第31話
スキって言って
ありがとう、嬉しいよと言われて
【でも】と切り返されて
数学教師だろ?って
この流れを証明問題に対する解答に置き換えたら、証明終了には至っていないと判断させてもらう
残念だけど、こういう捉え方しかできない
だってあたし、数学教師だから
「だったら、ベクトルの向きがズレるとどうなる?」
『方向が変わって到達点も変わる・・・ですか?』
あたしだけじゃなくて
入江先生も数学教師
ただ、彼があたしに問いかけたのは
あたしが思っていた証明問題じゃなくて
幾何(図形)問題だったけれど・・・・
「多分、今のキミはベクトルの向きがズレているだけなんだろう・・・一瞬の迷いで。」
『ズレてるって・・・』
ようやく入江先生があたしに
数学教師だろ?と問い質した理由がわかった気がした。
あたしと数学教師である入江先生が口にしたベクトルという言葉
それはあたしの気持ちのことをさしているんだろう。
あたしのベクトルの向きがズレている
イコール
入江先生のことがスキだという気持ちは
あたしの気持ちがズレたせいで起きただけ
そういうことを言いたいんだろう・・・・
あたしの一瞬の迷いでズレたベクトル
イコール
一瞬の迷いで生じた入江先生へのスキという気持ち
あたしの本当の気持ちは
入江先生には向いていないと
彼にはそう思われているんだ・・・・
「でも、ひと呼吸おいて、その向きを修正すれば、キミに相応しい相手のいる到達点へちゃんと進むことができるはず・・・高島はまだ若いから。」
だから、ベクトルの向きの修正を勧められた
それは
あたしのスキという気持ちの向ける方向を
入江先生ではなく
別に向けろということ
だけどもう別のほうへ向けられるわけなんかない
あんな寂しそうな彼の顔を見てしまったら・・・
蒼井のベクトルが今、どこへ向いていて
蒼井自身がどちらへ進んでいるのかはわからない
だけどきっと、あんな寂しそうな顔をしていた彼を思うと
もしかしたら
ずっと蒼井のほうに向いているであろうベクトルの向きを変えるべきなのは
入江先生なんじゃないかって・・
『入江先生のベクトルの向きは・・変えられないんですか?』
同じく数学教師のあたしはそんなことを思った。
でも、入江先生はハンドルを右手でギュッと握っただけであたしのこの質問に応えてはくれなかった。
その後にくれたたったひとつのヒントは
小さく微笑んでくれたことだけだった。
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