第40話 獅条アスカと骸骨魔導
「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」
ド派手な【解体】や火氷雷の魔宝石攻撃に、敵の攻撃を受け止め自分ごと攻撃させる戦法。
そして巨大な魔物の足を払って転倒させた響介の凄まじい一撃に、上がる歓声。
特区の酒場を始めとした、配信を放送している各所に探索者が群がり出す。
「あれ、ミノタウロスの料理人か!?」
「……俺を助けてくれた、【瞬間移動】の爺さんだ」
「トロルキング両断の剣士と、一緒にいた魔宝石の子じゃねえか!」
その中にいた幾人の探索者が、響介たちに気づき出す。
「知ってるぞ! この剣士が強いんだ!」
「瞬間移動のじいさんとの連携は、半端じゃないぞ!」
「やれ! やっちまえ!」
そして、応援の声をあげ始める。
「で、でも、相手は攻略組が苦戦してる魔物だぞ!? それをこんな……!」
かつてない光景。
歓声に混ざる驚愕の声は、酒場をヒートアップさせていく。
その時映ったのは、一人抜け出していた獅条アスカの前に立ちふさがる個体。
掲げたのは、短い青魔宝石の剣。
放つ一撃は、魔力光の刃を大きく伸ばした強烈な斬り払い。
これをアスカがしゃがんでかわすと、続けざまに高速の返しを放つ。
二連の払いに対し、アスカはしゃがんだ際に曲げた両足をバネに変えて跳躍。
見事な回避と共に、敵の頭上に接近する。
「【灼火剣】!」
呼びかけに応え、溶岩のように煌々と輝く大剣をそのまま振り下ろす。
深すぎる一撃は、勝敗を即座に確定させた。
それでも相討ちを狙って剣を掲げた魔物に、アスカは真上に弧を描くような一撃を放つ。
すると魔物は斃れ、斬り飛ばされた腕と共に青い魔宝石の剣が宙を舞う。
圧倒的な強さ。
アスカはそのまま骸骨魔導の元に向かおうと、踏み出したところで気づく。
「マズっ!」
骸骨魔導が、今まさに激闘の中にある攻略組に向けて氷結弾を発射。
アスカは慌てて走り、【灼火剣】で氷結弾を両断。
味方を守ることに成功するが――。
「アスカ! 後ろだ!」
リーダーの叫び声。
振り返るとそこには、骸骨魔導が生み出した召喚用の魔法陣。
氷結弾による攻撃自体に注意を向けさせる、嫌らしい戦法。
現れた黒鬼は、棍棒を高々と掲げていた。
「っ!」
回避は間に合わないと踏んだアスカは、防御態勢で対応。
敵の攻撃力が分からない以上それは賭けとなり、アスカがケガを負えば戦況は一気に不利となる。
仲間を守るために、追い込まれた危機。
イチかバチか、走る緊張。
轟音と共に振り下ろされる棍棒が、アスカに直撃しようとしたその瞬間。
「オラァァァァァァァァ――――っ!!」
駆けつてきたのは響介。
「こいつを、借りるぞ――――ッ!!」
全力で駆けてきた響介が取ったのは、先ほどアスカが打倒した魔物の手から離れた【青魔宝石の剣】
地面に刺さっていた『ドロップ』武器を握り、そこに込められているスキルを開放する。
すると魔力で生み出された長い刃の斬り上げが、黒鬼の腰から胸にかけてを切断した。
「間に合った……!」
安堵の息をつきながらも、その視線を純白の魔導士から離さない。
「何……それ」
黒鬼を、一撃で打倒した響介。
魔力光の刃による攻撃は、今さっき目撃した魔物のスキルと同じものだ。
霧散していく魔力の刃を見て、獅条アスカは驚きの表情を見せた。
◆
手にした【青魔宝石の剣】を降ろし、息をつく。
するとボディスーツの少女は、俺を見てその目を見開いた。
「……あなたは、確か」
俺のことを知っているのか、獅条アスカはその凛々しい目でこっちを眺めていたが、やがて小さく息をついた。
「ありがとう。助けられたわね」
「ああいや、とにかく無事でよかった」
「貴方の力、多少なら知ってる」
そう言って、骸骨魔導士に向き直る。
助けられたことが気に入らなかったのか、少し恥ずかしそうな、複雑な表情をしながら。
「でも……戦うつもりなら足は引っ張らないで」
「了解」
「それと……」
「それと?」
「その剣は私のだから」
「……え?」
「その剣は、私のドロップ」
「あ、ああ」
俺は手にした剣を、あらためて確かめる。
魔宝石を削り出して刃にしたものに、銀の柄をつけたもの。
これはさっきいた魔物のドロップなのか……いいなぁ。
伸びる魔力の刃で戦えるというのは、なかなか面白い。
手持ちにはない変わり種の武器に、うっかり本音がこぼれそうになってしまう。
「私のだから」
「分かった」
なぜかその辺り、譲らない感を出してくる獅条アスカに応えて、俺も前を向く。
「それじゃあ、あいつがドロップを出したら俺がもらってもいいかな?」
「……まあ助けてもらったし。出たらね」
二人並んで、武器を持つ。
構えると骸骨魔導も、俺たちの狙いが自分だと気づいたのだろう。
こちらに向き直り、その手を腰に提げた武器に伸ばす。
いくつかの武器の中から選んだのは、一本の剣。
「あの剣だ……! いきなり来た――っ!!」
骸骨魔導が俺たちに照準を合わせるように、左手を伸ばしてこちらに向ける。
そして剣を持った手を、大きく引くと――。
「「っ!!」」
放たれる、目にも止まらぬ高速飛行突き。
アスカと二人、慌てて左右に大きく分かれる形で退避する。
すると光の尾を残して通り過ぎていった骸骨魔導がそのまま突き上げた剣から、炸裂する魔力光の爆発。
キラキラと舞い散る魔力光は、美しくすらある。
「……欲しい」
絶対……絶対欲しいぞ! この剣っ!
『高速飛行突き』からの『魔力爆破』なんて、最高にカッコイイじゃないか!
しかもこの威力と速度、これ以上ない当たりスキルだ!
興奮しながら、俺は反撃の体勢に入る。
「まだ続くわ!」
しかし先行したのは、武器を杖に変えた骸骨魔導。
掲げた杖から、火山の噴火を思わせる大量の炎弾放出が行われた。
隕石のように次々に落下してくる火炎弾は、大きさも数十センチほどある。
横のアスカと共に顔を上げ、しっかりとその軌道を見定めた後。
同時に回避行動に入る。
左右への速いステップを上手に使って、降り注ぐ火炎弾を見事にかわすアスカ。
俺もそれに倣うような形での回避を行う。
「っ!」
アスカが小さく声を上げた。
回避した先に、折り重なるように三つの大型化炎弾が迫り来ていた。
普通の探索者なら、もうどうしようもない状況だろう。しかし。
「この程度でっ!」
振り払う【灼火剣】が、三つの炎弾をさらに激しい爆炎で斬り飛ばす。
巻き起こる、盛大な爆発。
アスカはこれだけの危機を当然のように切り抜けた。そして。
「この状態で、もう次の手が打てるの!?」
そんな奇跡を成したアスカが、驚きと共に叫んだ次の瞬間。
すでに杖をこちらに向けていた骸骨魔導から放たれた、一つの高速火炎弾。
凄まじい速度で接近する一撃は、これまでのような広範囲のものではなく、狙撃のための一発だ。
その狙いは、俺。
「気をつけて!」
「【チェンジ】!」
アスカの声に応えるように、武器を【オーガリーダーの剣】に変更。
狙いを澄ます。そして。
「ここだ! 【強撃】!」
迫る火炎弾を、真っ二つに斬り払う。
斬られた炎弾は割れ、俺の背後で爆発炎上する。
背中に感じる熱風。
獅条アスカの髪が、大きく揺れる。
「これが……攻略組の力か」
「攻略組でもないのに、この動き……?」
思わず俺たちは互いを見合い、それからゆっくりと骸骨魔導に向かい合った。
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