第4話 進む方向
「あれが、太陽ですか?」
「太陽を知らないの?」
じりじりと肌を焦がす空からの光。直視が出来ないほど眩しいあの星が太陽なんだろう。フェルスが教えてくれた通りだ。
そして気になるのは僕が地上にいること。何故かはきっとリリアナさんが知っているはず。
「あの、どうして地上に...」
「あー知らないんだね、私の魔術だよ」
「魔術...」
「首輪も取っといたよ」
「え? どうやって」
「とりあえず入ろうか」
そこには、潔白を示したいかのような白色のレンガの壁には大きな門があった。その門を彼女は軽々と開けて僕を手招きする。続けて門に入った。
王都ガリフォードリア
「その広さは大陸一の王国、主に魔術や工業を中心としていて、豊かな自然を生かした農業も盛んだよ。歴史も古くて1350年ぐらいかな? 名産物はリンゴを使った料理だね。この国ではリンゴは英雄の果物って信じられているんだよ」
彼女のトークは止まらず僕は置いてけぼりになってしまう。
「つまりねぇ」
「つ...つまり?」
「私の大好きな国ってこと」
太陽に負けない笑顔を見せつけた、リリアナさんは今まで見た大人たちとはまるで違っていた。彼女との会話は、そもそも親友以外との会話がこんなに楽しいのは初めてだ。これほど時間が長く続いて欲しいと願うのも初だった。
顔にかかった少量の水はすぐ近くの小川と風のいたずらによるもの。気づけば石造りの橋に到着だ。
「ここから先に行けば孤児院がある。この紙を渡せば入れるはずさ。それじゃあレグ君、幸せにね」
「え?」
「あの孤児院は私の知り合いがしてるんだ、きっと優しくもてなしてくれるよ」
以前の暮らしに比べれば、孤児院なんてまるで夢のようである
「リリアナさんはこれからどうするんですか?」
彼女の息は一度止まり、しばらくたった後にまた口を開ける。
「ちょっと人に会いに行くんだ」
「聞きたい? 私の夢について」
何故だろう、ここに居てはいけない気がする。早くこの橋を渡って孤児院に行けば幸せに暮らせる。しかし彼女はそうはさせない。
「魔術にも限度があってね、不可能なことも多いんだ。かつての大賢者にも不可能だったことがある」
「リリアナさん?」
「君はどうして大賢者がダンジョンを作ったかわかるかい? 私は保管庫のようなものだと思う。ゴーレムや罠が至る所にあるしね」
「保管って、ヴィクトルっていう本をですか?」
「そうだ、正確にはヴィクトルには全部で十巻ある。一巻から十巻までが一つの魔術の詠唱になっていて、全巻集めてようやくその魔術は完成するんだ」
「魔術?」
「ここからが本題さ」
彼女の語りに熱が入り始める。止まらない、止めてはいけない。
「一巻と十巻は特殊でね、一巻には大賢者の死への恐怖と苦悩がびっしりと書かれていて十巻には彼の遺体の場所が"一言だけ"書かれている」
ヴィクトル十巻参照
ダンジョンに私のすべてを残した。財宝や魔術書、さらには寝具や愛用の椅子もだ。しかし私はもっとも重要なものを残すことにした。それは私だ。
「彼は未来に託したんだ、ダンジョンは彼にとってノアの箱舟。魔術の天才がもっとも恐れることを克服するためにヴィクトルは作成された」
「それって...つまりどうゆうことですか?」
「不老不死だ」
ヴィクトル十巻参照
この私を蘇りの魔術で蘇らせた者には
文字通り神の力【不老不死】を約束しよう。
「私は大賢者を蘇らせて、神になりたいんだ」
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