第2話 王子が横暴?

 周りには、黒尽くめのローブを着て、目深にフードを被る、見るからに怪しい、新興宗教の様な集団がいる。


 ——コスプレだろうか?


 雷のせいで、やっぱり死んだのかしら?


 でも、腕の中には、必死に抱きしめていた娘がいる。

 急に訳わからない事になったので、娘は驚きで涙は止まった様だ。


 泣き止んだならとりあえずよしとしよう。



「やった!成功だ!」

「さすがです!」

「これで安心だ!」

「……やっと帰れる」


 この人達は一体何、誰なの?


 最後の1人が疲れてるし、とりあえず関わっちゃいけない集団なのは分かる。


 瑠璃をそっと立ち上がらせ、私はその場を離れようとした


「ちょ、ちょっとどこ行くの!勝手に出て行かないで!」

 フードを被っている集団の、疲れていた人に慌てて止められた。


「いえ、お取り込み中に突然お邪魔してしまい大変失礼致しました。私と娘は関係ないのでお暇致します……」


 ——見ちゃダメ、目を合わせちゃ危ないわ


 娘の背を押して、会釈をして背を向けたら


「その娘は聖女です!だから勝手に出て行っては困ります!」

 他のフードの人が叫んだ。


 ——は?聖女?何それ


「申し訳ありませんが、娘はその様な者ではありません。

 興味もありませんし、貴方達の様なよくわからない人達と、関わるつもりはございません。

 お断りします。別な人を勧誘してください」


 宗教家にも、活動家にも、全く興味はありません。


 ——娘に近寄らないでください。


「いや、その娘は聖女だ!我々は勇者召喚の儀式をした。ここには聖女が転移すると、魔法陣に記載された。だからその娘は聖女だ!」


 ——聖女聖女とうるさいなぁ。


 そんな事は知ら無いし、どうでもいい


 魔法って、何言ってるのかわからないし、

 頭いかれてるとしか思えないわ。


「あの、勇者とか聖女とかゲームの話なら、よそでやってください。

 娘は関係無いので、バカな事言うの、やめてもらっていいですか?

 他人を巻き込むのはやめてください」


 それよりも、娘の事が心配だわ。


「その娘は選ばれし者だ!魔王討伐はこちらに召喚されたなら義務だぞ!!

 王族の僕が、自らの魔力を使って召喚したんだ。ありがたく協力しろ!」


 嫌よ何の義理もない。


 ところで、何コイツ……偉そうに。


 王子コスプレだとして、金髪に綺麗に染めて、ブルーのカラコン?


 コンタクトの質によって、目を痛めるわよ?


「とりあえず、勇者召喚したと言うなら、勇者とお話がしたいので、一旦、今すぐここに、勇者を連れて来て下さい」


 いきなり召喚されたなら、その人も困ってるかも知れないわ


「おい!全く話が通じないじゃないか!

 黙れババア!お前には関係ない話だ!黙って言う事を聞け!」


 ——黙れババアだぁ?


「誰がババアだ!!クソガキが、年長者に対する礼儀も知らないなら、貴様が黙れ!」


 ただでさえこっちは気が立っているんだ。


 そんな時に、ごちゃごちゃとやかましいわ!


「……とりあえず、王宮に滞在する事を許可する。王宮に住めるんだぞ?

 嬉しいだろう?嬉しいよな?」

 自称王子は従者に咎められたので、下手に出ているつもりなのだろう。


 王宮に住ませてやるとか、何様ですか?


 ——全く嬉しくも無い


 怒鳴られて狼狽えた癖に、偉そうに!


「断るわ!今すぐ帰らせて!」


 ピシャリと断る。

 明日も仕事の予約が入っているの!


「その……ごめんなさい、魔王討伐する迄は無理なんです。ゲートが開かないので……」


 疲れちゃった人が、項垂れて伝えて来た。


 ——無理?


 勝手に呼んで、帰すのは無理だなんて無責任じゃない


「無理って言われても無理よ、意味がわからない。貴方達が何と言おうと、無理です!」


 なんなのよ、それに、ここどこよ?


 ——誰か説明してよ!


「いい加減にしろ!こっちは王族だ!

言う事を聞け!聖女をこちらによこせ!これは命令だ!」


 だから、何?なんなのよ!


 ——ふざけるな!と怒りが湧いてきた


「王族だから言う事をきけとか、あんた何様よ、ふざけないで。

 こっちは頼んで無いのよ、勝手に呼んだのはそっちでしょう?

 何で見ず知らずの奴らの言う事を、こっちが聞かなきゃならないのよ!」


 てか、王族ってなんなのよ。設定か何か?


 遊びなら他でやってよ!!


「王族の言う事を聞かないつもりか!!」


 だから"お前は誰だよ"バカなのか?理屈が通らない


「あのさぁ、さっきからそこのあなた、偉そうになんなの?

 どこの誰なんですか?そもそも、いい大人が挨拶すらできないとか、どうなのよ。

 バカなの?それが人に物頼む態度かどうか、

よく考えてから出直してこい!」


 腹の底から怒鳴りつけてやった。


 宗教団体は作戦会議なのか、ヒソヒソ何か言っている。


「……僕は、フェルゼン王国第一王子のイディオート・フェルゼンだ!

 頼むから、魔王討伐をしてくれ!」


 自称王子のコスプレ野郎は不貞腐れた。


 それ以外の宗教団体は、こちらに向かって跪き頭を下げた。


 ねぇ、他に誰かちゃんとした人は居ないの?



 ——この時は、私は思いもしなかった

 王族を相手に、雷を落とす事になるなんて!






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