第10話「死者の剣、再臨! “裏切り者”アーヴ、動く」

王都・王宮前広場。

処刑者部隊の空制圧が破られ、王都は一時の静けさを取り戻していた。


だが、静寂は嵐の前触れ。


石畳の上、黒い足音が響く。


「さすがに厄介だ。だが、予定を早めよう」


姿を現したのは――仮面の処刑者、部隊隊長・アーヴ・ラメルス。


その背には黒と銀の大剣、《神律剣カタストラ》。

神の因果律を斬る禁忌の武器。


アーヴは仮面越しに静かに語る。


「“七番目のレガリア”……。君が、継承者か。

 だがこの剣は、過去にも、君と似た顔を斬っている。――初代、アミリアの顔を」


レガリアの瞳が怒りに燃える。


「アンタが、初代を……!」


「そうだ。私が“彼女”を殺した。だが、それだけではない」


すると――


「やめてください……アーヴ・ラメルス」


アーヴィンが前に出た。

その表情に、かつて見せたことのない鋭い怒気が宿っている。


「……もう、黙っていられません。あなたは、私の“兄”だ」


――衝撃。


レガリアもキルカも、言葉を失う。


「兄だと……?」


アーヴは、仮面を外した。

現れたのは、アーヴィンと瓜二つの顔。

だが、目の色は冷たく、どこか“死んだ目”をしていた。


「かつて、私たちは“同じ研究所”にいた。

 秩序機構が作り出した、“神の剣を扱える人工因子保有者”――《律因子適合体》だ」


アーヴィンの声が震える。


「でも兄さん……君は、“自分の意思”で神の側についた!」


「違う」


アーヴの声は、静かだった。


「私は、どちらの側にもつかなかった。

 私が仕えるのは“秩序”でも“反逆”でもない。

 私が信じるのは、“真実”だ」


「ならなぜ! 初代レガリアを殺した!?

 なぜ、今も剣を振るう!?」


「彼女が、“間違っていた”からだ」


アーヴは剣を抜いた。


「世界を変えるには、理想だけでは足りない。

 “犠牲を受け入れる覚悟”が必要だ。

 ――君たちには、それができるのか?」


ズオォォォォン!!


《神律剣・カタストラ》が抜かれた瞬間、空間が歪む!


レガリアが感じる、未来への“切断感”。


(あれは……時間そのものを断ち切ってる!?)


アーヴは静かに言う。


「この剣は、“可能性”を切り捨てる。

 一度見た未来の中から、“勝てる未来”を――切り落とす」


「そんなの……!」


アーヴィンが叫ぶ。


「それじゃ、“希望”すら残らないじゃないかッ!!」

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