p.28
目が覚めたとき、
カーテンの隙間から差し込む光が
やけに柔らかく感じた。
昨日のことが夢じゃなかったって、
スマホの通話履歴が証明してくれる。
「李玖」って名前が、たった数分の記録を
残して、そこに並んでいた。
まだ少しぼんやりとする頭のまま、
ベッドの中でスマホを握る。
通知は来てない。
……でも、昨日の声がまだ耳に残ってる。
──「俺が行く。絶対に、迎えに行くから」
たった一言で、
心の奥の張り詰めていたものが緩んだ。
不安も、怖さも、全部じゃなくても、
少しだけ楽になった。
「……会えて、よかった」
思わず呟いた言葉が、
自分でも驚くくらい素直で。
胸の奥が、じんわりと温かくなった。
*
朝の支度をしながら、
スマホをチラチラ見てしまう。
メイクをしてるときも、
トーストをくわえてソファに座ったときも。
“返信が欲しい”んじゃなくて、
“今日も李玖と話せたらいいな”って、
自然に思ってる自分がいた。
そんなときだった。
「ピロン」
小さな通知音が部屋に響く。
思わず手に取ると、そこには──
_____
李玖 ➤ 茉耶
おはよう。昨日、ほんとに無事でよかった。
まだ気持ち落ち着かないかもしれないけど、
今日も変わらず、茉耶にとっていい一日になりますように。
_____
「……なに、それ」
思わず、口元がゆるんだ。
優しくて、あったかくて。
昨日あんなに怖かったのに、
今日は少しだけ、心が軽い。
李玖の言葉には、そんな力がある。
_____
茉耶 ➤ 李玖
おはよう☺️
昨日は本当にありがとう。
ちゃんと寝れたし、今朝は気持ちも少し楽になったよ。
李玖も、いい一日になりますように。
_____
送信ボタンを押す指が、少しだけ震えた。
だけどその震えは、不安じゃなくて、
どこかあたたかい期待だった。
今日も、少しずつ前に進んでいける気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます