第2話 クラスメイトが主人公過ぎる
クラスメイトの
「馬淵君、落ち着いて。皆も。先ずは先生の話を聞こう」
一ノ瀬が間に入り、馬淵達を宥める。続いて榊も声を上げた。
「そうだね。一ノ瀬君の言う通り、とりあえずカトレアちゃんの話を聞こうよ。話してくれるんだよね」
榊がキッ、と先生を睨むと、先生は真剣な表情で頷く。静まり返る生徒たちに向けて、先生が口を開いた。
「ここは皆さんが居た世界とは違う世界。皆さんからすると異世界という事になります」
その言葉に再び生徒達が騒めく。榊が、んんっ、と咳払いし生徒を鎮める。
「で?」
「この世界に来て頂いたのは、皆さんにこの世界を救って頂きたいからです」
「おいおい、何言ってんだ、カトレアちゃん。頭逝っちまったのか?」
馬淵の言葉を無視して先生は言葉を続ける。そんな先生の対応に馬淵は舌打ちした。
「詳しい説明をする前に場所を変えましょう。少しこちらの世界を見て貰った方が理解し易いと思いますので」
雰囲気の変わった先生に困惑しながらも、生徒達は先生に付いて行く。
先生が扉を開けると、部屋の外に鎧を着た男が二人立っていた。男達は先生と生徒達の姿を見ると驚いた表情をした後、涙を流し右手を胸に当てる。
「Λ§±ΑΔ×ΘΞΣΦ」
「ΒΦ±βΑδΠΖγ±§ΘΞπ」
男が聞いた事の無い言語で先生に話しかけ、先生も恐らく同じ言語で男に返した。すると、男達は俺達に向き直り、先生にしたように右手を胸に当てる。
「行きましょうか」
そう言って先生が歩き出したので、訳も分からず先生について行く。
石畳の廊下を進み階段を上ると、毛足の長い絨毯の敷かれた、西洋の城のような廊下に出た。
何度か階段を上り、廊下の突き当りまで来ると先生が振り返る。
「皆さん、この先は信じられないような光景が待っています。心の準備をしておいて下さい」
そう言って先生は扉を開ける。
「え? 何これ?」
誰かがそう呟いた。僕達の目に飛び込んで来たのは、石造りの渡り廊下。その先に広がる余りにもファンタジーな光景。
僕達が居たのは城のようで、眼下には中世ヨーロッパのような街並みが広がり、遠くの空を翼竜のような謎の生物が空を飛んでいる。
「マジで異世界じゃん」
僕の隣に居た
殆どの生徒が放心している中、先生がパン、と手を叩く。
「これで、ここが異世界だと信じて貰えたと思います。では、行きましょう」
そう言って、再び先生が歩き出す。
渡り廊下を渡り暫く廊下を歩くと、突き当りの部屋の扉を先生が開く。そこは、講堂のような部屋だった。
「それでは皆さん、好きな場所に座って下さい」
先生がそう言うと、各々自由に席につく。好きに座れ、と言われれば当然仲の良い人間が集まる事になる。
最前列に一ノ瀬が座ると、その周りには男女問わず多くの生徒が集まる。一ノ瀬の右隣りには、一ノ瀬と同じサッカー部で親友の
イケメンで何でもできて可愛い幼馴染まで居るとか、漫画の主人公か。
後方には榊が陣取っている。そちらは一ノ瀬とは対照的に女子しかいない。榊の親友の
「琴ちゃん、この辺座ろ」
「もうちょっと前の方が良くない?」
二人の会話が聞こえてくる。
「えー、あいつの近く行きたくないし」
「そんな事言っちゃダメだよ」
榊の視線の先には、一ノ瀬達の斜め後ろに座る馬淵達の姿があった。傍にいる女子たちも嫌そうな顔をする。
馬淵は言動が荒く、態度が大きいので女子からは敬遠されていた。一方で情に厚く、身内からの信頼は大きい。ガキ大将のような男だ。
このクラスの大きなグループはこの三つで、あとは一人から三人の小さなグループがいくつかあるが、その中で目立つのは窓際最後列に座る
皇は腰まで伸びる長髪を金色に染めており、何度も先生に注意されていたが一向に直す気配は無かった。他にも、当然のように遅刻をしたり、授業中に突然席を立ったかと思うとそれから教室に戻ってこなかったりと、かなりの自由人だった。
しかし、成績は常に学年トップで運動神経も抜群。容姿も非の打ち所がないイケメンで、生活態度以外は完璧の、一ノ瀬並の超人だ。
多くの生徒が席につき、僕も列中央窓際の席に座る。全員が席についた事を確認すると、先生が口を開く。
「もう気付いていると思いますが、私はこの世界の人間です。私の本当の名前はカトレア・アステアナ。この世界の人族最大国家、アステアナ王国第一王女です」
そう言って、先生は恭しく頭を下げた。
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