異世界を救った転移勇者、別の異世界に送られたから今度はうめぇもん食べるために全力を尽くします

灯台猫暮らし

第1話 異世界ってクソゲー


 魔王を倒した。


 俺、勇者らしい。自称じゃない。異世界ではそう呼ばれてる。

 他称勇者。だから俺、大槻大河おおつきたいがは勇者らしい。

 でも異世界生活7年、恋人できず。


 勇者という称号を持ってしても恋人ができないってどういうこと?

 勇者って大谷〇平さんくらい価値あると思っているけど。

 考えるとうつ

 だからやめよ。


 美少女といちゃいちゃできなきゃ、ぶっちゃけ異世界とかただの地獄。

 だってさ。アニメも漫画も、うまい飯もないんだぜ。


 気づいたときは、日本人だったこと後悔。


 飯うまい、アニメも漫画も小説も超超面白い、安全で最高だったんだって思い出して、あああああああああ、って涙流す毎日。

 あの小説の続き、どうなってんのぉおおおおおってなるよ。本当。


 知らなきゃいいことも世の中沢山あるって実感しちまった。


 火を出したり、空飛べても楽しいの最初だけだよ。

 敵倒しても血とか飛んできもいしな。敵にはうらまれるし。味方には偽善者野郎とかあることないこと言われるし。


 モテなきゃ異世界人救ったって、美男美女がありがとうとお礼言ってくるだけ。


 その後、助けた美女は美男とくっついて結婚。

 結婚式に呼ばれて金を出す。こういう所だけ地球と一緒。


 俺、恋のキューピットやりたくて異世界来たわけじゃないんだわ。

 知らんだろ。知らんわな。俺も望んでなかったよ。


 異世界人の馬鹿野郎、結婚式呼ぶんじゃねぇ。


 だが俺小心者。結婚式のスピーチ友人代表頼まれて断れない。


「二人が出会うのは運命でした」


 かあああああああああ。

 馬っ鹿野郎。本心はちげぇだろ。

 別に友人じゃねぇし。ただのモブ。恋のマッチポンプ。噛ませ犬。


 煩悩まみれで恋人になれるかもしれないって、かわいい子助けたらその子に恋人できてその男と結婚、マジテンション激さがりだったろ。


 気づいてた? 「おめでとう」俺の声震えてたよ。君のこと好きだったから。

「泣いてくれるなんて、勇者の友人として本当に誇らしいわ」

 うれし涙じゃねぇから聖人君主と勘違いすんな。デカパイ女。

 嫉妬の涙だ。

 異世界人は勇者を良い方向に解釈しやがる。


 でも俺小心者。

「二人のしあわせが僕のしあわせ」

 かああああああああああ。


 助けてくれ、地獄の異世界勇者無限ループ。


「さすが」

「さすが勇者さま」

「やっぱり君には敵わない」


 持ち上げ方ちっげえええええ。


 頼むから。

 俺の本心を、俺の煩悩を、聞いてくれ。

 届け俺の望み。求めるのは女性からの好きです。それだけだった。


 金があるんだから、金で女性を釣れって?

 初めては好き同士がいいだろ馬鹿野郎、童貞のプライドなめんな。

 25歳。ここまで来たらぜってぇ好き同士と、って決めてんだ。


 だがそんな異世界生活7年。魔王倒したら日本帰してくれるって王様たちが言うからよ。恨みはないけど、魔族の四天王とか、魔王とかバッタバッタなぎ倒したわけよ。痛いし怖いし、超苦しかったけど。


 異世界地獄だからさ、俺本当頑張った。


 早く日本のあの小さな家に帰りたかったから。


 父ちゃん母ちゃん。俺勇者。気づいたら25歳童貞。中卒でごめん。かわいくなくてごめん。帰ったら少しでいいから歓迎しておくれ。あ、やっぱいいわ。少しでも優しくされたら泣き叫んで、「すみこぉぉ、俺、俺はああああ、異世界でえぇええええ」ってしがみついちまう。


 ちなみに、すみこ。大槻すみこは俺のかあちゃんの名前。


 戻るも残るも地獄な気がしてきた。怖い。俺の人生どうなるの?


 考えるのやめた。楽しいことだけ期待する。

 死に物狂いで魔王倒してようやく日本に帰れるんだ。

 あぁ楽しみ日本。

 さよならバイバイ、グッバイくそったれな異世界、最低だったぜ。


 魔王倒して、俺歓喜。


 魔王倒した後の街の宿で一人になった瞬間、ふかふかのベッドの上でジャンプ小躍り童心にかえって久々に泣きながら喜んだよ。


 アニメ、漫画、同人誌、もしかしたら今の運動神経で戻れたらチートでモテモテきゃっきゃうふふなそんな生活が日本で……っ!


 俺の今後の人生、ラノベタイトルみたい。

 25歳童貞。

 長かった孤独から解放される。


 やっと、やっと俺の時代が始まる。

 やっべええぇ。涙がとまらねぇ。全身の液体が涙となって流れちまうぜ。

 ビバ日本。日本最高。


 走馬灯のように過去振り返った。


 そして今、王宮。

「ありがとう勇者」

 王族、貴族たちが拍手している。泣いている者だっている。


「みなに幸福があらんことを」


 俺、最後まで勇者やってやった。出血大サービス。

 日本のおもてなしを見せつけてやった。

 やばくね? 日本。イカれてる。


 王族たちの秘術転移魔法。

 門が現れて開いていく。

 その門の光に向かって足を踏み出し――。


「この時を待っていたのおおおおおおお!」


「へ? ――ごふぅ」


 脇腹に衝撃。

 角の生えた真っ赤な髪の、顔面兵器☆美少女。


 魔王の娘。


 傷だらけの身体で、魔力封じの鎖につながれて死刑を待つだけの身だったはず。

 王族の悪趣味な断罪死刑イベントのために生かされてた魔王の娘、異世界人怖すぎ笑えない。


 だけどどうやって抜け出したのか。俺の腰に抱き着くようにしがみついてきた。 

 どっから現れた。

 檻に閉じ込められてただろ。


 移動魔法か?

 あ? てか今、この子日本語喋った?

 気のせいか。日本帰りた過ぎて幻聴。女子に抱き着かれてそのやわらかさに慣れない俺緊張。

 

 不憫な魔王の娘。

 泣きながらしがみついてる。血だらけ青あざだらけ、痛々しい身体してるし。


 顔面美少女。くっっそかわいい。

 でもな美女の涙は罠。俺異世界で学んだ。

 助けても俺のこと好きにならんだろ、知ってます。

 ならかわいくても意味ないよね。ハニートラップやめてくれ。


 だから超かわいい奴は顔面兵器☆美少女でひとくくり。


 何ならただの毒。童貞の純情をかき乱す猛毒。俺はいつも孤独。

 ぜってぇ勘違いしちゃならねぇ。いいように使われて終わりだ、覚えとけ。忘れるな、俺。


 蹴り飛ばすこともできたけど、俺今機嫌いいから。


 ま、しゃあねぇな。脇腹痛いけどまぁいいよ。

 日本帰れるから。ついて来いよ小娘。

 日本最高だぜ。面白いアニメも教えてやるよ。

 

 俺、菩薩ぼさつ


 他称勇者改め、自称菩薩。


 何でも許します。

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