第20話
『入江先生!!!!』
「大丈夫だよ。アイツがやっとの想いで捜し出した彼女だから。そんな真似はしないだろう。」
なんとかしなきゃという想いを込めて彼を呼んだのに焦る様子なんか全く見せなくて。
その上、彼はレザーショルダーバックからスケジュール帳を取り出して、そのうちの1ページをゆっくりビリビリと引き千切った。
そしてスケジュール帳に挟んであったボールペンを千切った1ページの紙を併せて私のほうへ差し出した。
「もっと相応しい紙があればよかったんだけど、急な話でな。」
首を傾げながら私に苦笑いをしてみせた入江先生は後部座席に置いてある見覚えのある大きな箱を指差した。
「まだ会ったことないのに、こんなことをお願いして申し訳ないんだけど・・・・よかったら、彼らに結婚おめでとうメッセージを書いてやってくれる?」
ウエディングドレス
結婚おめでとうメッセージ
でも
駆け落ちカップル
駆け落ちっていうのがなぁ
完全にワケありでしょ?
それをおめでとうなんて
言ってあげてもいいのかな?
どう書いていいのか
わからないってば・・・・
『入江先生が先にメッセージ書いて下さいよ!なんか難しいです。』
差し出されたままのスケジュール帳を千切った紙とボールペンを両手ですうっと押し返した。
「ああ。そうだよな。それじゃ、書くけど・・・確かに難しいよな。」
ペン先を紙にのせては外すを繰り返す入江先生。
ふうっと息をついた後にとうとうペン先を走らせた。
【下記の問題に答えよ。
「メスさばきの腕は確かだが、恋には不器用な男の手を、 もう離さない方法をこの箱の中に入っているモノを用いて証明せよ。」
(Irie 出題)】
『ぶっ』
「噴き出すなって。」
『だって証明問題とか・・・・意味わかんないです。いくら数学教師でもベタすぎるでしょ?しかもなんかキザ・・・・』
「キザって・・じゃあ、どう書いたらいいんだ?」
入江先生のメッセージが書き込まれたその紙が再び目の前にすっと差し出された。
“先生、この問題、全然わかんないっす”と聞きにくる生徒みたいな顔をしている入江先生が可愛く思えて、ついそれを受け取ってしまった。
メッセージを書くしかない状況に追い込まれた私。
『入江先生、彼女の名前は?』
「伶菜さん。」
あ~さっきの
シフォンケーキに半端ない量の生クリームをのせちゃう彼女
駆け落ちしちゃうんだ
入江先生とじゃないけど
なんか複雑・・・・
とりあえず、促されるがまま差し障りのない程度のメッセージと彼から聞き出した彼女の名前を書き込んだ。
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