vol.6 群れをつなぐ守りの知恵

 世界が新たなウイルスに揺れたあの年。消毒液の匂いが日常となり、人々は静かに、けれど確かに距離を取りはじめました。

 そんなとき、そっと世に出された小さな瓶――それが〈レヴァン〉でした。喉にふくよかな潤いを与え、ほのかな香りが心をゆるめる。

 「防ぐ」だけじゃない。 「守る」だけでもない。ひとしずくの中に、やさしさと強さが宿っていたのです。


◆ 病と寄生虫――ミツバチの世界にもある“見えない敵”

 ミツバチたちの暮らしは、私たちが思うよりずっと過酷です。花を探し、蜜を運ぶ――その日常のすぐそばに、見えない敵が潜んでいます。

 ある巣では、幼虫が細菌に侵され、甘いはずの巣箱に異臭がただよう。またある群れでは、体に取りついた小さなダニが血のような体液を吸い取り、仲間の力を静かに奪っていく。さらには、羽を震わせながら地面に落ちてしまうウイルスの影も。

 どれも目には見えないけれど、確実に命を蝕んでいく――。その脅威は、ミツバチたちの世界にも、そして私たちの世界にも、静かに広がっているのです。


◆ プロポリスという“隔離の知恵”

 それでも、ミツバチたちは諦めません。セイヨウミツバチは巣のすき間に天然の樹脂――「プロポリス」を塗りこめます。

 外からの雑菌やウイルスを物理的に封じ込め、巣の内外を分けるための壁。もし巣の中に死骸や異物が入り、外へ運び出せないときは、そのままプロポリスで包み込み、腐敗や感染の拡大を防ぎます。

 つまり、プロポリスは“敵を排除する”のではなく、“敵を封じ込める”という防御の知恵。セイヨウミツバチは、隔離と保護という静かな選択で、巣を守ってきたのです。


◆ 熱で守る、命の連携

 一方、ニホンミツバチは異なる方法を選びました。スズメバチのような敵が巣に入り込むと、仲間全員でその体にまとわりつき、体温を一気に上げて撃退する――。

 それが「熱殺蜂球ねっさつほうきゅう」と呼ばれる防衛術です。

 スズメバチは約46度で命を落とすといわれます。対してミツバチは48度まで耐えられる。このわずか2度の差を使って、全員で包み込み、内側から熱で仕留める。

 体そのもので巣を守る。それはまるで、群れ全体がひとつの“免疫”として働くような行動でした。


◆ 物語の中の“熱殺蜂球”

 本編では、この「熱殺蜂球」の発想をもとに、巨大企業ヴェスパ・グローバルによる“買収”という襲撃に立ち向かう物語を描きました。

 “ヴェスパ”――それはラテン語でスズメバチの意。

 アベリアグループの社員たちは、攻撃に対して暴力ではなく、議論と信頼という“温度”で応じました。炎のような争いではなく、人の心を溶かす熱で。

 けれど、現実のミツバチは、もっと本能的で、命懸けです。その熱を描きたくて、筆者は“裏庭”という別の巣箱で、もうひとつの物語を紡ぎました。

 そこでは、社員たちがリングの上で入り乱れ、プロレスさながらの攻防を繰り広げる。笑いと迫力の中に、「守るとは、立ち向かうこと」というメッセージを込めたのです。

 本編が理性の巣だとすれば、裏庭は情熱の巣。どちらも“熱殺蜂球”という同じ本能を、別の形で表現しています。


◆ 自然が教える、ふたつの防御

 科学の目で見れば、プロポリスも熱殺蜂球も、それぞれ異なる方法で“感染”や“侵入”を防ぐ仕組みです。

 プロポリスは、抗菌・抗ウイルス・抗炎症の力を持ち、近年ではRNAウイルスへの働きが注目されています。

 一方の熱殺蜂球は、瞬時の連携と精密な温度制御が求められる、まさに“社会性の力”。

 どちらも、孤立ではなく“つながり”によって生まれた防御。自然が編み出した医療の原点が、そこにはあるのです。


◆ 群れを超える“守るこころ”

 めるたちが開発した〈レヴァン〉も、そんな“守る力”を宿した製品でした。

 ポルトガルの〈プロミリア〉。ノーザンリーフのブルーベリー。サンテヴィーダのハーブ。

 異なる土地の“花”から生まれたエッセンスを、一滴に凝縮したレヴァン。喉を潤し、香りが心を包む。それは、ただの健康食品ではなく、誰かを想う気持ちのかたちでした。

 ミツバチが巣のすき間を埋めるように、人と人とのあいだに生まれた“すきま”を、そっと埋めてくれる。

 レヴァンは、静かに、そして確かに、世界を守っていたのです。


=熱と香りでつながる、群れの記憶=

見えない敵に立ち向かうとき、必要なのは孤独な力ではない。

寄り添い、重なり合うことで生まれる、群れの温度。

守るとは、戦うことではなく、信じ合うこと。

そしてその信頼こそが、世界を癒やす最初の一滴になる。

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