第12話 奇妙な行動
ホテルに缶詰状態の私たちにとって、時間は重く、しかし不気味なほど速く過ぎていった。
ルーマニア警察の捜査は相変わらず緩慢で、日本のメディアがどれだけ騒いでも、彼らの態度は変わらなかった。
「吸血鬼の仕業」という結論に、彼らは固執しているかのようだった。
そんな中、佐々木将吾は、ますます奇妙な行動をとるようになった。
彼は遥の死後も、まったく悲しむ様子を見せず、むしろどこか誇らしげな、あるいは満足しているような表情を浮かべていることがあった。
私たちの前では口数が少なかったが、時折、独り言のように何かを呟いているのが聞こえた。
「これで…奴は、真の闇を知ったのだ…」
「ドラキュラ伯爵の怒り…しかと見届けたか…」
まるで、自分が事件の目撃者であるかのように、あるいは、事件のすべてを知っているかのように振る舞う将吾。その言動は、私たちクラスメイトに恐怖と困惑を与えた。特に、遥の友人たちは、将吾の不気味な態度に怯え、彼に近づこうとしなかった。
私は、将吾のその奇妙な行動に、さらなる違和感を覚えていた。
彼は、本当に「ドラキュラに取り憑かれている」のだろうか?それとも、これはすべて、彼の作り上げた演技なのだろうか?
彼の言葉の裏に隠された真意を突き止めるため、私は将吾のSNSアカウントを徹底的に監視し続けた。
将吾の最新の投稿は、遙の死を直接的に示唆するようなものではなかったが、ブラム城の薄暗い一室の画像と共に、「血の渇きは、満たされた…」という、まるで事件を祝うかのような不気味なメッセージが添えられていた。
「美羽、これ見て」
拓海が、将吾の別の投稿を指し示した。
それは、事件発生から数時間後に投稿されたもので、将吾がホテル内の廊下を歩く姿が写っている。
投稿時間は、遥の遺体が発見された直後のものだった。
「これ、将吾が自分で投稿したんだ。しかも、この時間、将吾は部屋にいるって言ってたはずだ」
拓海の言葉に、私は将吾のアリバイに疑問を抱いた。
彼は、事件発覚直後、自分の部屋で寝ていたと証言していたはずだ。
しかし、この投稿が彼自身によるものだとしたら、彼の証言は嘘になる。
さらに詳しく投稿を調べてみると、将吾が事件後、まるで自分がその場にいたかのように、現場の状況を詳細に描写するような投稿をしていたことが分かった。
警察の発表よりも早く、そして詳細に。それは、彼が事件現場にいたことを強く示唆していた。
「将吾は、本当にその場にいたんだ…」
私の確信は深まった。彼は、吸血鬼の仕業に見せかけるため、そして自分を「ドラキュラに取り憑かれた人間」と見せかけるために、巧妙に情報を操作していたのだ。彼の言動は、すべてが計画されたものだとすれば、辻褄が合う。
しかし、なぜそこまでして?彼は、一体何を隠しているのだろうか?
イアナは、将吾の投稿を見るたびに、その顔に深い憂いを浮かべた。
「あの人は…本当に、何かに囚われているようです。私の知るドラキュラとは、少し違う…しかし、それ以上に恐ろしいものに…」
イアナの言葉は、将吾の異常な行動の背景に、まだ私たちの知らない何かがあることを示唆しているようだった。
彼の「ドラキュラの末裔」という妄想は、単なる中二病の範疇を超えている。
そこに、一体どんな闇が潜んでいるのだろうか。
私は、彼の行動パターンを分析し続けることで、その答えに近づけると信じていた。
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