう言って、ほんの少しだけ、袖を握る。

その手の温度が、しばらく離れなかった。


いつの間にかマロンはどこかに行ってしまっていた。

ど、どこまで聞かれてたかな。

石川先輩のあの顔と、台詞で、もう僕は先輩を好きになってしまったな。

ああ、ああ、好きだ。


「じゃあね、明日。発表だから。第一希望は君にしておくね。」

「あっ、はいっ!僕も第一希望を、あなたにします!」

なんか告白みたいな瞬間だったけど,,,,。

心の中で、僕はつぶやく。


です、先輩。







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