第41話 至上の共闘
「なんだこいつは!? なんなんだこの剣技は……っ!?」
「あの獅条アスカと、並んで戦ってるぞ!」
「すご過ぎだろ……っ!」
いよいよ総立ちになる、酒場の観戦者たち。
攻略組の危機に駆けつけ、戦況を立て直した謎のパーティ。
さらに攻略組のエースであり、最強の探索者である獅条アスカと共に戦う青年の存在。
驚きと興奮が入り混じり、騒然とする酒場。
戦いを静かに見守っている少数の探索者は、これまで彼らの能力をどこかで垣間見てきた者たちだ。
この異常なまでの盛り上がりを、十九階層で戦う者たちは当然まだ知らない。
◆
「このまま、片付けるわ」
「了解。ドロップが出た時は――」
「分かってるわよ。出たらね」
敵である骸骨魔導士を見据えながら、交わす会話。
「くるぞ!」
白い大魔導が、動き出す。
現れた大型の魔法陣から、多くの魔物が召喚された。
「物量も武器にするって、初めてのタイプね! でもっ!」
翼を持った一メートル強ほどの悪魔は、ガーゴイルか。
一斉に飛び立ち、こちら目がけて飛んでくる。しかし。
「【紅蓮灼火】!」
しっかり引き付けたところで振るった武骨な大剣が、巻き起こす盛大な爆炎。
なんとたった一撃で、ガーゴイルの大半が消し飛んだ。
その火力に驚きながらも、集中は切らさない。
「【チェンジ】【ソードソニック】!」
生き残った少数の個体はそのまま、躊躇なく接近してきている。
俺は武器を【リザードマンの剣】に変えて、爆炎を抜けてきたガーゴイルたちを斬り飛ばす。
「まだまだ! 【チェンジ】【ソードソニック】!」
そして左手に取った短剣を白の【リザードマンの剣】に変えて、二刀流による斬撃の連射で攻撃。
ガーゴイルたちを殲滅する。
「貴方、その剣……っ!」
アスカが俺の白い【リザードマンの剣】を見て、なぜか驚きの表情を見せた。
「い、今はいいわ……っ!」
しかし首を振り、前を向く。
骸骨魔導が新たに呼び出す二体の魔物。
こいつらも明らかに、中ボス級だ。
ガーゴイルの殲滅が遅ければ、面倒なことになっていただろう。
そして次の瞬間にはもう、アスカは片方の個体の目前。
溶岩のように輝く【灼火剣】で、中ボス級の片割れを斬り飛ばしていた。
「【チェンジ】!」
俺はここで武器を変更して、先ほど使った【青魔宝石の剣】を握る。
そしてそのまま、伸びる魔力光の刃で二体目の中ボスを一発撃破。
「面白いスキル……! でも!」
アスカは真面目な顔で、視線を向けてきた。
「それは私のだからね!」
「ああ!」
「続けてくるわ! 気を付けて!」
召喚の魔物たちが消えたところで、骸骨魔導が腰に提げた武器を抜く。
選んだ白金の槍を、俺に向けた次の瞬間。
「っ!?」
超高速で飛来。
「オラァァァァァァ――――ッ!!」
俺は感覚の全てを槍に集中し、【魔法石の剣】を振り払う。
直後、魔力の刃とぶつかった槍の穂先が、火花を散らして激突。
弾かれた槍は、そのまま岩壁に突き刺さって盛大に爆発した。
「アスカと、互角だって……?」
安定してきた戦い。
全体の動向を気にしながらも、俺たちの戦いを見守るリーダー。
聞こえたつぶやきには、驚愕の色。
一方、骸骨魔導は攻勢を続ける。
さらに魔法陣から大型の魔物を二体同時に呼び出し、アスカにけしかけてきた。
「この程度っ!」
そしてアスカが敵の攻撃をかわし、【灼火剣】で敵の片方を消し飛ばしたところで――。
「あぶないっ!」
二体の大型で視界を塞ぎ、攻撃のために大きく足を踏み込んだところを狙った、『剣』による高速刺突。
自分で召喚した魔物の片割れを吹き飛ばしながら、骸骨魔導が迫りくる。
俺はアスカを強引に抱きかかえて転がり、回避に成功。
「また助けられたわね。味方をエサにして攻撃する魔物っていうのも、初めてよ……!」
後方で上がる大きな爆発に、二人並んで振り返る。
「……違う。アスカを助けられるほどなのか……っ!?」
再び聞こえたリーダーの声。
それを合図に、俺たちは走り出す。
対応する形で、描かれていく魔法陣。
「【紅蓮灼火】!」
現れた三体の大猿の一体を、アスカが一撃で焼き尽くす。
「そらっ!」
続けて俺が【青魔宝石の剣】を振り下ろして、二体目を撃破。
「「はああああっ!」」
そして三体目は、炎の剣と魔力の剣の二つに斬られて消し飛んだ。
踏み込んだ、骸骨魔導の目前。
この位置から、壁になる魔物の召喚はもう不可能だ。
「喰らえ!」
先手を打つ形で振り下ろす【青魔宝石の剣】から、伸びる魔力光。
しかし骸骨魔導が張ったバリアを前に、受け止められた。
「まだ私がいるわ!」
振り払う【灼火剣】の一撃は、骸骨魔導の腹部を斬り払う軌道。
だがこれも、もう一枚のバリアによって阻まれる。
「【チェンジ】」
それを見て俺は、武器を【トロルキングの斧】に変更。
その場で回転しながら、全力の振り払いを仕掛ける。
「【大木断】だああああああ――――っ!!」
バリアの張り直しは間に合わない。
骸骨魔導の腰元やや下に炸裂した一撃に、弾けるような衝突音。
浮遊が通常状態の骸骨魔導が、自動車にぶつかられたかのような軌道で吹き飛び、地を跳ねた。
「いい火力ねっ!」
この隙を、獅条アスカは逃さない。
四足獣のような勢いで地を蹴り駆け寄ると、そのまま大火を掲げた竜骨の剣を振り下ろす。
「焼き切れ! 【灼火剣】!」
豪炎と共に放たれた一撃が骸骨魔導を吹き飛ばし、その純白のローブを黒く焦げさせる。
召喚やバリアによる厚い防御盾を持つ階層主に、ついに連撃を喰らわせることに成功した。
「すごい、ですね」
「ああ、強過ぎる。あれだけの火力を誇り、盾となる魔物を自在に呼び出す階層主ですら、二人の連携を止められない。歯が立たない。何より見事なこの連携。アスカが誰かと共に全力で戦うことができれば、こんな圧倒的な戦力になるのか……!」
俺たちは追撃に走る。
体勢を立て直した骸骨魔導は、『槍』の大きな払いで反撃。
これを二人して、垂直の跳躍で回避する。
着地と同時に、アスカが振り下ろした【灼火剣】によって生まれた業火が骸骨魔導士を追い込んでいく。
そして生まれた隙に、動かない俺を見て不思議そうな顔をした。
「どうして今、攻撃しなかったの?」
「剣を持ってるタイミングで倒さないと、剣がドロップしないかもしれないし……」
「はあ!? ちょっと、何言ってるのよ!」
剣を手にしている時に倒さないと、剣をドロップしない可能性もあるのではないか。
そう考えると、どうしても手が出なかった。
これは怒られても仕方ないと、覚悟を決める。
「……もう、仕方ないわね」
しかしため息をついたアスカは、意外にも俺を責めるでもなく――。
「剣の時に、叩きましょう」
なぜか協力的。
「助かります――――っ!!」
俺は感謝しながら、再び【リザードマンの剣】で斬撃を放つ。
これをかわして、反撃とばかりに掲げた杖から放たれる無数の誘導魔力弾。
「【紅蓮灼火】!」
振り上げるアスカの一撃が、爆炎を生み出し魔力弾を霧散させる。
その隙に駆け出した俺は、一直線に骸骨魔導士のもとへ。
すると目前に現れた二つの魔法陣から、黒ヤギの魔物がせり上がってきた。
俺は加速し、二体の中間にたどり着いたところで【トロルキングの斧】を手に一回転。
同時に両者の脚部を斬り飛ばして、即座に無効化。
するとそんな俺の頭上を跳び越えていったアスカが振り下ろした一撃を、骸骨魔導は後退することで回避した。
さらに俺は、アスカを追い越す形で前に出る。
「【チェンジ】! 『ソニックストーム』!」
さらに下がろうとする骸骨魔導に、二刀流の【ソードソニック】乱舞を叩き込む。
すると全身を斬り裂かれながら下がった骸骨魔導士が、再び『剣』を抜いた。
「「来たっ!」」
重なる声。
直後、予想通り迫り来る超高速の刺突。
俺は目をそらさず、しっかりその軌道を見定める。
美しい白銀の剣は、冷たくまばゆい輝きを灯しながら、一直線に俺を狙う。
「――――ここだ」
刺突は、正面以外からかかる力に弱い。
俺は手にした【リザードマンの剣】を、下から斜め上に持ち上げるようにして、迫る刃を受け流した。
「なんて、上手な剣さばき」
つぶやいたアスカは、それでもこの隙を逃したりはしない。
まるで脱線した電車のように、弾かれ滑っていく骸骨魔導を追いかける。
「【チェンジ】」
骸骨魔導は慌てて体勢を立て直し、防御に回る。
もはや退避の余裕などなし。
アスカの苛烈な連続攻撃に押され、魔導士のローブが焼け、散っていく。
「【紅蓮灼火】!」
掲げた剣に灯る、溶岩のごとき真紅の閃光。
振り下ろした一撃から生まれる炎に、骸骨魔導士が再び大きく体勢を崩した。
「今よっ!」
振り返り、ルートを開ける獅条アスカ。
俺は燃え盛る炎の道を、駆け抜ける。
【溜め】を続けていた【オーガリーダーの剣】を手に、大きく跳躍。
骸骨魔導士は、慌ててバリアを張って対抗する。
「【強撃】……これで、終わりだああああああああ――――っ!!」
全体重をかけた渾身の振り降ろしは、バリアを割り砕く。
光の障壁が盛大に舞い散り、岩場に破砕音が鳴り響いた。
それでも、剣の勢いは止まらない。
反則級の【溜め】を可能とする【オーガリーダーの剣】はそのまま、白の骸骨魔導士もまとめて両断した。
「……このバリア、割れるものなの?」
舞い散るバリアの残滓を見ながら、感嘆の声をあげる獅条アスカ。
「まさか、アスカを超えているのか……?」
呆然とする攻略組。
いきなり現れて攻略組を混乱させた十九階層の階層主は、こうして崩れ落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます